漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「戻 レイ」<犬がそむく>と「捩レイ」「綟レイ」「唳レイ」「涙ルイ」

2022年04月11日 | 漢字の音符
 戻の解字を改めました。
[戾] レイ・もどす・もどる  戸部

解字 篆文は「戸(家の出入り口)+犬(いぬ)」の会意。犬が戸の前に来ること。犬は漢字では人に例えて、ずるい・わるい意味で使われることが多い。戾は犬が戸の主人に対して逆(さか)らう・そむく意味になる。また、[詩·大雅]「鳶とび飛び天に戾(いた)る」としており、いたる意がある。日本では犬が戻(もど)ってくる意味に用いる。新字体では犬の点がない戻になる。
意味 (1)もとる(戻る)。理にさからう。そむく。「背戻ハイレイ」(背き、もとること)「暴戻ボウレイ」(荒々しく道理にもとること)「狼戻ロウレイ」(狼のように道理にそむく)「乖戻カイレイ」(さからいもとる)(2)いたる。「戻止レイシ」(いたりとまる)「鳶(とび)飛び天に戾(いた)る」(3)つみ。とが。「罪戻ザイレイ」(つみととが)(4)[国]もどす(戻す)。もどる(戻る)。かえす。「返戻金ヘンレイキン」(返し戻すお金)「後戻(あともど)り」 
 
イメージ 
 「さからう・そむく」
(戻)
 「形声字」(涙・捩・綟・唳)
音の変化  レイ:戻・捩・綟・唳  ルイ:涙

形声字
 ルイ・なみだ  氵部
解字 旧字はで「氵(水)+戾(ルイ)」の形声。ルイは泪ルイ(なみだ)に通じ、なみだの意。泪ルイは「氵(水)+目(め)」で、目から水が流れる形で「なみだ」をいう(涙の異体字、現代中国ではこの字を使う)。新字体は犬⇒大に変化した涙になる。
意味 なみだ(涙)。なみだする。「感涙カンルイ」「悲涙ヒルイ」「涙線ルイセン」「催涙サイルイガス」(涙が出るよう刺激するガス)
 レイ・レツ・ねじる・よじる・もじる・ねじ  扌部
解字 「扌(手)+戾(レイ)」の形声。手でねじることを捩レイという。新字体に準じて、戸の中の、犬⇒大になる。  
意味 (1)ねじる(捩じる)。よじる(捩る)。ひねる。「転捩点テンレイテン」(ねじれてまわった時点=転換点)「捩手レイシュ」(手をねじる)「捩(ねじ)り鉢巻」(2)ねじ(捩・捩子)。物をしめつけるらせん状の溝のあるネジ。(3)もじる(捩る)。ひねる。有名な詩句などを言いかえる。(4)むきをかえる。「捩眼レイガン」(横目で見る)「捩舵レイダ」(船の舵をきる)
 レイ・ライ・もじ  糸部
解字 「糸(いと)+戾(レイ(=捩・ねじる)」の形声。糸をねじって(もじって)織った布を綟レイという。新字体に準じて、戸の中の、犬⇒大になる。なお、苅安に似たレイという草で染めた糸の意で、もえぎ色の意味がある。
意味 (1)[国]もじ(綟)。もじ(綟子)。もじり。麻糸をよじって目を粗く織った布、緯(よこ)糸に対して経(たて)糸をねじって絡ませながら織って行くので隙間ができる。通気性が高いため夏の衣服や蚊帳などに用いる。「綟子織もじおり」「綟網もじあみ」(綟織りの細かい漁網。小魚をとるのに用いる)(2)もえぎ色。「綟綬レイジュ」(勲章などをさげるもえぎ色のひも)
 レイ・ライ  口部
解字 「口(くち)+戾(レイ)」の形声。レイという音。口からレイという声をだして鳴く鶴や雁の声を唳レイという。新字体に準じて、犬⇒大になる。
意味 鶴や雁の鳴く声。「鶴唳カクレイ」(鶴の鳴き声)「風声鶴唳フウセイカクレイ」(風の音や鶴の鳴き声に驚く。ささいな音に怖気づいてしまうこと)「嘹唳リョウレイ」(雁や蝉などが鳴く音の形容)
<紫色は常用漢字>

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