雚 カン 隹部
ミミズク(ウィキペディアより)
解字 甲骨文第一字は「頭部の耳状羽毛+隹(とり)」の象形で、頭部に耳状羽毛をもつミミズクの象形と思われる。甲骨文第二字は、そこに口が二つ付いた形で、ミミズクが口で鳴き交わしている形を表す。ミミズクは「耳付く」でウサギの耳のように羽毛が出ていることから名づけられたが、独立した種類でなくフクロウの仲間である。金文から口二つが両目のようについた形になり(甲骨文にもこの字形がある)、篆文にも引き継がれ、現代字は上が草冠に変化している。白川静氏は[字通]で、この口二つをミミズクの両目と解釈しているが、私はミミズク(フクロウ)が口々に鳴き交わす声と解釈したい。
フクロウは夜行性で暗闇でも良く見えるように眼球が発達していて、ネズミなどを捕食して生活している。夜に仲間同士で鳴き交わして生活しており、フクロウの鳴き声は昔からよく知られていた。宮崎学氏は「フクロウと会話する方法」という文章で、10年にわたり山の中で寝泊まりしてフクロウと会話し16種類のフクロウの声を通訳できるようになったという。
そこで私は雚カンを、①ミミズク(フクロウ)②目のいいフクロウは「つぶさに見る」③フクロウが鳴き交わして「さわがしい」イメージを提唱したいと思う。なお、甲骨文字では観の原字とされ、視察の意と祭祀の意で用いられている[甲骨文字小字典]。のちにこの字はコウノトリの仲間と解釈され、コウノトリの原字とされている。
雚カンは新字体に含まれると、歓の左辺に変化する。(この字形を、のにどり(ノ二隹。隹のノは二の上の一に付けて書く。)と覚える)
意味 (1)視察する。(=観)。(2)コウノトリ。鸛の原字。
イメージ
「ミミズク(フクロウ)」(雚・鸛)
目のいいフクロウは「つぶさに見る」(観)
フクロウが鳴き交わして「さわがしい・にぎやか」(歓・懽・讙・勧)
「形声字」(権・灌・缶[罐])
音の変化 カン:雚・鸛・歓・観・懽・讙・勧・灌・缶[罐] ケン:権
ミミズク(フクロウ)
鸛 カン・こうのとり 鳥部
解字 「鳥(とり)+雚(ミミズク・フクロウ)」の会意形声。雚は頭部の耳状羽毛が描かれており、ミミズク(フクロウ)と思われるが、のち大型の水鳥にあてた鸛の字が篆文からできた。後漢の[説文解字]は「鸛專カンセンであり、畐蹂フクジュウ。䧿かささぎの如く、短尾が短い。之(これ)を射ると,矢を銜(くわ)え人に射(射返)す。鳥に従い雚の聲(声)」とするが意味が不明。具体的にはコウノトリ科の鳥に当てている。
意味 こうのとり科の鳥。「白鸛コウノトリ」「黒鸛ナベコウ」「烏鸛ナベコウ」。西洋のこうのとりは赤ん坊を運んでくるとされる。
つぶさに見る
観 カン・みる 見部
解字 旧字は觀で「見(みる)+雚(つぶさに見る)」の会意形声。視力のいいフクロウ類の鳥がつぶさに見ること。新字体は観に変化する。甲骨文字で雚は視察の意味だという。
意味 (1)みる(観る)。ながめる。「観客カンキャク」「観光カンコウ」(2)くわしく見る。「観察カンサツ」(3)見えるありさま。「美観ビカン」「景観ケイカン」「奇観キカン」(4)見て考えること。ものの見方・考え方。「観念カンネン」「主観シュカン」
にぎやか・さわがしい
歓 カン・よろこぶ 欠部
解字 旧字は歡で 「欠(口をあけた人)+雚(にぎやか)」の会意形声。口をあけてにぎやかに声を出すこと。新字体は歓に変化する。
意味 よろこぶ(歓ぶ)。たのしむ。親しく。「歓喜カンキ」(心から喜ぶ)「歓迎カンゲイ」「歓待カンタイ」「歓声カンセイ」(喜びの声)「歓談カンダン」(打ち解けて話す)
懽 カン・よろこぶ 忄部
解字 「忄(こころ)+雚(=歓。よろこぶ)」の会意形声。心からよろこぶこと。
意味 よろこぶ(懽ぶ)。「懽娯カンゴ」(よろこびたのしむ)
讙 カン・かまびすしい 言部
解字 「言(はなす)+雚(にぎやか)」の会意形声。にぎやかに話すこと。
意味 (1)かまびすしい(讙しい)。やかましい。「讙嘩カンカ」(かまびすしい) (2)よろこぶ。(=懽)
勧 カン・すすめる 力部
解字 篆文は「力(ちから)+雚(カン)」の形声。カンは讙カン(やかましい)に通じ、やかましく言って力でおすこと。すすめる・説きすすめる意となる。
意味 (1)すすめる(勧める)。はげます。奨励する。「勧誘カンユウ」「勧業カンギョウ」(産業を発展させるよう勧める)「勧進カンジン」(寺院・仏像のために寄付を募ること)(2)説得する。「勧告カンコク」(あることをするように説きすすめる)
形声字
権 ケン・ゴン・はかり・はかる 木部
棹(天秤)ばかり(「砺波正倉」より)錘の位置をずらし棹が平らになると棹の目盛りを読む。
清代の権(錘)「権度製造所造」と刻印されている。https://7788tqsc.997788.com/s453/78930703/
解字 旧字は權で「木(木の棒)+雚(カン⇒ケン)」の形声。[説文解字]は「黄華木。黄色の華が咲く木」とする。しかし、この字は春秋時代に初出で、当時はどんな意味だったのだろうか。①[論語・堯曰]は、「権量を謹(つつし)み」(はかりめ(権)とますめ(量)をととのえ=こまかく気をくばる) ②[孟子・梁恵王上]は「権(はか)りて然る後に軽重を知る」(目方を測ってのちに軽重を知る)となっており、ともに重さをはかる秤(はかり)であった。また、③三国時代の魏(B220-265)の[広雅・釋器]は「錘スイ之(こ)れを権と謂う」として、秤の錘(おもり)も権とする。新字体は権に変化。
中国の秤は春秋中晩期に楚国ですでに製造されており、それは衡器コウキ=木衡であったとされる。木衡とは棹秤(さおばかり)である。当初、木の名前であった権の木偏は棹を意味し、発音のケンは借音(音を借りて他の意味を表す)で「はかり」さらに「おもり」の意味に用いられた。棹秤は一本の棹と一個の錘で重さを測れる便利な道具である。しかし、棹の目盛りや錘の重さなどを統一しないと不正が起きやすい。そこで、国や地方の支配者は棹秤の規格を厳重に定めた。そこから棹秤の規格を統制できる力を「権力」といい、他人をおさえて支配する力の意味となる。
意味 (1)はかる(権る)。はかり(権)。目方をはかる。おもり。「権度ケンド」(はかりと、ものさし)「権衡ケンコウ」(はかりのおもりとさお、即ちつりあい)(2)物事を強制したり処置する威力。ちから。いきおい。「権力ケンリョク」「特権トッケン」「権益ケンエキ」(権利と利益)(3)はかりごとをする。はかる。「権謀ケンボウ」「権術ケンジュツ」(4)[仏]「権化ゴンゲ」(仏・菩薩が姿を変えてこの世に現れること。=権現ゴンゲン)
灌[潅] カン・そそぐ 氵部
解字 「氵(水)+雚(カン)」の形声。カンの形声。カンは盥カン(たらい)に通じ、たらいに水をそそぐこと。この字には新字体に準じた潅カンがある。
意味 (1)そそぐ(灌ぐ)。水を流し込む。「灌水カンスイ」(水をそそぎかける)「灌漑カンガイ」(農地に人工的に水を引いてそそぐ)「灌頂カンチョウ」([仏]頭の頂に水をそそぐこと)「灌仏会カンブツエ」(釈迦像の頭上に甘茶をかける法会)(2)むらがり生える。「灌木カンボク」(背の低い木)
缶[罐] カン・フ・かま・ほとぎ 缶部
解字 旧字は罐で「缶フ(まるく腹がふくれ先がすぼまった土器)+雚(カン)」の形声。カンという名のまるい器。缶フは、酒器・水器として用いられたが、罐カンは、甕(かめ)の類を指した。日本では、オランダ語でkanと発音する容器を表すために使われた。新字体は、旧字から雚を省略した。この結果、缶フは本来の意味である「ほとぎ」以外にカンという発音と、土器以外の器という意味を獲得した。
意味 (1)ほとぎ(缶)。腹部がまるくふくれた土器。酒や水をいれる容器。秦代には打楽器としても用いた。(2)[国] かん(缶)。ブリキなどの金属製の容器。「缶詰カンづめ」「薬缶ヤカン」(もと薬を煎じるのに用いた容器。銅などで造った湯沸かし)(3)[国] かま(缶)。「汽缶キカン」(蒸気を発生させる缶。ボイラー)「缶焚(かまた)き」(ボイラーをたく人)
<紫色は常用漢字>
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ミミズク(ウィキペディアより)
解字 甲骨文第一字は「頭部の耳状羽毛+隹(とり)」の象形で、頭部に耳状羽毛をもつミミズクの象形と思われる。甲骨文第二字は、そこに口が二つ付いた形で、ミミズクが口で鳴き交わしている形を表す。ミミズクは「耳付く」でウサギの耳のように羽毛が出ていることから名づけられたが、独立した種類でなくフクロウの仲間である。金文から口二つが両目のようについた形になり(甲骨文にもこの字形がある)、篆文にも引き継がれ、現代字は上が草冠に変化している。白川静氏は[字通]で、この口二つをミミズクの両目と解釈しているが、私はミミズク(フクロウ)が口々に鳴き交わす声と解釈したい。
フクロウは夜行性で暗闇でも良く見えるように眼球が発達していて、ネズミなどを捕食して生活している。夜に仲間同士で鳴き交わして生活しており、フクロウの鳴き声は昔からよく知られていた。宮崎学氏は「フクロウと会話する方法」という文章で、10年にわたり山の中で寝泊まりしてフクロウと会話し16種類のフクロウの声を通訳できるようになったという。
そこで私は雚カンを、①ミミズク(フクロウ)②目のいいフクロウは「つぶさに見る」③フクロウが鳴き交わして「さわがしい」イメージを提唱したいと思う。なお、甲骨文字では観の原字とされ、視察の意と祭祀の意で用いられている[甲骨文字小字典]。のちにこの字はコウノトリの仲間と解釈され、コウノトリの原字とされている。
雚カンは新字体に含まれると、歓の左辺に変化する。(この字形を、のにどり(ノ二隹。隹のノは二の上の一に付けて書く。)と覚える)
意味 (1)視察する。(=観)。(2)コウノトリ。鸛の原字。
イメージ
「ミミズク(フクロウ)」(雚・鸛)
目のいいフクロウは「つぶさに見る」(観)
フクロウが鳴き交わして「さわがしい・にぎやか」(歓・懽・讙・勧)
「形声字」(権・灌・缶[罐])
音の変化 カン:雚・鸛・歓・観・懽・讙・勧・灌・缶[罐] ケン:権
ミミズク(フクロウ)
鸛 カン・こうのとり 鳥部
解字 「鳥(とり)+雚(ミミズク・フクロウ)」の会意形声。雚は頭部の耳状羽毛が描かれており、ミミズク(フクロウ)と思われるが、のち大型の水鳥にあてた鸛の字が篆文からできた。後漢の[説文解字]は「鸛專カンセンであり、畐蹂フクジュウ。䧿かささぎの如く、短尾が短い。之(これ)を射ると,矢を銜(くわ)え人に射(射返)す。鳥に従い雚の聲(声)」とするが意味が不明。具体的にはコウノトリ科の鳥に当てている。
意味 こうのとり科の鳥。「白鸛コウノトリ」「黒鸛ナベコウ」「烏鸛ナベコウ」。西洋のこうのとりは赤ん坊を運んでくるとされる。
つぶさに見る
観 カン・みる 見部
解字 旧字は觀で「見(みる)+雚(つぶさに見る)」の会意形声。視力のいいフクロウ類の鳥がつぶさに見ること。新字体は観に変化する。甲骨文字で雚は視察の意味だという。
意味 (1)みる(観る)。ながめる。「観客カンキャク」「観光カンコウ」(2)くわしく見る。「観察カンサツ」(3)見えるありさま。「美観ビカン」「景観ケイカン」「奇観キカン」(4)見て考えること。ものの見方・考え方。「観念カンネン」「主観シュカン」
にぎやか・さわがしい
歓 カン・よろこぶ 欠部
解字 旧字は歡で 「欠(口をあけた人)+雚(にぎやか)」の会意形声。口をあけてにぎやかに声を出すこと。新字体は歓に変化する。
意味 よろこぶ(歓ぶ)。たのしむ。親しく。「歓喜カンキ」(心から喜ぶ)「歓迎カンゲイ」「歓待カンタイ」「歓声カンセイ」(喜びの声)「歓談カンダン」(打ち解けて話す)
懽 カン・よろこぶ 忄部
解字 「忄(こころ)+雚(=歓。よろこぶ)」の会意形声。心からよろこぶこと。
意味 よろこぶ(懽ぶ)。「懽娯カンゴ」(よろこびたのしむ)
讙 カン・かまびすしい 言部
解字 「言(はなす)+雚(にぎやか)」の会意形声。にぎやかに話すこと。
意味 (1)かまびすしい(讙しい)。やかましい。「讙嘩カンカ」(かまびすしい) (2)よろこぶ。(=懽)
勧 カン・すすめる 力部
解字 篆文は「力(ちから)+雚(カン)」の形声。カンは讙カン(やかましい)に通じ、やかましく言って力でおすこと。すすめる・説きすすめる意となる。
意味 (1)すすめる(勧める)。はげます。奨励する。「勧誘カンユウ」「勧業カンギョウ」(産業を発展させるよう勧める)「勧進カンジン」(寺院・仏像のために寄付を募ること)(2)説得する。「勧告カンコク」(あることをするように説きすすめる)
形声字
権 ケン・ゴン・はかり・はかる 木部
棹(天秤)ばかり(「砺波正倉」より)錘の位置をずらし棹が平らになると棹の目盛りを読む。
清代の権(錘)「権度製造所造」と刻印されている。https://7788tqsc.997788.com/s453/78930703/
解字 旧字は權で「木(木の棒)+雚(カン⇒ケン)」の形声。[説文解字]は「黄華木。黄色の華が咲く木」とする。しかし、この字は春秋時代に初出で、当時はどんな意味だったのだろうか。①[論語・堯曰]は、「権量を謹(つつし)み」(はかりめ(権)とますめ(量)をととのえ=こまかく気をくばる) ②[孟子・梁恵王上]は「権(はか)りて然る後に軽重を知る」(目方を測ってのちに軽重を知る)となっており、ともに重さをはかる秤(はかり)であった。また、③三国時代の魏(B220-265)の[広雅・釋器]は「錘スイ之(こ)れを権と謂う」として、秤の錘(おもり)も権とする。新字体は権に変化。
中国の秤は春秋中晩期に楚国ですでに製造されており、それは衡器コウキ=木衡であったとされる。木衡とは棹秤(さおばかり)である。当初、木の名前であった権の木偏は棹を意味し、発音のケンは借音(音を借りて他の意味を表す)で「はかり」さらに「おもり」の意味に用いられた。棹秤は一本の棹と一個の錘で重さを測れる便利な道具である。しかし、棹の目盛りや錘の重さなどを統一しないと不正が起きやすい。そこで、国や地方の支配者は棹秤の規格を厳重に定めた。そこから棹秤の規格を統制できる力を「権力」といい、他人をおさえて支配する力の意味となる。
意味 (1)はかる(権る)。はかり(権)。目方をはかる。おもり。「権度ケンド」(はかりと、ものさし)「権衡ケンコウ」(はかりのおもりとさお、即ちつりあい)(2)物事を強制したり処置する威力。ちから。いきおい。「権力ケンリョク」「特権トッケン」「権益ケンエキ」(権利と利益)(3)はかりごとをする。はかる。「権謀ケンボウ」「権術ケンジュツ」(4)[仏]「権化ゴンゲ」(仏・菩薩が姿を変えてこの世に現れること。=権現ゴンゲン)
灌[潅] カン・そそぐ 氵部
解字 「氵(水)+雚(カン)」の形声。カンの形声。カンは盥カン(たらい)に通じ、たらいに水をそそぐこと。この字には新字体に準じた潅カンがある。
意味 (1)そそぐ(灌ぐ)。水を流し込む。「灌水カンスイ」(水をそそぎかける)「灌漑カンガイ」(農地に人工的に水を引いてそそぐ)「灌頂カンチョウ」([仏]頭の頂に水をそそぐこと)「灌仏会カンブツエ」(釈迦像の頭上に甘茶をかける法会)(2)むらがり生える。「灌木カンボク」(背の低い木)
缶[罐] カン・フ・かま・ほとぎ 缶部
解字 旧字は罐で「缶フ(まるく腹がふくれ先がすぼまった土器)+雚(カン)」の形声。カンという名のまるい器。缶フは、酒器・水器として用いられたが、罐カンは、甕(かめ)の類を指した。日本では、オランダ語でkanと発音する容器を表すために使われた。新字体は、旧字から雚を省略した。この結果、缶フは本来の意味である「ほとぎ」以外にカンという発音と、土器以外の器という意味を獲得した。
意味 (1)ほとぎ(缶)。腹部がまるくふくれた土器。酒や水をいれる容器。秦代には打楽器としても用いた。(2)[国] かん(缶)。ブリキなどの金属製の容器。「缶詰カンづめ」「薬缶ヤカン」(もと薬を煎じるのに用いた容器。銅などで造った湯沸かし)(3)[国] かま(缶)。「汽缶キカン」(蒸気を発生させる缶。ボイラー)「缶焚(かまた)き」(ボイラーをたく人)
<紫色は常用漢字>
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