戸 コ・と 戸部 hù
上は戸、下は門
解字 上は片開きのとびらの形の象形。両方のとびらを門という(下)。戸は家の入口や部屋の入口になる。また、家の入口から家の意味にもなる。日本では引戸の意味でよく使われる。戸は部首となる。
建物の入口である戸(中国のネットから。奥の家は戸を開き布を垂らしている)
意味 (1)と(戸)。とびら。家や部屋の片開きの出入り口。「戸口とぐち」(家の出入り口)(2)家。民家。「戸主コシュ」「戸籍コセキ」(戸ごとに戸主や家族の状況を記載した公文書)(3)[国]「引戸ひきど」(鴨居かもいと敷居しきいの溝をすべらせて左右に動かす戸)「雨戸あまど」(風雨や夜の用心のため家の外まわりや、窓に設けた引戸)「戸板といた」(雨戸の板。これをはずして人や物を載せて運んだ)「戸棚とだな」(主に引戸の付いた棚)
木製の雨戸(日本)
参考 戸は部首「戸と」になる。漢字の「たれ」や偏となり、戸や部屋の意味を表す。常用漢字は以下の6字がある。
戸コ(部首):
房ボウ・ふさ(戸+音符「方ホウ」)
扉ヒ・とびら(戸+音符「非ヒ」)
戻[戾]レイ・もどる(戸+犬の会意)
扇セン・おうぎ(戸+羽の会意)
所ショ・ところ(戸+斤の会意)
イメージ
「一枚とびら」(戸・肩・所・雇・顧)
「形声字」(扈・滬)
音の変化 コ・戸・雇・顧・扈・滬 ケン:肩 ショ:所
一枚とびら
肩 ケン・かた 月部にく jiān
解字 「月(からだ)+戸(とびら)」の会意。とびらのような骨(肩甲骨)があり、そこに腕の骨がついて動く、身体(月)の部位である肩(かた)をいう。
「肩甲骨ストレッチ」より
意味 かた(肩)。「肩甲骨ケンコウコツ」(両肩の上部をおおう平らな骨)「肩章ケンショウ」(制服の肩につけて階級を表すしるし)「双肩ソウケン」(①左右の肩。②責任・任務を負う者の例え)「比肩ヒケン」(肩をならべる。優劣がない)「肩車かたぐるま」(人を両肩にまたがらせてかつぐこと)
所 ショ・ソ・ところ 戸部 suǒ
解字 「戸(とびら)+斤(おの)」の会意。[新漢語林]は「金文の意味は、高い地位の人のいる場所の意味に用いる例が多く、斤(斧おの)を置いた入り口の戸の意味から(特別な人のいる)「ところ」の意味を表すようになったものであろう」とする。後に、住所・居所のように用いる。また、助詞、助動詞、接続詞、として用いられる。
意味 (1)ところ(所)。ありか。「場所バショ」「住所ジュウショ」(2)特定の仕事をする施設。「役所ヤクショ」「所長ショチョウ」(3)~するところの。~するもの。「所持ショジ」「所信ショシン」(4)ばかり(所り)。「長さ一寸所(ばか)り」(5)可能。べし(所し)。
雇 コ・やとう 隹部ふるどり gù
解字 甲骨文は、家の玄関の戸(とびら)に隹(とり)が飛来した形。後漢の[説文解字]は、「農業や養蚕における時期を知らせる渡り鳥である」としており、季節になると家の玄関にやってくるツバメのような渡り鳥であると思われる。現代字は、戸の下に隹が入った雇コになった。しかし、この字は後に同音の賈コ(売り買いする、ここでは買う)に通じて仮借カシャ(当て字)され、人の労働を買う、すなわち賃金を支払って人に仕事をさせる意に用いられる。同字である異体字に「イ(ひと)+雇(コ=賈)」の僱コ(やとう)があり、この字が略された形。
意味 (1)やとう(雇う)。賃金を払って仕事をさせる。人をやとう。「雇兵コヘイ」(お金を払って雇った兵士)「雇用コヨウ」(やとうこと)「解雇カイコ」(2)賃金や代金を支払う。「雇直コチ」(代金を支払う)(3)鳥の名。
顧 コ・かえりみる 頁部 gù
解字 「頁(あたま)+雇(飛来した渡り鳥)」の会意形声。農事を知らせる大事な渡り鳥をいつも頭で気にかけること。また、隹(とり)が戸口にくると頭をそちらに向けることから、ふりかえる、転じて、かえりみる意となる。
意味 (1)気にする。心にかける。「顧客コキャク」(心にかけてくれる馴染みの客)「顧問コモン」(①気にかけて問う、②[国]相談役)(2)かえりみる(顧みる)。ふりかえる。「回顧カイコ」(過去をかえりみること)(3)「三顧サンコ」とは、(『三国志』で劉備が三たび諸葛亮の家を訪れ軍師に迎えた故事から)目上の人が礼を尽くして人に仕事を引き受けてくれるよう頼むこと。「三顧の礼」(4)姓。「顧野王コヤオウ」(南朝の訓詁学者。[玉篇]を編集)「顧炎武コエンブ」(明末清の学者)
形声字
扈 コ 戸部 hù
上は扈コ、下は邑ユウ
解字 「邑ユウ+戸(コ)」の形声。下の邑ユウは「囗(外囲い・城壁)+ひざまづく人」で、城壁の中で人々が暮らす「まち」の形で、都市・みやこ・くに(諸侯の領地)の意味がある。現代字は邑の形になり、そこに戸がついた扈コは、コという名の領地で、現在の陝西省戸県にあった古代中国の国名。また、護ゴ・コ(まもる)に通じ、主人をまもって付き従う意ともなる。
意味 (1)古代中国の国名。今の陝西省戸県にあった。「有扈ユウコ」(①陝西省戸県にあった国名、②部族の長)(2)まち。城壁のあるまち。「跋扈バッコ」(跋はつよく踏む、扈は、まち。まちなかをつよく踏んで歩く。のさばること)「跳梁跋扈チョウリョウバッコ」(跳梁は、はねまわる、跋扈は、のさばる。悪人などが、我がもの顔にのさばること)(3)つきそう。「扈従コショウ・コジュウ」(付き従う。また、おとも)「扈遊コユウ」(天子に付き従って旅行する)
滬 コ 氵部 hù
解字 「氵(みず)+扈(コ)」の形声。コという名の川。蘇州近くの太湖から上海市内を流れる呉淞江ゴショウコウの古称。以前は海へ直接流れていた。現在は下流で黄浦江と合流する。下図の八世紀の点線(右から2番目。当時の海岸線)は黄浦江と合流する辺りの「外灘ワイタン」であり古代の上海は、この川のほとりで海と接する漁村だった。そこで、この川や海で行われた漁法である「えり」の意味もある。
明代以前の呉淞江(上の川)。蘇州河ともいう。太湖からまっすぐ東へ流れていた。
明代以後は下(南)の黄浦江が途中で枝分かれし呉淞江に合流した(水運の便のため)。
(「吴淞口的演变」より)
意味 (1)川の名。太湖から上海市内を流れる川、現在は下流で黄浦江に合流する。蘇州河とも。「滬瀆コトク」(呉淞江の古名)(2)上海市の別称。現在は上海の車のナンバープレートになっている。「滬城コジョウ」(上海の別称)「京滬線ケイコセン」(北京と上海を結ぶ鉄道路線)(3)えり。あじろ。海辺や川辺に竹の冊を並べ立てて魚をとらえる仕掛け。「魚滬ギョコ」(魚をとるえり)
<紫色は常用漢字>
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上は戸、下は門
解字 上は片開きのとびらの形の象形。両方のとびらを門という(下)。戸は家の入口や部屋の入口になる。また、家の入口から家の意味にもなる。日本では引戸の意味でよく使われる。戸は部首となる。
建物の入口である戸(中国のネットから。奥の家は戸を開き布を垂らしている)
意味 (1)と(戸)。とびら。家や部屋の片開きの出入り口。「戸口とぐち」(家の出入り口)(2)家。民家。「戸主コシュ」「戸籍コセキ」(戸ごとに戸主や家族の状況を記載した公文書)(3)[国]「引戸ひきど」(鴨居かもいと敷居しきいの溝をすべらせて左右に動かす戸)「雨戸あまど」(風雨や夜の用心のため家の外まわりや、窓に設けた引戸)「戸板といた」(雨戸の板。これをはずして人や物を載せて運んだ)「戸棚とだな」(主に引戸の付いた棚)
木製の雨戸(日本)
参考 戸は部首「戸と」になる。漢字の「たれ」や偏となり、戸や部屋の意味を表す。常用漢字は以下の6字がある。
戸コ(部首):
房ボウ・ふさ(戸+音符「方ホウ」)
扉ヒ・とびら(戸+音符「非ヒ」)
戻[戾]レイ・もどる(戸+犬の会意)
扇セン・おうぎ(戸+羽の会意)
所ショ・ところ(戸+斤の会意)
イメージ
「一枚とびら」(戸・肩・所・雇・顧)
「形声字」(扈・滬)
音の変化 コ・戸・雇・顧・扈・滬 ケン:肩 ショ:所
一枚とびら
肩 ケン・かた 月部にく jiān
解字 「月(からだ)+戸(とびら)」の会意。とびらのような骨(肩甲骨)があり、そこに腕の骨がついて動く、身体(月)の部位である肩(かた)をいう。
「肩甲骨ストレッチ」より
意味 かた(肩)。「肩甲骨ケンコウコツ」(両肩の上部をおおう平らな骨)「肩章ケンショウ」(制服の肩につけて階級を表すしるし)「双肩ソウケン」(①左右の肩。②責任・任務を負う者の例え)「比肩ヒケン」(肩をならべる。優劣がない)「肩車かたぐるま」(人を両肩にまたがらせてかつぐこと)
所 ショ・ソ・ところ 戸部 suǒ
解字 「戸(とびら)+斤(おの)」の会意。[新漢語林]は「金文の意味は、高い地位の人のいる場所の意味に用いる例が多く、斤(斧おの)を置いた入り口の戸の意味から(特別な人のいる)「ところ」の意味を表すようになったものであろう」とする。後に、住所・居所のように用いる。また、助詞、助動詞、接続詞、として用いられる。
意味 (1)ところ(所)。ありか。「場所バショ」「住所ジュウショ」(2)特定の仕事をする施設。「役所ヤクショ」「所長ショチョウ」(3)~するところの。~するもの。「所持ショジ」「所信ショシン」(4)ばかり(所り)。「長さ一寸所(ばか)り」(5)可能。べし(所し)。
雇 コ・やとう 隹部ふるどり gù
解字 甲骨文は、家の玄関の戸(とびら)に隹(とり)が飛来した形。後漢の[説文解字]は、「農業や養蚕における時期を知らせる渡り鳥である」としており、季節になると家の玄関にやってくるツバメのような渡り鳥であると思われる。現代字は、戸の下に隹が入った雇コになった。しかし、この字は後に同音の賈コ(売り買いする、ここでは買う)に通じて仮借カシャ(当て字)され、人の労働を買う、すなわち賃金を支払って人に仕事をさせる意に用いられる。同字である異体字に「イ(ひと)+雇(コ=賈)」の僱コ(やとう)があり、この字が略された形。
意味 (1)やとう(雇う)。賃金を払って仕事をさせる。人をやとう。「雇兵コヘイ」(お金を払って雇った兵士)「雇用コヨウ」(やとうこと)「解雇カイコ」(2)賃金や代金を支払う。「雇直コチ」(代金を支払う)(3)鳥の名。
顧 コ・かえりみる 頁部 gù
解字 「頁(あたま)+雇(飛来した渡り鳥)」の会意形声。農事を知らせる大事な渡り鳥をいつも頭で気にかけること。また、隹(とり)が戸口にくると頭をそちらに向けることから、ふりかえる、転じて、かえりみる意となる。
意味 (1)気にする。心にかける。「顧客コキャク」(心にかけてくれる馴染みの客)「顧問コモン」(①気にかけて問う、②[国]相談役)(2)かえりみる(顧みる)。ふりかえる。「回顧カイコ」(過去をかえりみること)(3)「三顧サンコ」とは、(『三国志』で劉備が三たび諸葛亮の家を訪れ軍師に迎えた故事から)目上の人が礼を尽くして人に仕事を引き受けてくれるよう頼むこと。「三顧の礼」(4)姓。「顧野王コヤオウ」(南朝の訓詁学者。[玉篇]を編集)「顧炎武コエンブ」(明末清の学者)
形声字
扈 コ 戸部 hù
上は扈コ、下は邑ユウ
解字 「邑ユウ+戸(コ)」の形声。下の邑ユウは「囗(外囲い・城壁)+ひざまづく人」で、城壁の中で人々が暮らす「まち」の形で、都市・みやこ・くに(諸侯の領地)の意味がある。現代字は邑の形になり、そこに戸がついた扈コは、コという名の領地で、現在の陝西省戸県にあった古代中国の国名。また、護ゴ・コ(まもる)に通じ、主人をまもって付き従う意ともなる。
意味 (1)古代中国の国名。今の陝西省戸県にあった。「有扈ユウコ」(①陝西省戸県にあった国名、②部族の長)(2)まち。城壁のあるまち。「跋扈バッコ」(跋はつよく踏む、扈は、まち。まちなかをつよく踏んで歩く。のさばること)「跳梁跋扈チョウリョウバッコ」(跳梁は、はねまわる、跋扈は、のさばる。悪人などが、我がもの顔にのさばること)(3)つきそう。「扈従コショウ・コジュウ」(付き従う。また、おとも)「扈遊コユウ」(天子に付き従って旅行する)
滬 コ 氵部 hù
解字 「氵(みず)+扈(コ)」の形声。コという名の川。蘇州近くの太湖から上海市内を流れる呉淞江ゴショウコウの古称。以前は海へ直接流れていた。現在は下流で黄浦江と合流する。下図の八世紀の点線(右から2番目。当時の海岸線)は黄浦江と合流する辺りの「外灘ワイタン」であり古代の上海は、この川のほとりで海と接する漁村だった。そこで、この川や海で行われた漁法である「えり」の意味もある。
明代以前の呉淞江(上の川)。蘇州河ともいう。太湖からまっすぐ東へ流れていた。
明代以後は下(南)の黄浦江が途中で枝分かれし呉淞江に合流した(水運の便のため)。
(「吴淞口的演变」より)
意味 (1)川の名。太湖から上海市内を流れる川、現在は下流で黄浦江に合流する。蘇州河とも。「滬瀆コトク」(呉淞江の古名)(2)上海市の別称。現在は上海の車のナンバープレートになっている。「滬城コジョウ」(上海の別称)「京滬線ケイコセン」(北京と上海を結ぶ鉄道路線)(3)えり。あじろ。海辺や川辺に竹の冊を並べ立てて魚をとらえる仕掛け。「魚滬ギョコ」(魚をとるえり)
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