第3回音符研究会 2017年5月13日
テーマ 漢字の分類(象形、指事、会意、形声、仮借)と音符
~音符は六書のどこから来ているのか~
講 師 山本康喬 『漢字音符字典』著者・漢字教育士
私は漢字を音符で分類して、漢字の持つ問題点 すなわちその習得が大変困難である事を 解決する方法を開発したいと考えて活動しています。まず、漢字そのものを分類するものとして六書があります。その六書について実態を解明します。
1、六書とは
紀元100年に許慎が「説文解字」を著し、そのなかで漢字が作られた方法を説き、六書を初めて紹介しました。
それは 象形 指事 会意 形声 転注 仮借です。それぞれの定義は後でのべますが、まず常用漢字(2136字)を六書で分類してみます。
常用漢字(2136字)の六書別一覧
六 書 字数 比率 備 考
象 形 265字 12・4% 日 月 山 川 田 木 鳥 魚 九 など
指 事 10字 0・5% 一 二 三 八 十 百 上 下 本 末 など
会 意 530字 24・6% 解 安 定 家 官 など
形 声 1312字 61・4% 江 河 など (字数がアップすると比率アップ)
仮 借 13字 0・6% 四 五 六 七 我 今 昔 東 西 不 無 など
転 注 ? なし 定義がハッキリせず不明
国 字 6字 0・3% 込 峠 栃 匂 畑 枠
合 計 2136字 100%
最初に作られた漢字が象形文字です。目に見えるものの形をヒントに作られました。また、指事文字も少し遅れてですが同時に作られました。抽象的な概念を表す工夫をしました。次に作られたのが、二つ以上の字を組み合わせて作られた会意と形声字です。
会意文字は二つ以上の字形を組み合わせ、その意味のまとまりから新たな意味を表した字です。牛と角に刀で解く、解剖するという意味を表します。この方法により多くの意味を表す字が工夫されました。会意文字は特に制約や規則は有りません。自由に組み合わせたらよいのです。その字の音も任意に決められました。音を決める方法や根拠は全く不明なので、音を推測する手がかりすらなく、学習する上で最も厄介です。解は会意文字の代表です。カイという音は牛、角、刀のどの音とも異なるので、兎に角憶えるのみです。
形声文字は字形と音を表す音符と、字の意味の範疇を表す意符(部首)とを組み合わせて作られました。字が作られるはるか以前から身の回りのものは、呼び名がありました。この呼び名を表す音を持つ音符と部首を組み合わせると、誰にもわかりやすく、しかも呼び名をそのまま発音とする文字が出来ました。合理的な方法で作られたので、以後の漢字の主流となりました。
形声文字は音符の音を用います。また字形も音符の字形が遺伝子のごとく引き継がれます。一つの音符から生まれた形声文字は、学習し記憶するのに便利であり、脳内に漢字を記憶し保持しておくのに基本の体系をなすので、多数の漢字を整理して記憶する手段として有用です。 常用漢字では形声文字が全体の61%、会意文字が26%を占めています。
次に字を作る方法の一つに仮借があります。目に見えない抽象的な概念を表す方法として、既にある文字を借り、字形と音は同じですが、意味は抽象的な概念を表す字としました。形と音を他の字から借用するので仮借と名付けています。どういう字が仮借なのか、備考欄の字を憶えて下さい。
その他に、わが国で作られた国字があります。訓のみで音はありません。これも数少ないので憶えてください。音は無いので音符で分類する方法では枠外の字です。転注は未だ何を表すのか不明の方法です。
2、音符と意符
六書とは別に、漢字の働きを表す言葉に音符と意符(部首)というのがあります。皆さんは漢字を憶える際に部首を学びますので、大抵の漢字の部首は知っていますね。しかし、漢字の世界では意符という言葉がより正確に表現できるので用いられますが、大部分は部首と同じと思って下さい。
音符という言葉は最近、私の「漢字音符字典」で用いましたので、少しは知られるようになりました。少し昔は音記号や声符とか、「声は」などと呼ばれ、学者先生により呼び方が違うことがありました。最近では大部分の先生が音符と呼んでいます。また数年前ぐらいから中学の国語教科書で音符の説明が載っています。しかし、ほとんどの大人は音符について学んでいません。馴染みがない言葉ですが、漢字を学ぶには今後非常に有用になるので要注意です。
ここで1級対象漢字6445字(JIS第1、第2水準)の六書分類を見てみましょう。字数の( )内は常用漢字です。
1級対象漢字6445字の六書別一覧
六 書 字 数 比率
象 形 463字( 265字) 7・2%
指 事 11字( 10字) 0・2%
会 意 866字( 530字) 13・4%
形 声 4934字(1312字) 76・5%
仮 借 15字( 13字) 0・2%
国 字 156字( 6字) 2・4%
合 計 6445字(2136字) 100%
字数を約3倍まで広げて六書別の字数を見てみると、象形文字は1・75倍で字数はあまり増加していません。象形文字はあまり作られておらず、その増加には限界があります。また、会意文字も1・6倍であり、象形文字と同じようにあまり増加していません。指事文字・仮借に至っては1~2字の増加にとどまり、ほとんど変わりません。
一方形声文字は3・8倍となり、文字数の増加の割合(3倍)より更に多くなり、比率も76%を超えました。1万字以上の辞書で見てみると、形声字が80%を超えています。形声文字は意符と音符の組み合わせで作られるので、形声文字が3・8倍にもなったということは、音符の数が急増していることにほかなりません。
なお、ここで注目すべきは国字の増加で26倍です。国字は日本で作られた字ですので音を持ちませから六書の範囲外になっていますが、ほとんどは会意の原理で作られていますので、国訓をもつ会意文字といえます。
3、音符とは何か、どこから来たか
そこで、形声文字の増加を支えている音符とは何なのか、どこから来るのか考えてみましょう。
私の「漢字音符字典」で会意文字の見本といわれる 解 の字を引いてみましょう。
<音符> 解カイ・とく
<形声文字> 廨カイ・役所 懈カイ・ケ・怠る 邂カイ・あう 蟹カイ・かに
会意文字である解は、4個の形声文字において立派に音符として機能しています。会意文字が音符になったのです。
また 連 の字も会意文字ですが、
<音符> 連レン・つらなる
<形声文字> 蓮レン・はす 漣レン・さざなみ 縺レン・もつれ 鏈レン・くさり
同様に会意文字の連は、4個の形声文字において音符の役割を果しています。
このようにどんな字も、また文字要素であっても別の形声文字で音符としての働きをしている限り、音符になり得るのです。音符を持たない字から音符そのものに変身したのです。会意字として生まれた字が、音符という新たな機能を担った字に転換したのです。非表音字が表音文字に転化したともいえます。
ここで1級対象漢字6445字を収録している「漢字音符字典」において音符となっている字の六書を調べました。
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漢字音符字典(6445字)の六書別音符数
六 書 字数 比率 音符数
象 形 463字 7・2% 437字
指 事 11字 0・2% 7字
会 意 866字 13・4% 516字
形 声 4934字 76・5% 207字
仮 借 15字 0・2% 10字
国 字 156字 2・4% 0
合 計 6445字 100% 1177字
調べてみますと象形文字の内437字、会意文字の内516字が、見事に音符に変身しているのです。一つの音符を持たない字が音符そのものに変身して、新たな形声文字の誕生に貢献しているのです。漢字音符字典の1177字ほどの音符の内953字程は象形と会意字でした。象形文字は大部分が音符に転換しています。会意文字は60%ほどが音符に転換しています。音符を含んでいる形声文字も、さらにその一部が音符に転換しています。
解や連は会意文字であると同時に音符なのです。音符かどうかを確かめるには、他の同じ音の漢字において音符の役割を果たしているかどうかです。一つでも形声文字があれば音符です。一般に一つの音符はせいぜい10数個程度の形声文字を作ります。同じ音の字はそう沢山は存在できないのです。
4、音符にならない字の扱い
以上の分析により、六書分類された字のうち多くが音符となっていることが明らかになりました。では、音符と無関係な字とは、どんな字なのでしょうか?以下は「漢字音符字典」(1級対象漢字6445字)の音符以外の字を六書別に表にしたものです。
漢字音符字典(1級対象漢字6445字)の音符以外の字(六書別)
六 書 字数 比率 音符字 音符以外の字
象 形 463字 7・2% 437字 26字
指 事 11字 0・2% 7字 4字
会 意 866字 13・4% 516字 350字
形 声 4934字 76・5% 207字 4727字
仮 借 15字 0・2% 10字 5字
国 字 156字 2・4% 0 156字
合 計 6445字 100% 1177字 5268字(541)
音符以外の字は、象形文字で26字、指事文字4字、会意文字350字、仮借文字5字、国字156字の合計541字あります。音符以外の字とは、音符と結びつきのない言わば孤独な字です。これらの541字は全体の8.3%になります。(なお、音符以外の字のうち形声文字は4727字ありますが、この字にはすでに音符が含まれていますので省きます。)
私の「漢字音符字典」では、このうち会意文字については音符と字形が同じものは、便宜的にその音符に含めています。例えば、災サイは「巛(川)+火」の会意字ですが、音符「川セン」に含めています。これにより音符「川セン」には異質の発音であるサイが含まれています。
同じように会意文字の原理からなる国字は、参考のためその字形を含む音符に含めています。例えば、音符「入ニュウ」には、込こ(む)・叺かます・魞えり・鳰にお、などです。あくまでも参考ですから色の薄いグレーの字にしています。(ただし、常用漢字は赤、準1級字は黒です)
こうした処理により、音符と無関係の字は37字となり巻末に1級対象漢字として50音別に排列しています。また、国字は各音符にグレーの文字(ただし、常用漢字は赤、準1級字は黒)で挿入していますが、巻末に1級対象国字として107字を訓読みの50音順に排列しています。
これらの方法は純粋な音符の視点から外れますが、音符と結びつきのない字を、できるだけ音符と関連づけることにより漢字の習得を容易にしたいと思うからです。将来的に、こうした字については音符グループのなかで、六書の所属を個別に明示したいと考えています。
5、終わりに~会意字と形声字の見分けについて
本文の中で常用漢字および1級対象漢字(JIS第1、第2水準)の六書ごとの一覧表を掲載しました。この表を作成するにあたり最も厄介だったのは会意字と形声字の区分です。未だに、一部の字でその明確な区別がつきません。辞書別に相違がありどちらが真実なのかの判定がつかないからです。判断がつきにくい字については各辞書を参考にしたうえで独自に決めさせていただきました。極端に言えば学者先生の数だけ相違があり、いちいち対応しきれないと感じたからです。したがって一覧表の六書ごとの数字は必ずしも確定されたものでなく、今後、変動する可能性があることをお断りしておきます。
これからも少しでも両者の正確な区別に努めますが、漢字を勉強する多くの方々にとって、ほんの一部の会意と形声の区別がそれほど重要だとは思いません。それより、漢字の習得が困難であるという問題を音符による学習で克服できる可能性を大事にしてゆきたいのです。
テーマ 漢字の分類(象形、指事、会意、形声、仮借)と音符
~音符は六書のどこから来ているのか~
講 師 山本康喬 『漢字音符字典』著者・漢字教育士
私は漢字を音符で分類して、漢字の持つ問題点 すなわちその習得が大変困難である事を 解決する方法を開発したいと考えて活動しています。まず、漢字そのものを分類するものとして六書があります。その六書について実態を解明します。
1、六書とは
紀元100年に許慎が「説文解字」を著し、そのなかで漢字が作られた方法を説き、六書を初めて紹介しました。
それは 象形 指事 会意 形声 転注 仮借です。それぞれの定義は後でのべますが、まず常用漢字(2136字)を六書で分類してみます。
常用漢字(2136字)の六書別一覧
六 書 字数 比率 備 考
象 形 265字 12・4% 日 月 山 川 田 木 鳥 魚 九 など
指 事 10字 0・5% 一 二 三 八 十 百 上 下 本 末 など
会 意 530字 24・6% 解 安 定 家 官 など
形 声 1312字 61・4% 江 河 など (字数がアップすると比率アップ)
仮 借 13字 0・6% 四 五 六 七 我 今 昔 東 西 不 無 など
転 注 ? なし 定義がハッキリせず不明
国 字 6字 0・3% 込 峠 栃 匂 畑 枠
合 計 2136字 100%
最初に作られた漢字が象形文字です。目に見えるものの形をヒントに作られました。また、指事文字も少し遅れてですが同時に作られました。抽象的な概念を表す工夫をしました。次に作られたのが、二つ以上の字を組み合わせて作られた会意と形声字です。
会意文字は二つ以上の字形を組み合わせ、その意味のまとまりから新たな意味を表した字です。牛と角に刀で解く、解剖するという意味を表します。この方法により多くの意味を表す字が工夫されました。会意文字は特に制約や規則は有りません。自由に組み合わせたらよいのです。その字の音も任意に決められました。音を決める方法や根拠は全く不明なので、音を推測する手がかりすらなく、学習する上で最も厄介です。解は会意文字の代表です。カイという音は牛、角、刀のどの音とも異なるので、兎に角憶えるのみです。
形声文字は字形と音を表す音符と、字の意味の範疇を表す意符(部首)とを組み合わせて作られました。字が作られるはるか以前から身の回りのものは、呼び名がありました。この呼び名を表す音を持つ音符と部首を組み合わせると、誰にもわかりやすく、しかも呼び名をそのまま発音とする文字が出来ました。合理的な方法で作られたので、以後の漢字の主流となりました。
形声文字は音符の音を用います。また字形も音符の字形が遺伝子のごとく引き継がれます。一つの音符から生まれた形声文字は、学習し記憶するのに便利であり、脳内に漢字を記憶し保持しておくのに基本の体系をなすので、多数の漢字を整理して記憶する手段として有用です。 常用漢字では形声文字が全体の61%、会意文字が26%を占めています。
次に字を作る方法の一つに仮借があります。目に見えない抽象的な概念を表す方法として、既にある文字を借り、字形と音は同じですが、意味は抽象的な概念を表す字としました。形と音を他の字から借用するので仮借と名付けています。どういう字が仮借なのか、備考欄の字を憶えて下さい。
その他に、わが国で作られた国字があります。訓のみで音はありません。これも数少ないので憶えてください。音は無いので音符で分類する方法では枠外の字です。転注は未だ何を表すのか不明の方法です。
2、音符と意符
六書とは別に、漢字の働きを表す言葉に音符と意符(部首)というのがあります。皆さんは漢字を憶える際に部首を学びますので、大抵の漢字の部首は知っていますね。しかし、漢字の世界では意符という言葉がより正確に表現できるので用いられますが、大部分は部首と同じと思って下さい。
音符という言葉は最近、私の「漢字音符字典」で用いましたので、少しは知られるようになりました。少し昔は音記号や声符とか、「声は」などと呼ばれ、学者先生により呼び方が違うことがありました。最近では大部分の先生が音符と呼んでいます。また数年前ぐらいから中学の国語教科書で音符の説明が載っています。しかし、ほとんどの大人は音符について学んでいません。馴染みがない言葉ですが、漢字を学ぶには今後非常に有用になるので要注意です。
ここで1級対象漢字6445字(JIS第1、第2水準)の六書分類を見てみましょう。字数の( )内は常用漢字です。
1級対象漢字6445字の六書別一覧
六 書 字 数 比率
象 形 463字( 265字) 7・2%
指 事 11字( 10字) 0・2%
会 意 866字( 530字) 13・4%
形 声 4934字(1312字) 76・5%
仮 借 15字( 13字) 0・2%
国 字 156字( 6字) 2・4%
合 計 6445字(2136字) 100%
字数を約3倍まで広げて六書別の字数を見てみると、象形文字は1・75倍で字数はあまり増加していません。象形文字はあまり作られておらず、その増加には限界があります。また、会意文字も1・6倍であり、象形文字と同じようにあまり増加していません。指事文字・仮借に至っては1~2字の増加にとどまり、ほとんど変わりません。
一方形声文字は3・8倍となり、文字数の増加の割合(3倍)より更に多くなり、比率も76%を超えました。1万字以上の辞書で見てみると、形声字が80%を超えています。形声文字は意符と音符の組み合わせで作られるので、形声文字が3・8倍にもなったということは、音符の数が急増していることにほかなりません。
なお、ここで注目すべきは国字の増加で26倍です。国字は日本で作られた字ですので音を持ちませから六書の範囲外になっていますが、ほとんどは会意の原理で作られていますので、国訓をもつ会意文字といえます。
3、音符とは何か、どこから来たか
そこで、形声文字の増加を支えている音符とは何なのか、どこから来るのか考えてみましょう。
私の「漢字音符字典」で会意文字の見本といわれる 解 の字を引いてみましょう。
<音符> 解カイ・とく
<形声文字> 廨カイ・役所 懈カイ・ケ・怠る 邂カイ・あう 蟹カイ・かに
会意文字である解は、4個の形声文字において立派に音符として機能しています。会意文字が音符になったのです。
また 連 の字も会意文字ですが、
<音符> 連レン・つらなる
<形声文字> 蓮レン・はす 漣レン・さざなみ 縺レン・もつれ 鏈レン・くさり
同様に会意文字の連は、4個の形声文字において音符の役割を果しています。
このようにどんな字も、また文字要素であっても別の形声文字で音符としての働きをしている限り、音符になり得るのです。音符を持たない字から音符そのものに変身したのです。会意字として生まれた字が、音符という新たな機能を担った字に転換したのです。非表音字が表音文字に転化したともいえます。
ここで1級対象漢字6445字を収録している「漢字音符字典」において音符となっている字の六書を調べました。
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漢字音符字典(6445字)の六書別音符数
六 書 字数 比率 音符数
象 形 463字 7・2% 437字
指 事 11字 0・2% 7字
会 意 866字 13・4% 516字
形 声 4934字 76・5% 207字
仮 借 15字 0・2% 10字
国 字 156字 2・4% 0
合 計 6445字 100% 1177字
調べてみますと象形文字の内437字、会意文字の内516字が、見事に音符に変身しているのです。一つの音符を持たない字が音符そのものに変身して、新たな形声文字の誕生に貢献しているのです。漢字音符字典の1177字ほどの音符の内953字程は象形と会意字でした。象形文字は大部分が音符に転換しています。会意文字は60%ほどが音符に転換しています。音符を含んでいる形声文字も、さらにその一部が音符に転換しています。
解や連は会意文字であると同時に音符なのです。音符かどうかを確かめるには、他の同じ音の漢字において音符の役割を果たしているかどうかです。一つでも形声文字があれば音符です。一般に一つの音符はせいぜい10数個程度の形声文字を作ります。同じ音の字はそう沢山は存在できないのです。
4、音符にならない字の扱い
以上の分析により、六書分類された字のうち多くが音符となっていることが明らかになりました。では、音符と無関係な字とは、どんな字なのでしょうか?以下は「漢字音符字典」(1級対象漢字6445字)の音符以外の字を六書別に表にしたものです。
漢字音符字典(1級対象漢字6445字)の音符以外の字(六書別)
六 書 字数 比率 音符字 音符以外の字
象 形 463字 7・2% 437字 26字
指 事 11字 0・2% 7字 4字
会 意 866字 13・4% 516字 350字
形 声 4934字 76・5% 207字 4727字
仮 借 15字 0・2% 10字 5字
国 字 156字 2・4% 0 156字
合 計 6445字 100% 1177字 5268字(541)
音符以外の字は、象形文字で26字、指事文字4字、会意文字350字、仮借文字5字、国字156字の合計541字あります。音符以外の字とは、音符と結びつきのない言わば孤独な字です。これらの541字は全体の8.3%になります。(なお、音符以外の字のうち形声文字は4727字ありますが、この字にはすでに音符が含まれていますので省きます。)
私の「漢字音符字典」では、このうち会意文字については音符と字形が同じものは、便宜的にその音符に含めています。例えば、災サイは「巛(川)+火」の会意字ですが、音符「川セン」に含めています。これにより音符「川セン」には異質の発音であるサイが含まれています。
同じように会意文字の原理からなる国字は、参考のためその字形を含む音符に含めています。例えば、音符「入ニュウ」には、込こ(む)・叺かます・魞えり・鳰にお、などです。あくまでも参考ですから色の薄いグレーの字にしています。(ただし、常用漢字は赤、準1級字は黒です)
こうした処理により、音符と無関係の字は37字となり巻末に1級対象漢字として50音別に排列しています。また、国字は各音符にグレーの文字(ただし、常用漢字は赤、準1級字は黒)で挿入していますが、巻末に1級対象国字として107字を訓読みの50音順に排列しています。
これらの方法は純粋な音符の視点から外れますが、音符と結びつきのない字を、できるだけ音符と関連づけることにより漢字の習得を容易にしたいと思うからです。将来的に、こうした字については音符グループのなかで、六書の所属を個別に明示したいと考えています。
5、終わりに~会意字と形声字の見分けについて
本文の中で常用漢字および1級対象漢字(JIS第1、第2水準)の六書ごとの一覧表を掲載しました。この表を作成するにあたり最も厄介だったのは会意字と形声字の区分です。未だに、一部の字でその明確な区別がつきません。辞書別に相違がありどちらが真実なのかの判定がつかないからです。判断がつきにくい字については各辞書を参考にしたうえで独自に決めさせていただきました。極端に言えば学者先生の数だけ相違があり、いちいち対応しきれないと感じたからです。したがって一覧表の六書ごとの数字は必ずしも確定されたものでなく、今後、変動する可能性があることをお断りしておきます。
これからも少しでも両者の正確な区別に努めますが、漢字を勉強する多くの方々にとって、ほんの一部の会意と形声の区別がそれほど重要だとは思いません。それより、漢字の習得が困難であるという問題を音符による学習で克服できる可能性を大事にしてゆきたいのです。
漢字の成り立ちとその比率が明示され、とても素晴らしい内容でした。ありがとうございました。