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映画『東京家族』について

‘The Japan Times (2019.9.30.)’ の記事から (2) Kenzo Takada

2019年10月06日 | 映画『東京家族』





https://www.japantimes.co.jp/life/2019/09/29/style/kenzo-takada-adds-legacy-operatic-style/#.XZm3-9L7Tcs

‘The Japan Times (2019.9.30.)’




 この記事に導かれて、オペラ『蝶々夫人』を観た。
 高田賢三氏は日本初の国際的デザイナーである。その衣装への興味から劇場を訪れたのであるが、総合芸術であるオペラの「夢と感情の異常な高揚への旅」は想像を遥かに超えていて、その荘厳な美の世界に圧倒された。泣いている観客も沢山いたし、私の涙腺も危なかった。運命に翻弄される蝶々さんの結末を知らなかった私は、加速する物語の渦に呑み込まれた。

 以下の文章は所謂「ネタバレ」もあるので、今後の横須賀とドレスデンの公演を観る予定の方は注意してほしい。







  
 これは今年初めに行われた高田賢三氏の誕生記念パーティーの模様である。
 ここには今回の『蝶々夫人』と同じ衣装の構成コンセプトある。それは何かというと、第一幕では和服、続く第二幕では洋服になるということだ。明治時代の長崎、オペラの主役の蝶々さんは十五歳。数えであるからプラス一歳と少しと考えてもよい。蝶々さんというよりは「お蝶」とでも言ったほうがよい年齢であるが芸者であり、アメリカの海軍士官ピンカートンと、親戚は反対をするなか結婚式を挙げる。この時の蝶々さんは伝統的な白無垢の花嫁衣裳で、薄く透きとおった長い長いヴェールを掲げて、十人の仲間の芸者たちに囲まれて入場する。これらも伝統的な着物であるが、極彩色、といっては重過ぎる、例えば山吹色というよりレモンイエロー、藍というよりマリンブルー、とにかくパステル十色の華やかで美しい合唱団なのだ。




















 ※ これは例えば黄緑はこんな感じ、といった私の参考シャツである。高田氏退任後の KENZO であるが、氏の色に対する精神は伝わっている。




 そして着物との取り合わせで美しさが累乗するのが帯である。しかしそれを語るためには私の和服の知識が非常に乏しく、語彙があまりにも足りない。谷崎か何かを読めばいいような気がするが、これは今後の課題であろう。



 ※ ちょっと時間が経って色が褪せてしまっているが、帯の参考商品として一応出しておく。
















 第二幕は一転、洋服である。あれから三年後の蝶々夫人は十八歳、もしくは今でいう十九歳。ピンカートンとの子供と共に、ピンクの花柄の洋服だ。男の子は半ズボンにまでたなびく赤い雲のようなデザインが施され、蝶々さんの服は薄い黄色の地の上に大きな花が咲いている。

 そして第三幕。これは音楽的にも演出的にも続けて上演される。ピンカートンを待つ蝶々夫人は、彼が乗った船が帰って来たと確信して、あの結婚式で着た白い衣装を着ようとする。しかしこれは第一幕のような伝統的な着物ではなく、それを西洋的に解釈した、ガウンのように羽織った KIMONO の姿で、ピンカートンを待って待って待ち続ける……。


 これが大まかな蝶々さんの衣装プランである。その他ケートの赤と黒のドレス、日本神話から飛び出てきたような黄色の神、回想をする成長した息子の臙脂色のセーター?に羽織った濃いグレーのジャケット、等々見所は数知れずである。












 しかし、やはりこれだけは書いておかねばならないであろう。このオペラの最も有名なアリア、「ある晴れた日に」である。














 このアリアは第二幕が始まってすぐ歌われる。ピンカートンの船を捜すために、ふたりの家の屋根の上に登り、切々と歌われる絶唱である。衣装プラン的には、和服と洋服の境目にあることになる。では、蝶々夫人は何を着てこの「ある晴れた日に」を歌うのであろうか。これはちょっと言いにくいのだけれど、着物でいうところの襦袢(白)、または洋服でいうと camisole 、もしくは petticoat になるのであろうか。

 “I see the story as a love poem,”











 この場面のイメージは、このような感じを想像してもらえば良いのかもしれない。








 とにかく、歌も姿も、この世に現出した絶世の美しさである。

 この公演は主要な役がダブル・キャストになっていて、私が観た回は森谷真理さんのソプラノ、蝶々夫人であった。





























『ススメ! 栃木部(1)』一葵さやか

















 














 













 最後に、このブログのテーマ的に、『蝶々夫人』といえば、これを外すわけにはいかないであろう。






















































 

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