4月28日なので、『琉球新報』のサイトを見ていたら、こんな記事があった。
【オバマ氏発言で「誤訳」が独り歩き 日本のメディア】
“ 24日の日米共同記者会見で、オバマ大統領が尖閣諸島問題について「事態をエスカレートさせるのは『重大な誤りだ』」と語った部分について、多くの日本メディアが「正しくない」と訳して報じている。公式の同時通訳で「正しくない」とされたため、そのまま使われている形だが、尖閣問題に関してオバマ氏が安倍晋三首相に直接指摘した重要な言葉が、「誤訳」のまま報道されているとの指摘も出ている。
会見でオバマ氏は、米メディアからの「中国が尖閣に軍事侵攻したら米国は武力を行使するのか」という質問に対し、「日本の施政下にある領域に(日米安全保障)条約が適用されるという同盟の条件は、他の複数国との間の条約における標準的な解釈だ。われわれは単にこの条約を応用しただけだ」と説明した。
その上で、「同時に私は安倍首相に直接言った。日中間で対話や信頼関係を築くような方法ではなく、事態がエスカレーションしていくのを看過し続けるのは重大な誤りだと」と述べ、首相に平和的解決を強く求めたことを明らかにした。
共同会見では日本政府が通訳機を用意し、日本メディアは同時通訳を通してオバマ氏の発言を確認。同時通訳が「重大な誤り」を指す「profound mistake」を「正しくない」と訳したことを受け、本紙が記事配信を受ける共同通信などを含む多くの報道機関が、そのまま発言内容を報じた。
沖縄の基地問題などを日本語と英語で積極的に発信している平和団体ピース・フィロソフィーセンター(カナダ)の乗松聡子代表は「オバマ氏が安倍首相に直接くぎを刺した言葉を、日本のメディアの多くは重視せず、正確に報じていない。読者、視聴者に誤解を与える」と話している。” 『琉球新報』 2014年4月27日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-224391-storytopic-3.html
記事にある「ピース・フィロソフィーセンター」に、より詳しい解説があったが、
http://peacephilosophy.blogspot.jp/
私も辞書で確認してみた。
【mistake】(名詞) 誤り,間違い,ミス, 『リーダーズ英和辞典 第3版』
「mistake」に最もふさわしい訳語は、上記の3語だが、「多くの日本メディア」で報じられた、「正しくない」も、意味から言えば「mistake」の訳語として、間違いではない。
しかし、オバマ大統領の原文には、「mistake」の前に「profound」が付けられている。この「profound」は、非常に含蓄のある言葉だ。
【profound】(形容詞)
① <人が>深みのある,造詣の深い;<学問などが>深い,深遠な.
②a <同情などが>心からの,深い,深甚な;<変化・影響などが>甚大な,深刻な.
b <ため息が>深い,<病気などが>根深い,重度の;<眠り・沈黙などが>深い.
③a ≪文語≫ 深い a ~ abyss.
b 腰を低くかがめた<お辞儀>;うやうやしい. 『同上』
ホワイトハウスのサイトに公開されている原文の文脈を見て、原意に最も近い語に訳すのは各人の力量であるが、「profound mistake」の訳を「正しくない」とするのは、完全なる(意図的な)誤訳である。
全く、こんな落書きも出てくる道理である(笑)。
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“Ridiculous the waste sad time
Stretching before and after.” 「Burnt Norton」 T.S.ELIOT
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