答えは現場にあり!技術屋日記

還暦過ぎの土木技術者のオジさんが、悪戦苦闘七転八倒で生きる日々の泣き笑いをつづるブログ。

訳あり

2020年02月13日 | 北川村

日曜日、柚子の剪定をしていて、顔に傷をつくった。

どのくらいの人がご存知かはチトわからないが、柚子には鋭利な棘(とげ)がある

その棘がつけた傷である。

ことほど左様に、柚子の剪定作業は棘とのたたかいだ。しかし、アッチで刺さりコッチで引っ掻きするものだから、たいていの場合は、軽い痛みをともないつつ作業をつづけており、作業中には気づかない。作業が終わり、「さていっぱいやるか、おっとその前に風呂だ」というそのときに、はじめて気づくことが多い。

くだんの顔の傷もそうだった。

鏡の前に立ってみたら、右の鼻腔の下から上くちびるの右端に向けて、長さ2センチ程度の傷が一筋ついていた。堂々とした向う傷だ。その具合から判断して、しばらくは消えそうにもない。

あいにくと、翌朝は役所との打ち合わせが予定されている。

「あゝあ、かっこ悪いな」

そう思ったが仕方がない。若いころなら絆創膏でも貼ってごまかしたのだろうが、今となってはそのような選択肢もなく、なにより、後ろめたい傷ではないのだもの、そのまま出勤すると、自分の顔にそのような傷がついているのもすっかり忘れ、役所との打ち合わせを含めた諸事業務をこなした。

それからまた一日すぎたきのう、ある社外の女性(Aさん)と立ち話をしていて、とつぜん質問された。

 

「その傷、どうしたんですか?」

軽く説明したあと、あることに気づいたわたし。

「じつはね、その質問したの、アンタがはじめて」

「えー誰も訊かないんですか?」

「うん、なんも言わん」

「それって訊けないんですよ」

「訳あり、やと思うて?」

「そう」

「そうか、そうやなあ。それに・・・」

「なんですか?」

「オレって話しかけにくい?」

「それはわたしの口からは・・・」

「おんちゃんはヒジョーにさびしー、のだよ」

 

翌日、昼すぎのこと、これも会社の外でだ。

Bさんがニコニコしながら寄ってくる。

「その傷、どうしたの?」

待ってましたとばかりに相好を崩してわたし

「柚子のね・・・」

と言いかけたのをさえぎって彼

「誰も訊いてくれんのやろ?」

「なんで知っちゅうが?」

「Aさんがね」

「あ、やっぱり」

「だ~れもきいてくれんってアンタが嘆きよったって」

「そうそう。で、彼女、傷の理由をなんて言うた」

「言わん」

「え?」

「言わん」

「なんにも?」

「言わん」

 

ということで、4日目となってもなお「訳あり」のまま、傷はわたしの顔に鎮座ましましている。

繰り返すが、柚子の剪定作業でできた傷、である。

 

 

 

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