三大幸福論(古い順から、ヒルティ[1]~[3]・アラン[4]・ラッセル[5])の内、自分の好みはラッセル幸福論だけど、最も勉強になったのはヒルティ幸福論だった。この幸福論は宗教的と聞いていたが、思い切って読んでみると、宗教の本来の姿は個人の自由意志と調和するという新しい発見を得た。以前は、宗教は人々を惹きつけて共同体を形作るための権威だと捉えていたが、その考えはニュースの新宗教批判のイメージに引きずられたものでしかなかった。
ヒルティ幸福論を無理矢理に一文で纏めると、人間は超感覚的なもの(⇒神)を信じてその御心に従うことで、享楽的な生き方を脱して、真の幸福を得るための挑戦を続けることができる…というものだ。簡単に言えば、信仰は主体的な個人に勇気を与えてくれる訳だ。この説明は、簡素ながらも力強い印象を受ける。
ただし、超感覚的なものを基礎に据えてそこから論を展開するやり方は、私のような素人には強力過ぎて怪我をするだけだろう。普通の人は物事の説明を先に作って、それに都合の良い神さまを無意識に据える。これは、ヒルティとは逆のやり方だ。なので、論の進め方はラッセルの方を手本にしたい。
さて、前回のブログでは、角落ち下手を課題の一つに挙げましたので、今回はその研究をします。一例として上手側が速攻を仕掛ける場合を考えます。
文献[6]によれば、下手は序盤は左辺を固めて上手の仕掛けを封じるのが方針の一つとされ、私もこれを採用します。上図では上部を早く固めるべく、▲5八金右としています。一方で、▲7八金は角落ちでは後で良いです。
ケース①:上手が単純棒銀を仕掛けてきたら?⇒枚数の受けが間に合う(下図)
ケース⓶:上手が右銀で角頭の歩(7六)をかすめ取ろうとしたら?⇒△6五銀より先に、▲6六歩が間に合う(下図)。
ケース③:上手が早繰り銀を仕掛けてきたら?⇒△7五歩に対して、▲同歩、△同銀、▲6五歩として、次に▲5五角で飛車のコビンを攻める。
ケース④:上手が右銀と袖飛車で攻めてきたら?⇒△7五歩に対して、▲4六角、△7六歩、▲6五歩、△7三銀、▲7八飛として、7筋を逆襲する。
とりあえずは、こんなところでしょうか。
【参考文献】
[1] ヒルティ著、草間平作訳、「幸福論」第一部(改訳版)、岩波文庫、1961年
[2] ヒルティ著、草間平作・大和邦太郎訳、「幸福論」第二部、1962年
[3] 同、第三部、1965年
[4] 神谷幹夫訳、「アラン幸福論」、岩波文庫、1998年
[5] 安藤貞雄訳、「ラッセル幸福論」、岩波文庫、1991年
[6] 所司和晴、「新装版 駒落ち定跡」、日本将棋連盟、2023年
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