八月の簾の外の影法師 鞠
一筋の水涼風の奥へ奥へ
敗戦日五才の姉におぶわれて パピ
家採れの極小ゴーヤチャンプルー
熱の夜天の河から船を出し 裕
しらたまを井戸で仕立てて天の川
嵐前ゆらりゆらりと芋の茎 洋子
夏惜しむショートカットにして下さい
にわかなる稲妻ありて豪雨つれて イヨ
コロナ禍のマスクの辛さ秋はじめ
クレーンがのろのろ掴む炎暑かな 薪
夏雲や運慶仏の力瘤
新涼やこの風今日の贈り物 凛
今朝の空ひとりじめして蝉絶唱
桃冷す産毛に宿る虹の泡 海人
ちっぽけな地球見下ろす銀河かな
あれやこれ時効にしよう生ビール さくら
現し世にゆっくり戻る午睡覚め
妻の留守蜩鳴きて飯を炊く 豊春
竹樷の奥にカンナの浄土あり
径あれば只真直ぐに秋日傘 沙会
酔ふてみる芙蓉に負けぬ紅の頬
送り火に映える面影母に似て 貴美
天の川最後に見たのはいつの日か
境内に指ほどの穴蝉しぐれ 炎火
ガラケイの歩数は三十猛暑かな
炎天や救急セットの赤チン 歩智
エアコンのきいてる部屋に鬼やんま
恐ろしや蝉飛ぶ姿母心 余白
猛暑日に幼児明るく水遊び
ことさらに祈りに近き花火かな 稱子
蟷螂の斧高々と青山河
きりぎりす男が歌う女唄 雲水
寝転んで大銀漢の尾を掴む