初燕は三月頃南から渡ってくる。歳時記には「今年初めて見る燕のこと」とあるが、私の感じではもう少し後の季節感である。今年、まだ私は見ていない。青葉の美しい頃、颯爽と飛ぶ燕を見ると元気を貰える。今日一日、楽しくすごそうと思う。
この句、作者は毎朝きちんと髭をあたる紳士と思われる、明るい窓を背に鏡に向かって、真剣に髭を剃る。女が化粧をする時と同じだ。その鏡に一瞬、黒い直線が横切った。「初燕」だ。もうそんな季節なのだ、と思う。こんな句の説明など必要ない、パッチリと写真で切り取ったように視覚的でわかりやすい句だ。見事だと思ったのは、剃刀と燕に共通する鋭さと、朝の空気の爽やかな冷たさが共鳴しあっているところだ。(薪)
ヤマツツジ((山躑躅)