春の桜花は人々を明るくし、楽しませ希望を抱かせるが、その時期は短く儚い。葉桜になると、多くの人は桜の存在に気を配ることはない。そして、秋となり初冬を迎えると、桜葉は赤黄色に染まり、周囲の広葉樹の葉色を圧倒する。
そして、軽やかに舞い落ちるさまを夕べに見ると、幽玄であり神々しくもある。このような人生の終末を迎えることができることを願っています。
2014年、俳号を「空白」から「余白」に改名いたしました。
草木の芽いでよ萌えでよ時が来た
楽し気に桜見下ろす阿波踊り
桜とは咲いて愛でられ散りて良し
散りサクラ握り固めて死の重さ
何時もここ傾斜陽だまり蕗の薹
ブランコが春の嵐を乗せている
公園に箒目付けて涼を呼ぶ
みどり葉に守られ紛れ実は育つ
舗装道ひび割れ溝に草生きる
ザクロ花落ちて路上にウィンナ蛸
セミが飛ぶ安定悪く不安呼ぶ
セミ出でて異次元世界どう生きる
枯れ葉らの焼却処理は理に合わず
名月が黒い車の屋根に映え
枯れ葉らは風に乗って飛ぶ遠くまで
掻き集む枯れ葉の山や万華鏡
枯れ葉食う熊手木の根でヒャックリす
カマキリが秋の陽だまり黄泉の口
良寛が貰ってくれるかこの落ち葉
学童や半袖ズボン寒椿
孫が行く日陰の雪を蹴飛ばして
うら寂し枇杷の花にもメジロ来る
冬ばれに洗濯干せる笑顔かな
冬散歩帽子にマスク眼鏡かけ
見つけてね此処にいるよと霜柱
(岩戸句会第五句集「何」より 片岡余白)
テンナンショウ