腹心結集のトランプ人事、個人的報復に向け「忠誠心」重視で一本釣り…歯止め利かなくなる恐れも
腹心結集のトランプ人事、個人的報復に向け「忠誠心」重視で一本釣り…歯止め利かなくなる恐れも
腹心結集のトランプ人事、個人的報復に向け「忠誠心」重視で一本釣り…歯止め利かなくなる恐れも
© 読売新聞
腹心結集のトランプ人事、個人的報復に向け「忠誠心」重視で一本釣り…歯止め利かなくなる恐れも
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【ワシントン=池田慶太】来年1月に発足する米国のトランプ次期政権の主要な閣僚候補が固まった。トランプ氏は自らの腹心を集め、巨大な連邦政府の掌握と個人的な報復に備えている。
異例スピード
「米国民は、約束を実現して『米国第一』に取り組むよう、私たちに権限を与えてくれたのだ」
トランプ次期大統領は26日の声明で、新政権に向けた決意を語った。主要閣僚ポストは大統領選の投票日からわずか約3週間で固まった。歴代の次期大統領は1か月以上かけて熟考するのが通例で、異例のスピードだ。
トランプ氏の人選は前回と大きく異なる。1次政権では国防長官に元米中央軍司令官のジェームズ・マティス氏を起用するなど面識がなくても伝統的な保守派を閣内に迎えた。政権運営に自信がなかったためとされるが、確執を生み、閣僚の交代が相次いだ。こうした教訓を踏まえ、今回は個人的に親しく、自身に忠誠を尽くす人物だけを一本釣りしている。
国家安全保障担当大統領補佐官に就くマイク・ウォルツ氏、国務長官に起用されるマルコ・ルビオ氏は、フロリダ州選出の連邦議会議員という共通点がある。同州にはトランプ氏が拠点とする邸宅「マール・ア・ラーゴ」があり、トランプ氏と頻繁に顔を合わせ、気脈を通じていることが人選に影響した模様だ。
国防長官に指名されたピート・ヘグセス氏は、保守系FOXニュースの司会者でトランプ氏は番組出演を通じて親交を深めた。トランプ氏の退任後に設立された政策研究機関「米国第一政策研究所」の関係者も多い。同研究所は第1次政権の元幹部らが所属し、復権に向けて政策を練り上げてきた。
第1次政権で大統領首席補佐官を務めたラインス・プリーバス氏はABCテレビの番組で、トランプ氏が退任後の4年間、誰なら命令を忠実に実行するか「厳しい審査」を行ってきたと明かした。忠誠心を評価され選ばれた閣僚候補らは体を張ってトランプ氏を守るとみられ、選挙キャッチフレーズの「米国を再び偉大に」(略称MAGA)になぞらえ、「MAGAドリームチーム」とも呼ばれる。
官僚機構不信
トランプ氏は、命令に従わないキャリア官僚を一掃し、政権が任命できる仕組みを検討している。省庁の上級職にも信頼を置ける人物を送り込み、官僚機構を抑え込む構えを見せる。
背景にあるのは連邦政府機関に対する不信感だ。第1次政権でトランプ氏が 弾劾(だんがい) 訴追された際、一部の官僚が訴追に協力して機密情報を外部にリークしたことに対し、トランプ氏は強い恨みを持つとされる。官僚機構の「背信」で自身が起訴に追い込まれたとの思い込みもあるようだ。
このため、トランプ氏は個人的な報復に向け、司法長官の人選を特に重視する。司法長官候補のパム・ボンディ氏は、トランプ氏を起訴した検察官や連邦捜査局(FBI)捜査官らを「ディープステート(闇の政府)」の一員と呼び、捜査・起訴すると公言する強硬派だ。トランプ氏は司法省の掌握に向け、ナンバー2の副長官にも自身の刑事裁判の担当弁護士を送り込む方針だ。
第1次政権ではペンス副大統領ら穏健派がトランプ氏の暴走を食い止める「ガードレール」役を果たしたが、次期政権では不在だ。歯止めが利かなくなる事態も予想される。一部の閣僚候補は適格性が問題視されており、上院で人事が承認されるかは不透明な面もある。
政権移行に署名
【ワシントン=阿部真司】米国のトランプ次期大統領の政権移行チームは26日、バイデン政権のホワイトハウスと政権移行に関する文書に署名したと発表した。来年1月の新政権発足に向け、政権移行準備が本格化する。
署名により、各省庁が機密情報などを新政権のメンバーに引き継げるようになる。ただ、トランプ氏側は閣僚候補らに対する連邦捜査局(FBI)による身辺調査を認める合意を拒んでおり、引き継がれる情報が制限される可能性がある。
トランプ関税に報復示唆…メキシコ・カナダ両国
【ロサンゼルス=後藤香代】米国のトランプ次期大統領が不法移民の流入などを理由にメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課すと表明したことを受け、両国は報復関税の可能性を示唆している。
メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は26日の記者会見で、対話に向けトランプ氏に書簡を送る意向を示す一方、「関税がひとたび課されると、報復関税が課される」と警告した。トランプ氏との対等な関係も強調した。
第1次政権時の2019年に関税発動をちらつかせたトランプ氏に対し、メキシコ側は不法移民対策を強化するなど関係構築に努めて関税の発動を回避したが、10月に就任したシェインバウム氏に「トランプ氏をなだめる意思はあまりないようだ」(AP通信)との見方が出ている。
カナダのトルドー首相は26日、前夜にトランプ氏と電話会談したとして「建設的な方法で前進していく」と述べた。一方、クリスティア・フリーランド副首相兼財務相は限定的な報復関税の可能性に言及した。