中小企業に歓迎されると思った…大企業部長が早期退職後、転職市場で秒殺される3つのワケ「失業期間2年、年収1500万→500万」(みんかぶマガジン) -
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中小企業に歓迎されると思った…大企業部長が早期退職後、転職市場で秒殺される3つのワケ「失業期間2年、年収1500万→500万」
2/27(月) 9:10配信
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近年、中高年の転職希望者が増加している。年金支給開始年齢も徐々に引き上げられる中、産業構造の転換やコロナ禍での早期退職、役職定年などによって、新天地を求めたいと希望する人々が増えているからだ。だが、安易な気持ちで臨むと大変な目に遭う。人事ジャーナリスト・溝上憲文氏が、中高年転職の現実を伝える。
中高年転職希望者の3割が50歳以上に
近年、中高年の転職希望者が増加していると言われている。実際にエン・ジャパンの調査(『ミドルの転職』)による50~54歳の新規登録者数は、2020年は35歳以上の登録者のうち8.4%だったが、21年は12.5%、22年は19.8%と大きく増加している。55~59歳も21年の6.4%から8.5%と微増。50歳以上が全体の3割近くを占めている。 50歳過ぎといえば、定年までの逃げ切り世代と言われるが、なぜその年齢で転職を希望するのか。エン・ジャパンの広報担当者によると「これまで培った経験やスキルを活かしたい人、将来のキャリアを考えて専門性を磨きたいという人もいる。あるいは役職定年を契機に転職を希望する人もいる」と語る。 今後のキャリア構築に積極的な人もいれば、役職定年を迎えた大企業の社員で、将来を見切って中小企業への転職を希望するという人もいる。一方、希望退職者募集に応募し、早期退職した人が近年増えていると語るのは人材コンサルティング会社の社長だ。 「この5~10年で多いのは、重厚長大系の製造業や金融機関などを早期退職した人たちだ。あるいは倒産やM&Aによる事業再編のあおりを受けて人員削減の対象になった人。工業化社会からサービス化、インターネット化と、産業構造の変化の中で、培った経験やスキルの需要がどんどん減り、リストラという形で外部に排出される人が増えている」
確かにリーマン・ショック以降、早期退職者募集は増加し、コロナ禍の2020~21年に3万4000人がリストラされている。それ以外にも会社が常備している「早期退職者優遇制度」に応募して退職する人も多い。また、人手不足の影響で中高年の求人が増加しているのも確かだ。
年齢問わず年収アップは、ほんのひと握りの特殊技能を持った人材だけ
しかし、早期退職し、再就職できても年収が下がるのが一般的だ。エン・ジャパンが転職コンサルタントに聞いた「転職後の年収」調査(2023年1月30日)によると、転職後の年収は40代後半(45~49歳)では、上がる人が44%、下がる人は25%。50代前半(50~54歳)になると逆転し、下がる人が54%、上がる人は12%にすぎない。50代後半(55歳~)になると、上がる人はわずか2%と極端に少なくなる。
下がる人のケースで多いのは「大手企業から中小企業への転職」
(47%)、続いて「役職が下がる転職」(47%)、「ベース給与が下がる異業種への転職」(46%)となっている。例えば、大企業で年収1000万円をもらっていた人が、中小企業に転じて同じ年収をもらえるケースはほとんどないだろう。もちろん、中小企業でも難度の高いスキルの持ち主であれば、急成長のベンチャー企業でも高い報酬が得られるかもしれない。
前出の人材コンサルティング会社の社長は「もちろん年齢に関係のない無敵の職種もある。例えばAIなどデジタル系、半導体関連のエンジニア、文系では海外法務や経営企画の経験者は引っ張りだこだが、そういう人は少ない。こうした一部の特殊な職種を除くと、求職者で最も多いのが営業職や事務系の経験者。しかも供給量に対して求人需要が少ないのが現実」と語る。
中高年の求職者の大多数を占める営業・事務職は転職しても実際に年収が上がるケースは少ない。前出のエン・ジャパンの調査でも「営業・マーケティング系」で年収が上がる人は34%、下がる人は33%。「事務・管理系」に至っては年収が上がる人は20%、下がる人は44%もいる。年齢と職種のカベが年収減の大きな要因になっていることがわかる。
前職年収1500万円から1000万円、500万円と希望を下げても見つからず、最後は時給1000円の警備員に
年収が多少下がっても転職できる人は、まだ良いほうかもしれない。大企業出身者でも再就職先を見つけるのは容易ではない。
「年収1500万円をもらっていた元部長が1000万円でもよいからと探し始めたが、なかなか見つからず、失業期間が1年、2年と延びるケースも珍しくない。また、100社、200社受けても落ちる人もおり、最後は年収500万円でもよいからと希望条件を下げていく。最後はどこも決まらず、時給1000円の駐車場の警備で働いている人もいる」(前出の人材コンサル社長)
最初に希望する年収が高ければ、そもそも求人が少ない。そこで妥協しながら探しても、なかなか決まらず失業期間が延びてしまう。ブランクが長くなればなるほどさらに決まらなくなるという悪循環に陥る。
「再就職活動初期の頃に1000万円を切るオファーをもらっても断り、1年後に『あのときに受けていればよかった』と後悔し、どんどん気持ちが落ち込んでいく。どこも決まらず、中央線に飛び込みたくなる心境になった人も見てきた」(前出・社長)
悲惨な話であるが、その原因は本人の自分の実力に対する過信がある。仮に前職で年収1000万円をもらい、それだけの市場価値があるのであれば、現役時代にヘッドハンターに声をかけられてもおかしくない。あるいは転職サイトに登録すれば、今の年収に見合うオファーがあるかもしれない。それがないのに前職の年収を基準に再就職を探すのは甘いと言わざるを得ない。
再就職先がなかなか決まらないのは、自分の年収基準や職種だけではない。再就職がうまくいかない早期退職者に共通する要因は、以下の3つだ。
在籍中の求人動向等のリサーチや準備が遅い 退職後、再就職活動までにブランクがある 過去の実績を強調するだけで、雇う側の視点に立っていない
そもそも在籍中に、自分の職務経歴に対してどんな求人があるのか調べもしないで活動を始める人が多い。少なくとも40代に入ったら、転職サイトなどに登録し、今の職務にどのくらいの値段がつくのか把握しておく必要がある。
また求人企業が求めるスペックが足りなければ、必要なスキルを身につけるようにする。そうして年齢に応じた求人の傾向の変化を知り、タイミングを見定めて退職することだ。それをしないで「55歳になってゼロから始めるのは絶対的に遅い」(前出・社長)。
本人は「充電期間」のつもりでも実は「放電期間」…再就職活動は早く始めるのがベスト
早期退職し、退職割増金をもらったタイプに多いのが 2. のパターンだ。これまで早期退職者を取材し、よく聞いたのが「しばらくゆっくりして将来を考えたい」という声だった。
しかし多くのヘッドハンターは「退職後、早く再就職活動を始めるのがベスト。本人は充電期間と言うが、3カ月を過ぎたら放電状態になり、再就職に向けた意欲や気力が急激に低下する」と言っていた。もちろんブランクが長いと、求人企業に足下を見られ、市場価値がどんどん下がっていく。
最悪なのが 3. のパターンだ。多くの人は面接で、前職でこんな仕事をしてきたという経験や実績を語り、自分が会社で不可欠な存在だったことを強調するが、それでは相手の企業に全然響かないという。
「雇う側からすれば、その人に投資する以上、その分以上の回収ができるかを見定めようとしている。過去の実績などは職務経歴書を見て、少し話を聞けばわかる。それよりも、我が社に入って具体的にどんな貢献をしてくれるのかという話を聞きたい。例えば、会社の経営状況を分析し、どんな課題があるかを示し『私の経験とスキルを活用すれば、ここをこういうふうに改善できます』といった提案を含めた話を最も期待している。過去の自慢話を並べられても、そんなことはうちとは関係ないと一発でアウトだ」(前出・社長)
つまり、何をしてきたかではなく、その会社に入って何ができるかが問われる。この当たり前のことを言えない人が多い。とくに中小企業に入る場合、中高年は経営者の右腕としての活躍が期待されている。