シノギを失った裏社会の住人たちの“暴徒化”に気をつけろ
コロナ旋風が多くの業種に大打撃を与えているが、それは“裏社会”で生きる人々にとっても、決して無縁ではない。違法なドラッグやギャンブル、特殊詐欺(オレオレ詐欺、振り込め詐欺など)に関わっている彼らの現状はどうなっているのか。『半グレ』(彩図社)著者で裏社会に詳しい作家の草下シンヤ氏に話を聞いた。 ・・・・・
5/27/2020
マスク回収騒ぎの裏で
日本政府から配布された布マスクは回収騒動が起き、社会に混乱をもたらしている一方で、実は裏社会ではそれほどマスクに困っていなかったという。 「1万個買うのであれば、中国産は1枚40円、タイ産は75円ほどで出回っています。仲間内で出回るので、ヤクザの間では値段を釣り上げるような転売はあまりないようです」(草下氏、以下同)
なぜ彼らはマスクが手に入るのか。草下氏は次のようにツイートしている。 「裏社会の人間は縦横のつながりが強く、全国にネットワークを持っている。また、病院などの医療関係施設に食い込んでいる組織もあり、マスクの調達は比較的容易。私のところにも『マスク必要だったらあげるよ』と連絡があるが、もっと必要な人がいると思い、お断りしている」
それでは一体、どうやって病院に食い込めるのか。 「たとえば美人局。キャバクラ等で女を介して弱みを握ることができれば、ルートが作れますよね。あとは、接骨院などで横行していましたが、保険証を使った医療費の不正受給などで一緒に悪さをして、結託するケースもあるでしょう」 ほかには、中国系とのつながりからマスクを調達する業者もあるそうだ。
追い詰められた裏稼業は危険
裏社会の人々は焼肉店や居酒屋などの飲食店、キャバクラ、風俗のほか、建設、運送、アパレル等々、あらゆる業種に根を張っていて、コロナで大打撃を受けているケースも決して少なくない。 「『タタキに気を付けろ』とあちこちで言われています。強盗を意味する隠語です。これまでタタキの対象はオレオレ詐欺やマネーロンダリングなどで荒稼ぎをした“同業者”を狙うのが一般的だったんですが、食い詰めて手持ちの現金がなくなってくると、資産家の老人など、一般人に手を出す連中も出てくるだろうと言われています」
強盗は一発で実刑判決を受けるケースが多いため、数千万単位のカネを狙うのが一般的だった。 「今、裏社会の経済は完全に死んでいます。『ここまでカネがなくなると、数百万の端金で無茶なタタキをするヤツも出てくる。気を付けろ』と言われています。バイクを使ったひったくりなど、荒っぽい犯罪も増えるかもしれません」
給付金、貸し付けを狙った詐欺行為も増える
詐欺行為も増えると見たほうがよさそうだ。 「『おばあちゃん、コロナ大丈夫?』というフレーズが、オレオレ詐欺の入り口の口実に使われています。また、難解な制度の裏を付いた詐欺も動き始めています」
30万円給付の議論が持ち上がった際、極めて厳しい条件や複雑な仕組みに理解不能となった人は多い。そこに詐欺師の付け入るスキが生まれるというのだ。 「給付金の申請代行を持ちかけて、手付金を何十万円か受け取ってドロンするパターンと、実際に申請して高額な手数料を搾り取るパターンに分かれます。あとは、個人に対して一人いくらと給付される場合は、一気に人集めを始めるでしょう」
これまでも“貧困ビジネス”と呼ばれる生活保護制度を悪用したケースが存在し、生活苦に陥ったホームレスや障害者らをマンションに集めて行政からの補助金を搾取する事例などがあった。 「リーマンショックや東日本大震災での補償など、行政が大規模給付を行うと、必ず詐欺が横行します。東京電力の賠償金も、2~3割は詐欺師に流れたと言われています。貧困ビジネスを仕切っている人々の間では『これから忙しくなるぞ』という声が聞こえています」 こうした詐欺にひっかからないためには、立ち止まって判断することが重要だ。 「慌てずに一度ネットで検索して、家族にも相談してください。ネット検索する際は、ツイッターなどの検索結果が見られるリアルタイム検索も有効です」 衛生管理だけでなく、あらゆる面での自己防衛が必要になりそうだ。