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「存在意義が皆目わからない」石破政権の“多すぎる担当大臣”は兼務する分野がカオス状態 大前研一氏が看破する“機能不全”の正体

2024-12-02 | アイヌ民族関連

マネーポストWEB 2024/12/01

石破内閣で新設された「新しい地方経済・生活環境創生」担当相の伊東良孝「地方創生」担当相(右)。そのほかに「沖縄及び北方対策」「消費者及び食品安全」「アイヌ施策」「国際博覧会」担当も兼務している(時事通信フォト)

 政権浮揚にもつながりやすい海外での華やかな首脳外交。しかし、石破茂首相は、各国首脳が会場内で活発に交流する中で、 “社交下手”な一面も露呈している。一方で内政面でも、朝令暮改や手のひら返しを繰り返し、早くも“機能不全”に陥っているとの指摘もある。経営コンサルタントの大前研一氏によれば、その象徴は新しい看板を次々に掲げ、屋上屋を架すだけの“ダメ組織”にあるという。最新刊を上梓した大前氏が解説する。

 なぜ日本政府は、目の前の現実に対して、有効な政策を打てないのか。個々の政治家の資質に帰するのは簡単だが、今の政治制度や組織そのものが旧態依然のままで、全く新しい時代の要請に応えられていないことこそ深刻な問題だろう。

 今の政府がいかに“機能不全”を起こしているかは、閣僚を見ればよくわかる。

 2024年10月に発足した石破茂内閣は、戦後最短の就任8日後に衆議院を解散して総選挙に打って出たが、新閣僚の平均年齢は63.6歳と高く、若手ゼロ、女性はたった2人で、やる気も新鮮味も感じられず、「納得」も「共感」もできない内閣となった(第2次石破内閣では落選議員らに代わって40代を2人起用)。

 その中心にいる石破首相自身、自民党総裁選挙の時に「国民が判断する材料を提供するのは新しい首相の責任だ」として早期解散に否定的な考えを示していたにもかかわらず、いざ首相に就任すると、その主張を手のひら返しする始末である。裏金議員の追及や金融正常化の旗も早々に降ろして、“朝令暮改総理”“首相豹変”などと揶揄されている。こんな体たらくの石破政権が続く限り、政府の“機能不全”が続くことだけは間違いない。

 こうした事態は、今に始まったことではない。たとえば、2022年8月の第2次岸田文雄改造内閣では、新たな経済政策の目玉となる2つの担当大臣が鳴り物入りで新設された。スタートアップ担当大臣とGX(グリーントランスフォーメーション)実行推進担当大臣がそれだが、これはどちらも笑止千万の“担当”大臣であり、そもそも「大臣とは何か」という原点が問われるべき人事だと思う。

「看板」が多すぎて「屋上屋」

 そもそも、この手の「担当大臣」の存在意義自体が私には皆目わからない。  総理大臣を除く国務大臣の数は、内閣法で「定員14人・上限17人」と定められている(特別法によって増員が可能)。この人数の中で内閣府に「特命担当大臣」、内閣官房に「担当大臣」が置かれ、各国務大臣が兼務している。

 内閣府の「特命担当大臣」は、複数の省庁にまたがる長期的な重要課題に対応し、「防災」「沖縄及び北方対策」「金融」「消費者及び食品安全」「少子化対策」の5つは必置で、他に「原子力損害賠償」「廃炉等支援機構」「原子力防災」「規制改革」「海洋政策」「こども政策」「若者活躍」「男女共同参画」「共生・共助」「経済財政政策」「クールジャパン戦略」「知的財産戦略」「科学技術政策」「宇宙政策」「地方創生」「アイヌ施策」などが置かれている。

内閣官房の「担当大臣」は、緊急対応すべき政策ごとに首相の判断で任命できる。石破内閣で設置されているのは「デフレ脱却」「経済再生」「新しい資本主義」「賃金向上」「スタートアップ」「原子力経済被害」「福島原発事故再生総括」「GX実行推進」「産業競争力」「経済安全保障」「サイバー安全保障」「新しい地方経済・生活環境創生」「国際博覧会」「国際園芸博覧会」「水循環政策」「国土強靭化」「防災庁設置準備」「領土問題」「沖縄基地負担軽減」「拉致問題」「行政改革」「国家公務員制度」「女性活躍」「共生社会」「全世代型社会保障改革」「感染症危機管理」などである。

 この多すぎる看板を各大臣に割り振っているから、担当大臣の所管範囲が不分明になっている。たとえば、財務大臣は金融(特命担当)とデフレ脱却担当を、経産大臣は産業競争力担当を、デジタル大臣はサイバー安全保障担当を兼務しているが、もとより各大臣はそれらの業務も所管しているはずであり、屋上屋を架している。

日本政府は“ダメ組織”の典型

 その一方で、経済再生担当大臣が感染症危機管理担当や全世代型社会保障改革担当を、国家公安委員長が国土強靭化担当や領土問題担当を兼務しているのは、開いた口がふさがらない。感染症対策や社会保障改革は厚生労働大臣、国土強靭化は国土交通大臣、(外国と係争中の)領土問題は当然、外務大臣が担当すべきである。

 とにかく担当大臣は兼務する分野がカオス状態で、何が何だかさっぱりわからない。

 なぜ、こんなことになっているのか? 役所が本来やるべき仕事をしていないからである。首相は「こういう政策で新しい看板を立てたい」と思ったら、その分野を所管している役所と協議し、弱い部分があればそこを重点的に強化すればよいのである。役所の側も、足りないところは担当課長を置くなりして強化するので自分たちにやらせてほしい、と言うべきである。それをしていないから担当大臣が濫造されているのだ。

 私は、企業経営に関して「優れた経営者は1つのことだけを言う」「ダメ経営者は次から次へと新しい命令を出して結局、何もできない」と指摘してきた。“ダメ経営者”の下では、いくら部署を新設しても企業は成長しないばかりか、従来の部署で働いていた社員がスポイルされてやる気をなくしてしまうのだ。すなわち、今の政府は“ダメ組織”の典型なのである。

(大前研一・著『新版 第4の波』より一部抜粋して再構成)

【プロフィール】

大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。新刊『新版 第4の波 AI・スマホ革命の本質』(小学館新書)など著書多数。

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