夢と現実のおとぼけバラエティー

実際に夢で見た内容を載せています。それと落語や漫才・コント・川柳・コラムなどで世相を風刺したりしています。

創作落語『愛人詐欺』

2019-10-16 13:02:13 | 夢と現実のおとぼけバラエティー
        

  テン・テン・ツク・ポン・テケ・シャン・テン・トコ・テン・テケ・ツク・ポコ・チン


               『愛人詐欺』


          ようこそのお運びでございます。
        え〜、秋もだんだんと深まって参りまして、
    紅葉前線は、日光の中禅寺湖あたりまで下がって来ていますそうで。
      え〜、いまア、世の中あ、グローバル化されましたそうで、
       おかげで、何でも金金金の世の中になって参りまして、
        人心の荒廃はなはだしく、パパンパンパン!
         天下は、麻のごとく乱れ、パンパパン!
     商売繁昌してるのは、詐欺師だけ・・・なんて世の中でございます。
        近頃では、詐欺の種類もたいそう増えましたそうで、
      いちいち紹介してたら、高座の時間が終わってしまいますので、
            省(はぶ)かせていただきますが、
          愛人詐欺なんてのもありまして・・・。
           亭主が亡くなりますと通夜の晩に、
           大きなお腹をした女が現れまして、
         「お宅の亭主に孕(はら)まされました。
          ついては、慰謝料と産まれてくる子の養育費を・・」
      ・・てんで、お金を巻き上げようって魂胆ですな。
    亭主を信用してなかった女房は、これに、まんまと引っ掛かります・・。




通夜の客(1)  「へい、どうもこのたびは・・むにゃむにゃ・・」


通夜の客(2)  「どうも、とんだことで・・ごにょごにょ・・ 」


通夜の客(3)  「どうも、・・・・・・」



        ・・・なんてやってますところへ、
   お腹の大きな、ちょっと年増の色っぽい女があらわれまして、
     「お宅の旦那に孕(はら)まされました。
       ついては、慰謝料と産まれてくる子の養育費を・・」
        ・・と切り出しました。


     さて、人間死ぬと、魂は身体からスーッと抜け出しまして、
       天井あたりから下のようすを見ているんだそうですな。
    ・・で、新仏の亭主も、下のようすを見るともなく見てますと、
     いっこうに見覚えのない女でございます。



新仏の亭主  「はて? 見覚えのない女だなあ?? 
       やけにお腹が大きいが・・・??
       あっ、服の下に洗面器を入れてやがる!! 」


       身体から解放された魂といいますものは、
        何でもお見通しなんだそうでございます。
         ですから、葬式とか通夜のときは、
          「あのやろう、やっとくたばりやがったか・・」
       ・・なんて、めったなコトを心に思い描いてはいけません。
         新仏には、バレバレでございます。
          だから、疲れますよ、葬式は・・・。



新仏の亭主  「ことによったら? この女、詐欺師じゃないか・・・??
       ああ、女房のやつ、さもありなん・・なんて顔してやがる・・!!
       よっぽどおれのことを信用してなかったんだ。
       慰謝料と養育費は、いくらなんですか?
       ・・なんて聞いてやがる・・。
       こらっ、騙されたらあかんぞ!! 
       大きなお腹の正体は、洗面器じゃ。
       金づちで叩いてみろってんだ。間抜けっ!!」



    亭主は、じれったいけど、抜け殻の身体は棺桶の中にあるし、
  魂は空中に宙ぶらりんの状態ですから、どうすることもできません・・・。
    あたふたして、思わず・・



新仏の亭主   「間抜けーっ!!」


  ・・棺桶の中から大声がしたかとおもうと、蓋がバーンと開いて、
    新仏のゲンコツがにゅーっ・・。
     その場に居合わせた連中は、通夜の客も女詐欺師も、
      女房までもが、蜘蛛の子を散らすように、
       パーッと逃げてしまいます。

     独りとり残された亭主は、おもわずそこにあった酒を、
      手酌でちびりちびり・・・。
       通夜の料理をぱくぱく・・・。
    
    そこへ、そ〜〜〜っとようすを身に来た女房・・。


女房   「ちょいと、そこで飲み食いしてるのは、おまえさんかい??」


亭主   「べらぼーメ!! 
      てめえの亭主に、おまえさんかい? もねえだろう。
      なにかい、亭主に口きくのに、いちいち本人かどうか
      確認するのかい・・?」


女房   「そういうわけじゃないけどさ、
      あまりに突然のご帰還だったので・・」


亭主   「あれれ?? おれは一度死んだんだよなあ? 」


女房   「そうですよ。
       医者がちゃんと御臨終ですと言いましたもの・・」


亭主   「ちゃんと、そう言ったのか? 」


女房   「言いましたとも・・」


亭主   「そうか。 そいつあ、ヤブ医者だ」


女房   「ヤブでもなんでも生き返ったんですよ!!」


亭主   「そうか!! そりゃあ目出度え!! 
      それにしても、おめえはトンマだな」


女房   「何でトンマなのさ!!」


亭主   「さっきの女な、あれは詐欺師だ」


女房   「何で詐欺師なのよ!?」


亭主   「あの大きなお腹、あの中は洗面器だ」


女房   「洗面器!? 何で、そんなこと判るのよ?」


亭主   「魂になると、よく見える」


女房   「じゃあ、魂になると、大声張り上げたくなるのかい!?」


亭主   「おめえが、騙されているんで、慌てたんだ。
      とんでもねえ詐欺女だ」


女房   「だけどさあ、大声張り上げたおかげで生き返ったんじゃない!?」


亭主   「そういえば、そうだな」


女房   「すると、女詐欺師は、命の恩人・・だよね!?」


亭主   「そ、そ、そういうことになるかな・・」


女房   「考えてもみなよ。 女詐欺師が来たから、
       おまえさん、生き返ったんだよ」


亭主   「そう考えると、目出度てえな・・」


女房   「女詐欺師は、命の恩人だよ」






   ・・夫婦そろって、女詐欺師の逃げ去った方角に向かって、
      両手を合わせ、ありがたや−、ありがたや−・・・



        
          お後がよろしいようで・・・



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