ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

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ゾエティスの蹄病セミナーに異議あり!!

2022年02月08日 | 裸蹄管理

 今日、こんなセミナーがオンラインであったんです。主催はゾエティス。内容は、蹄病に対する削蹄のアプローチが主だった、と考えていいのかな?

 聴きつつ暗澹とする。ど汚い蹄を洗浄も消毒もせず、消毒もしない道具でいきなり削蹄して、手袋してるとは言え、既に汚染部位に触っちゃってる手で削蹄箇所をいじって、出血するほど過削しちゃった蹄を、しょーもない包帯のみで、ど汚い牛舎の床の上に戻すという。

 こんな一連の作業、医療の基本から完全に外れてるじゃないですか。

 そもそも、削蹄を治療と考えるべきではない。何のために削蹄するわけ?「病変部位を除去するため」というが、除去してどうするの?意味が分からん。

 これは、虫歯治療を考えれば分かる。というか、日本の歯科治療ね。完全に世界から一回り以上遅れているのが、日本の歯医者。虫歯があります。ドリルかなんかで虫歯を削ります。削った箇所に銀だのセラミックだのを埋め込みます。そうすっと、5年後くらいには、埋めた下の部位に虫歯が発生します。埋めた奴がそのせいでぐらぐらして取れちゃったりするもんだから、まーた同じことを繰り返します。そうこうしてると、歯がなくなっちゃうもんで、じゃあ、インプラントでもします?歯医者大儲けの図式がいっちょ上がり、というね。

 これ、虫歯を削る時点で、既にドリルが汚染されてるわけじゃない、だから、ほじった箇所って、既に道具経由で虫歯菌が埋め込まれてるんだよ。ちょこっとその後消毒するくらいで菌が死滅するはずなし。そもそも、消毒してましたっけ?虫歯ができて当然なのさ、埋めた下に。

 こんなの治療とは言えないでしょ。

 同じことを蹄病でやってるってわけだ。バカらしい。治るはずなし。

 もう一つは、原因にアプローチできてないじゃんかよ、って事。削蹄ってのは、いうなれば「対症療法」に過ぎない。「原因」にアプローチできなければ、蹄病は繰り返される、に決まってる。

 視聴しつつ、あーあと思い出したのは、「産褥熱」。19世紀頃、まーだ細菌も発見されてない頃、ヨーロッパの産科病院でお産すると、その後産褥熱にかかって亡くなる方がすごく多かった。イグナッツ・ゼンメルワイスという方がそれに気づいて、あれこれ検証した結果、「手を消毒してないからじゃないか」と気が付いた。で、医者共にさらし粉(次亜塩素酸カルシウム)で手洗いさせてみたら、産褥熱の発生が、劇的に減少した、という話。ゼンメルワイツ博士は「公衆衛生の父」と呼ばれてるんだ。

 ところが、当時、これが医者から猛反発を食ったんだ。奴らのくだらないプライドに引っかかったんでしょうか。そのせいで、特にドイツでは、何千人という女性がむざむざ死に至った。産褥熱を大問題と認識してなかった医者共のせいだ。

 今現在、大動物の医療現場で同じ事が起きている。大動物獣医は恥ずかしくないのか?阿部先生、どうお考えですか?一介の小動物獣医なんぞにこんなこと書かれて、腹立たないの?


症例報告についてー質問や疑問に回答4

2021年10月11日 | 裸蹄管理

3)の続き

あと、気になったことを一つ。最近、装蹄師さんが、バーナー等で蹄底全体をあぶって焼烙して蹄を殺菌する(?)手法があるようで、馬のオーナー様からも相談を受けたことがある。効果があるのか?
 これはやめた方がいいと思います。

 理由:蹄はケラチンが主成分のタンパク構造で、スルメイカに近いんじゃないかとされている(本当はどうなんでしょう?ただ、水分量等は近いかも。科学的に分析されたのではなく、経験上の話なのをお忘れなく)。スルメをあぶるとどうなるかというと、縮みます。で、組織構造も変性して壊れます。蹄の構造も同様に、あぶると破壊される。従って、元来の耐久性が喪われる可能性が高い。あと、爪組織を再生している細胞((特に蹄底にある細胞群ですね。もちろん生きてます)にダメージを与えかねない。余計なことはするもんじゃない、ということです。

4)蹄葉炎というけど、馬を診察した獣医の誤診なのでは?なんでレントゲンを撮らなかったのか?

 馬獣医師の誤診かどうかは、知らん。そんなのは馬の先生方のレベルの問題でしょ。飼い主のこっちには関係のない話。これ、最近始まった馬獣医師認定制度なるものにも響く可能性があるかもですが、じゃあ、誤診するような獣医師がうろうろしてて、なのにそういうのに頼らざるを得ない飼い主の絶望感をどう考えていらっしゃるんでしょうか?

 レントゲンもねえ、撮ったらがばっと金を取られる。で、じゃあ、具体的な「こうすれば改善するから、こうやって治療しましょう。治るから」という示唆を受けられます?どーせクラブの管理が悪い・削蹄が下手だからだ・栄養に問題あり、とか何とか文句言われて、具体的な治療の指示なんかなし。そうじゃなければ「毎日蹄を2時間薬浴しろ」みたいな、できっこない事を言う。「できない?飼主失格」とか言われるのがオチでしょうが。そんな暇のある飼主がどこにいるのよ。競馬界では治療代なんかはした金かもしれんけど、乗馬界では、馬の預託費をひねり出すのにゼイゼイ言ってる方が多い、働かにゃ、費用の捻出は無理っしょ。その上で連日乗馬クラブに行って治療?そんな事できるかっつの。

 できる&治る治療を提案して実行してもらうのが医療でしょ。

 こういう「飼主失格」とか言う獣医はクッソヤブ医者ですから要注意。

 他の症例報告を聞いてて感じたことだけども、馬の先生方は(昨今の小動物臨床でも強く感じていることなのだが)病気を診てはいるが、患者を診ていない。だから、治せないのよ。


症例報告について、質問や疑問に回答ー3

2021年10月10日 | 裸蹄管理

3)蹄鉄を使うと蹄病が起きない気がするのだが

 これは、蹄鉄が良い、という事じゃないんです。実際にはやっぱり蹄病は起きまくっているんだけど、起きる箇所が裸蹄の時とは異なる、ということ。

 この件については、特にサラについて考えなければならない。サラって、競馬馬時代にはアルミ冷鉄を付けられてる。「冷鉄」とはなにかというと、「鉄をカンカンに熱して蹄底にじゅっと当てて~」というのとは違って、ただ、出来合いのアルミをくっつけるだけ。この違いの理由はよく分からないのだが、多分、若くてじっとしててくれないサラに通常の蹄鉄を打つのが危険すぎる(人にも馬にも)のと、後は単純に馬の頭数が多すぎて、一々鉄を熱してなんてやってられない、のかも。鉄の蹄鉄はやっぱり重いから、競争能力に悪影響がある、もあるかも。

 で、だから、ここで水虫をうつされちゃうんですよね~~~~。道具越しに。

 乗馬に転用されたら、サラでも鉄を焼いて蹄にジュっとやる蹄鉄に変えられる。この理由もよく分からないんですがね。「そんなもんだから」なんでしょうかね。

 鉄を焼いて装蹄すると、しかし、蹄縁の水虫は一瞬殺滅されます。当たり前ですね。熱による殺菌が効くわけだ。けれど、残念ながら、蹄の奥に侵入した白癬菌は殺せないし、熱で焼絡されない蹄叉は白癬菌の巣窟になる。

 ので、蹄叉腐乱は蹄鉄を付けても起きる。で、蹄叉が消滅してしまう馬も多数。そうじゃなければ、蹄癌、とこういうこと。

 もう一つの問題は、釘。なぜに釘が緩んで落鉄が起きるのか?未消毒の釘が(釘は焼きませんから)白癬菌を運んでしまうから。

 つまり、釘でもって白癬菌を打ち込んでしまうから、釘周囲に白癬菌が広がる。カビは当然ながら同心円状に侵入してゆくから、釘周りの蹄壁がボロボロになって落鉄、となるわけ。決して、装蹄師の腕が悪いせいではありません。

 蹄鉄は蹄縁の状態の悪さを隠してしまうから、それも大問題だと思う。蹄鉄を打ち替える時、蹄縁が良い状態になっていることはほぼない、と思うんだけど、蹄内に侵入済みの白癬菌が食い荒らしているからで、更に細菌の2次感染が起きるし。そこへ無理してさらに蹄鉄を打つ、どんどん蹄の状態が悪くなる、けど、蹄鉄で一応体重を支えはできるから、問題が先送りになり続けちゃうんでしょうね。

 元来蹄鉄の目的は「護蹄」の筈なんだけど、全然できてないじゃないか、と思うのですよ。

 あと、今回のカンファレンスでも思ったんだけど、大動物の先生方は、動物の体をぞんざいに扱い過ぎなんじゃないでしょうかね。蹄の治療でも、生爪剥がすようなことやってさ。痛いなんてもんじゃないと思うのに。こういう鈍感さが馬獣医の大問題だと思うんですけどね。それって、多分やっぱり鉄を焼いて蹄にジュっとやっても大丈夫だしさあ、という誤解からなってると思うんですよ。だから釘打ったって大丈夫、の筈ないべや。自分の爪に釘打ってみりゃすぐ分かるだに。


症例報告について、質問や疑問に回答ー2

2021年10月03日 | 裸蹄管理

2)に対する回答の続き

蹄の場合、とにかく生え代わりに時間がかかります。というか、本来は不必要に伸び続けるものではない.。つまり、よく言われる「1か月に1㎝程度伸びます」が正しい、わけではない。

このように、蹄端から白癬菌が入り込むのに対抗するためにせっせこせっせこ無理に伸ばしてしまう。ので、蹄質は落ちる。無理ゲー生産させられるから。

 よく、こんな蹄動画があります。

 長期間ネグレクトされててこんなになって可哀そう、って文脈で取られることが多いんだけど、違う。よーく見てみると、切り取った場所も荒れてる箇所があるでしょ。ここが既に水虫。水虫に対抗するために伸ばしまくるしか方法がないってこと。野生動物はネグレクトの極みだけど、一頭たりともこんなにならない。蹄を使ってるから、じゃないんです。水虫に罹ってないから、だけ。

 ちなみに、こういうのはヒトでもあります。

 爪全体が水虫に罹患してますね。切っても切っても水虫爪で金太郎飴状態。

 こうなると、飲み薬で対抗する以外道なし。こんな感じでね。薬が浸透している場所が蹄端に届くまでは、冷や冷やするしかない。

 

  ちなみに蹄の変形でよく言われるロングトー。なぜ起きるかというと、蹄壁~白線が水虫の影響で強度が弱くなり、体重を支えきれなくなるので、蹄叉を使って支えようとする、その結果起こる。難しい話ではない。ロングトーは、自馬も以前そうなりがちでしたけど、その頃蹄叉はものすごく延びちゃって。装蹄師さんは、蹄叉が伸びるから、ロングトーになる、と説明してましたけど、逆です。

 だからねえ、蹄壁をヤスリで削るってのは絶対にやってはいけない。強度をわざわざ落としてるのと同じ。それどころか、水虫を蹄壁からもすり込んでしまう。

 結局、装蹄師さんも、馬の獣医もその時その時しか診てない、連続した診立てじゃないから分からないんでしょうね。