蹄病等々考えていると、どうしても管理全般に目が行ってしまうんですが。で、この動画、面白いです。牛の話だからカンケーない、と思わず、じっくり見てみてください。後半は特に面白いですね。
この動画にある「活性誘導水」についてはこれから検証してみる予定なんですが(自馬よスマン、しかし、君はいい実験馬。とにかく体調をはっきり伝えてくれるからこちらはやりやすいんだわ)、誘導水についてはともかく、サシバエ減少(というか消滅)や削蹄不要というのは実に面白い。理由も大体理解できたので、解説します。
そもそも、この酪農家さんが廃業を検討した理由って、重労働して経費もかけてるのに、全く牛の管理がままならないというところですよね。ツライ・・・・。それが活性誘導水なるものを使い始めたら深刻な牛の病気の一種である乳房炎がなくなってきた、サシバエがいなくなってきた、削蹄が不要になってきた、と。サシバエがいなくなってきた理由はおそらく2つ。「堆肥の高温化」と「糞便臭の消失」でしょう。この誘導水を牛に飲ませると、糞便の臭いがほぼ消滅するそうで、そうなると、ハエを引き寄せる大きなトリガーがなくなったことになる。もう一つ、この水を飲ませた牛の糞便からつくる堆肥って激寒の北海道の冬でも80℃をキープするそうで。お湯が沸かせるんじゃないでしょうか・・・?ここまで高温化すると、サシバエの幼虫は堆肥内で全く生きていけない。奴らの餌は糞便だから。それで、サシバエの繁殖循環が切れて、数が減少したってことじゃないでしょうか。
削蹄不要については。これねえ、削蹄しないから蹄病が発生しないのだ、という当方の主張に合ってますけども。それだけじゃなくて、例えば濃厚飼料を多給すると、体内で栄養が過多になる。従って爪も伸びやすくなるだろな、とも思うし。
それにしても、この話は、草食獣の体内から変えていけばいろんな問題が解決する糸口があるのでは、という論点で極めて面白いし理にかなっていると思うんです。
蹄病がなくなった、という理由については。そらやっぱり、削蹄なんぞするから白癬菌がうつって爪水虫=蹄病になるんだよ、と言いたくなるわけですけど、削蹄を繰り返しても特に何も起こりません(いや、結局数年たつと何らかの蹄病を発症する結果になるんだけどね)という動物については、その動物自身の抵抗力とか免疫力とかが絡んでくる。
水虫って、実は、相当数の人が既に皮膚に寄生されている可能性が日本では高いんです。銭湯の足ふきマットに白癬菌はうじゃうじゃいるそうで。でも、症状が発現するかしないかはその人の免疫だとか、衛生環境だとか、によって揺れ動く。同じ家に住んでても(で、同じ足ふきマットを使っててても)通気性0の革靴を一日中履いてるお父さんだけ水虫ってよくある話。また、例えば、癌治療等で免疫を落としてしまうと、水虫が発症しちゃった、って人は結構いるだろう。糖尿病患者が水虫を併発すると、下手すると断脚までいっちゃうのだが、細菌や真菌が増殖しやすい高血糖+抵抗力の低下がその誘因。
馬や牛も同じことで、たとえ白癬菌が巣食っていても、初期は無症状なんてざらにあると思う。そこがさらに話をややこしく(で、削蹄師が自分の仕事の内容について真剣に考えるきっかけを失っている)している所もありますね。
牛については、活性誘導水の販売を行ってる方に聞いたのだが、アメリカのフリーバーン(コンクリ床を打った広場に牛を数頭放し飼い)方式を導入したらいきなり牛の蹄病が増えた、と。これについては、確か国際蹄病学会かなんかで、床が固いからだ、とかなんとか理由をつけられてましたけど。違います。自馬の馬房の床は土だけど、蹄病だらけになったぞ(追加すると、自馬には濃厚飼料は一切給餌してません)。ただ、これは言える。確かにコンクリの床は堅い。水虫に罹患している蹄は強度が落ちているから、コンクリの床で簡単に削れてしまう。白癬菌付きの蹄のかけらが床中にまき散らされたところに、他の牛がそれを踏んづける。ほーら、これ、銭湯の「足ふきマット」状態と同じでしょ。いくらスクレーパーで除糞したって、その程度で白癬菌がいなくなるわけがない。だから広がってしまうのだ。常に白癬菌にさらされた状態なら、どんどんうつっちゃいますよ。簡単に説明が付くじゃありませんか。問題の見方を変えろ、と当方は言っているんです。
それにしても、蹄病って今や酪農業界でも大問題になっていて、国際蹄病学会 なんて学会まであるのだ。なのに、効果的な予防も治療も全然提案できていない情けなさよ・・・・。同業者批判になってしまうが、なにやってんです?
ところで今、YOUTUBEでどっかの馬の先生が蹄叉腐乱について解説してますが、ありゃ全くその辺の教科書をなぞってるだけで全然間違ってます。うのみにしないでください。