ずっと以前のブログで「女性指揮者が育たないのはなぜ」というテーマについて書いたことがあり、そのときに参考にさせてもらったのが女流ピアニストでエッセイストでもある「青柳いずみこ」さんの次の著作。
☆ 「ピアニストは指先で考える」(2007.6.5 中央公論新社刊)
この本の中に次のようなくだりがある。重複するが紹介させてもらおう。
『指揮者希望のある女性(ピアニスト)が知り合いの管楽器奏者に(指揮者になるための進路を)相談したところ、「ダメ、ダメ、あんたには胸に余計なものがついている、そんなものを”ゆさゆさ”させられた日にゃ男どもは気が散ってしょうがない、やめとき、やめとき」』という逸話。
女性指揮者の弱点(?)というか、どうしようもない性差についてまことに言い得て妙で思わず吹き出してしまったが、その後に「西本智美さんなどは宝塚の男っぽいカッコイイスーツに身を包み全然”ゆさゆさ”させていないように見えるが・・・」という著者のコメントがあった。
そのときに「フーン、女性指揮者が全然いないかと思っていたら「西本智美」(にしもとともみ)さんという人がいるんだなあ~」と何気なしに記憶の片隅に留めていたところ、つい先日、テレビ番組のチェックをしている中、ふとその名前が目にとまった。
期 日 2008年12月13日(土)午後10時~10時30分
チャンネル BSデジタル181「BSフジ」
番 組 名 「辰巳琢郎のワイン番組」指揮者の西本智美とワイントーク展開
都会と違って地方では「西本智美」さんなる指揮者を実際に拝見する機会はまずないといっていいし、少なくともごくごく限られている。どういう人かしらんと興味しんしんで早速番組予約。
そして、録画した番組を観たのが15日の月曜日。
「辰巳琢郎」も随分と”締まり”のない顔つきになったなあと思いながら(自分のことはさておいて!)見ていると「西本智美」さんが颯爽とテーブルを前にして立っておられた。「オッ、なかなか”いける”じゃん!しかし気が強くて冷たそう」というのが第一印象。
もっとも、指揮者というのはただ指揮棒を振ればいいというものではなくて楽団員への管理能力が問われる大変な仕事。
これも以前のブログに取り上げたが長いことNHK交響楽団の指揮者だった岩城宏之さん(1932~2006)の著作「いじめの風景」によると、音楽芸術の世界でさえも「指揮者=管理職」、「オーケストラ=部下」という構図が成り立ち「叱り方の難しさ」や「逆に楽団員からいじめられる指揮者の実例」などが紹介されていたが、やはり女性指揮者であっても「男勝りの部分」も必要とされるのは当然。
番組中の西本さんによると自分の性格を「思いっきりがいい、竹を割ったようなといいつつも、意外と中からモチが出てくるといったような”しつこさ”がある」との自己分析だがさもありなんと思う。
日本には年間わずか3ヶ月ほどしか居ないとの話だったが、古今東西、名を成した女性指揮者をまず見聞したことがないので今後の活躍が大いに興味あるところ。
なお、この際だから彼女についてネット情報を漁ってみた。
まず「ウィキペディア」から。
1971年生まれで大阪市出身。大阪音楽大学作曲科卒業。国立サンクトペテルブルク音楽院に留学。28歳のデビューから37歳までロシアを拠点に活躍。指揮台での美しい姿から公演チケットがバックアップステージ側から売れてゆくという。
阪急宝塚線で大学へ通っていた頃は宝塚音楽学校の生徒たちから上級生と間違われよく挨拶をされていた。
※たしかにあのルックスと身長167.5cmと女性にしては長身なので「男役」と間違われても仕方がないところ。
なお、スキャンダラスな記事もちらほら。個人のブログの記事なので真偽の程は確かめようがないが、2007年夏季の「週刊朝日」に「西本智美の虚飾」との見出しで記事が掲載されたという。(未確認)
中身は、同性に対する性的嫌がらせ、虚言、経歴詐称などだったそうだが、どうせ有名税のひとつだろうし個人的な問題がどうあろうと指揮者の本分は指揮棒を振って芸術の本質に迫ること。
一度西本さんが指揮する音楽を聴いて女性指揮者としてのセンスを探ってみたいもの。