つい先日、ネットに明治期の文豪「夏目漱石」の「ネガティブ名言10」という記事を見かけた。
「漱石文学」を一言で表現すれば「ネガティブ思考の塊り」といってもさほど間違いではないだろうし、今の世の中はコロナ禍に伴う世相不安に満ちているのでこういう記事が出てくる背景にも十分頷ける。
これら漱石のネガティブな名言の中で一番強く印象に残ったのがこれ。
「呑気と見える人々も、心の底を叩いてみると、どこか悲しい音がする」(「吾輩は猫である」から)
おそらく、幼い頃に養子に出されるなど恵まれない育ち方を余儀なくされた漱石自身からしてそうだったのだろう。
そうなんですよねえ・・・。
何となく身につまされて、人間って誰にでも弱点や触れられたくない傷があって、そういう悲しみを仕方なく引きずりながら生きていく動物かもしれないと思ったりした。
「幸福というものは、 身体のためには良いものである。 しかし、精神の力を向上させるのは、 幸福ではなく悲しみである。」(マルセル・プルースト)
芸術の役割とは悲しみと向き合ったり、癒すためにあると思っているが、先日のブログ「相互理解のための音楽」(2020.7.1)に記載したように「メルケル」首相(ドイツ)について、政治家にしては珍しく芸術への理解があるとして、大いに持ち上げていたところタイミングよく翌2日付の「日本経済新聞」に次のような記事が載っていた。
タイトルは「メルケル氏が導くコロナ後」。
記事のポイントは「メルケル政権の真髄はその文化政策にある。首相はドイツは文化の国だとし、芸術支援を優先順位リストの最上位に置いていると述べた。」とあり、続いて、コロナ禍の後に新たな世界標準に浮上するのはドイツ流の「社会的市場経済」とあって、たいへんな褒めようである。
メルケルさんはもともとは物理学者で理系女史の典型的な存在だが、芸術支援を優先順位リストの最上位に置くなんてとても素敵なことだと思う。
ドイツは周知のとおりバッハ、ベートーヴェン、モーツァルト(旧ドイツ領)など「クラシック御三家」と称される偉大な作曲家たちを輩出した国である。
さらには、これら先人たちの楽譜を汚すことがないように「ドイツ国家演奏家資格制度」を設け、演奏レベルの維持向上を目指して厳格な運営をしているほどだ。
きっと、国の舵取りをしていくうえで国民の誇りを大切にし、心を一つに束ねることに意を注いでいるに違いない。
さて、そのコロナ禍だが「IT大手に勤務し、東京に単身赴任中の知人」と久しぶりに連絡を取り合ったところ「週1回の出社だけで、あとはすべて自宅でテレワークというスタイルがすっかり定着しましたよ」とのこと。
「毎日が遊びみたいなものでずいぶん楽でしょう」と突っ込みを入れたところ「一軒家ならともかく狭いマンションの一室なので苦痛以外の何ものでもないですよ」との回答が返ってきた。
「それもそうですねえ・・。」
敷衍すると、どうやら昨今の東京のコロナの蔓延には住宅事情が絡んでいるとしか思えない。感染源は夜の街がほとんどだし、大半が若者だというからおそらく地方出身者の場合、狭い4畳半かそこらの一室を借りて住んでいるのだろう。
こんな狭いところに若者を閉じ込めて「じっとしていろ」なんて土台無茶な話なので、これを奇貨として都市の構造的な改革を進めてはどうだろう。
つまり、今回のコロナ禍は都市の一極集中の脆さ、人口の集積化に対する警告であり、第二、第三の疫病の到来に備えて抜本的な列島改造のチャンスである。ピンチはチャンス!
そこで、手始めに考えられるのが「大学の分散化」だ。
オンライン授業などこれだけ「IT化」が進めば何も大都会で教育を受ける必要はない。来たる「5G」「6G」の時代ならなおさらだろう。
したがって国立大学、私立大学を問わず地価が安くて広大な土地が確保できる地方にじゃんじゃん進出するべきだと思う。
それが無理なら部分的移転だけでも実現し、空いた敷地を利用してゆったりとした都市改造を推進すればいい。
また、当座のソフト対策としては若者向きとして出来るだけ自然に親しんだりスポーツに取り組む機会を創るなんてどうかな。
都会の喧騒を離れて、海とか山とか自然環境の下での楽しさを見出させたり、さらには音楽、絵画、彫刻などの趣味を促進させて夜の街への関心を薄くさせることだ。
前述したメルケルさんが試みる芸術支援策の狙いの一つに、その辺が隠されているのかもしれない。
以上、実に短絡的な発想だが何かほかに名案がありますかね?
もし、あればご教示ください。ブログのネタにさせていただきますから(笑)。
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