CD番号 WPCS-5844/5(2枚組)
収録年 1987年
評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)
総 合 A- 刺激的だが冷たい温度感、こじんまりとした魔笛
指揮者 A- ニコラス・アーノンクール(1929~ )
管弦楽団 A- チューリヒ歌劇場管弦楽団
合唱団 A- 同 合唱団
ザラストロ B+ マッティ・サルミネン
夜の女王 A+ エディタ・グルベローヴァ
タミーノ A- ハンス=ペーター・プロホヴィッツ
パミーナ A+ バーバラ・ボニー
パパゲーノ A- アントン・シャリンガー
音 質 A- セパレーション、解像度がいまひとつ物足りない
”聴きどころ”
☆パミーナ役ボニーの抒情的なソプラノにはウットリと聴き惚れさせるものがある。ボニーが絡んだアリア、重唱は全て一聴の価値あり。
アーノンクールは古楽演奏の第一人者として知られ、作曲された当時の時代考証に基づいて、音楽を忠実に再現するとともに、古楽的アプローチで旧来の音楽演奏に新風を吹き込んでいる。
古楽器による小編成のこじんまりとしたオーケストラなので、はじめのうちは何だかモノラルをデジタル録音したような趣を感じたが、聴き込むにつれて、そんなに悪い録音ではないことが分かったが、もっとクリアーな音質がほしい。
歌手陣はよくそろっていて概ね粒よりの印象を受けた。特にパミーナ役のボニーは屈指の存在。
夜の女王ゲルベローヴァは相変わらずの安定感を見せ、ハイティンク盤(1981年)よりも情感を感じさせ余裕を見せている。
タミーノ役のブロホヴィッツはたしかにいい線をいっている。水準以上で声質もあのヴンダーリヒの系統だが、残念にもややスケールが小さい印象。これではヴンダーリヒを越えることは無理だろう。
細かいことを言えばザラストロ(バス)役は明らかに声量不足で少々軽すぎて役柄のイメージである荘厳さを忠実に表現していない。
古楽器によるこじんまりとした魔笛で、歌手を前面に押し出すとともに歌劇の進行も台詞を省略してナレーションが入るもので(♯3のカイルベルト盤がそうだった)、14セット目にして、新しい試みの魔笛に出会った印象を受けた。
随所に見られるいろんな工夫がモーツァルトの時代を忠実に再現する試みの一環なのだろうが、そうであれば全体的にもっと熱気や自由気ままの奔放さ、楽しさが欲しい気がした。どこか、さめすぎた魔笛という印象を受ける。