見もの・読みもの日記

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官僚もすなる料理/中華料理四千年

2004-09-25 00:58:29 | 読んだもの(書籍)
○譚璐美『中華料理四千年』(文春新書)文藝春秋社 2004.8

 稿を改めて書くつもりだが、今、『厨子当官』という中国の喜劇ドラマにハマっている。

 時代は清末。西太后は宮廷料理人の牛不耕がお気に入り。彼を香河県の県知事に任命しようと考えた。政治改革の理想に燃える光緒帝はこれに反対し、彼が信頼する料理人の石竹香を、同じ県の県知事に派遣した。結局、両名は1日交代で県知事を勤めることになる。

 ...ということで起こるドタバタ喜劇である。中国の県知事は司法官を兼ねるから、法廷(もちろん当時の)シーンが多く、推理ドラマの趣きもある。主人公の石竹香は、要所要所で料理の腕を披露しながら、次々に難事件を解決していく。

 まあ、日本のなんとかサスペンス劇場でも、探偵が同時に料理人であるとか、バスガイドであるとか、旅館のおかみであるとか、いろんな設定で視聴者を喜ばせようとするものだが、料理人が県知事になるって、そりゃあ無理がありすぎないか、と思っていた。

 しかし、この本を読むと、日本人が感じるほどの違和感はないのかもしれない。そもそも中国人の始祖、黄帝が人々に「かまど」で煮炊きすることを教え、肉を炙って食べる方法を教えたというのだし。商王朝(殷)の宰相であった伊尹は「割烹の聖人」(!)だった。唐の穆宗の時代の丞相、段文昌は「食経」を書いた。

 杭州の太守に左遷中だった蘇東坡が「東坡肉」(トンポーロー)を発明したのは有名な話だが、「宮保鶏丁」(鶏肉とカシューナッツ炒め)も、清末の四川省総督だった丁宝という人物が発明したという。この手の逸話は掘り出せばごろごろあるらしい。

 つまり、中華文明において料理というのは、「男もすなる」いや「高級官僚もすなる」たしなみだったらしいのである。

 うれしかったのは、北京の彷膳飯庄を紹介した一段。「もっとも私の目を引いたのは、翡翠色をした羊羹のようなものだった」というのを読んで、10年以上前、たった一度だけ食べた彷膳の点心の味が鮮やかによみがえった。そうそう、あれ(芋ようかんみたいだった)は美味しかった!! でも、著者の書き方からすると、特に名前はないのかしら。あ~「肉沫焼餅」(肉そぼろを挟んだ中華バーガー)も美味しかったなあ...涙が出る。

コメント
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