見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

伊万里、再び/松岡美術館

2005-12-10 23:09:41 | 行ったもの(美術館・見仏)
○松岡美術館『古伊万里展-古九谷・柿右衛門・金襴手』

http://www.matsuoka-museum.jp/

 上記サイトにも掲載されているポスターを見たとき、うわっ、これはすごいぞ、という予感がした。古九谷2点、柿右衛門2点、金襴手2点の写真を並べているのだが、「どうだ」と言わんばかりの名品揃いである。

 そして、期待は裏切られなかった。展示は、時代順に、古九谷・柿右衛門・金襴手と進むのだが、逸品揃いで、気を抜ける作品が無い。やっぱり、こういうとき、個人コレクションを基礎に発展した博物館は強いなあ。これが、先日の「伊万里と京焼(東京国立博物館)」だと、各時代・各様式の基準作が揃っていて、伊万里陶磁器の展開を、”お勉強”するには好都合だった。しかし、この展示会で見る作品は、いずれもハナから”基準作”を超えていて、比較や類推を拒絶するものが多い。ひとつひとつ、制作者の芸術的創造性に脱帽するのみである。

 だから、レビューをするのは難しいが、あえて印象的な作品をあげると、古九谷の青手では「無花果文平鉢」がイチ押し。縁(ふち)文様を施さず、皿いっぱいに絵を描く。キッカイな姿の太湖石(?)が横たわり、その上を無花果(イチジク)の葉と、たわわな果実が埋めている。たとえ純真無垢な子供に描かせても、こうは描けないだろうという大胆さだ。

 構図の大胆さは、時代や様式を超えて、伊万里の陶磁器を貫く特徴だと思う。たとえば、古九谷の1つ(青手ではない)は、魚眼レンズを覗いたように、大地が右斜め上にあり、視界を水平に横切る梅の枝に小鳥がとまっている。また徳利の頸の部分まで羽根を伸ばす孔雀など。平易で親しみやすいといわれる柿右衛門様式でも、よく見ると、ずいぶん大胆なデフォルメと様式化を施している。

 色絵に比べて、伊万里の染付(青花)は、やや凡庸かなと思ったら、「鳳凰文八角大壺」は、牡丹と鳳凰を描くのに、まるでシルエットだけでよしとするかのように、濃い青絵具をボテボテと置く。清朝の巧緻な青花とは対極の世界だ。

 東博で「伊万里」の魅力に目覚めた方は、ぜひこちらにも足を運んでほしいと思う。
コメント (1)
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