見もの・読みもの日記

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優美、ドラマチック/パルマ展(国立西洋美術館)

2007-07-01 23:53:03 | 行ったもの(美術館・見仏)
○国立西洋美術館 『パルマ-イタリア美術、もう一つの都』展

http://www.nmwa.go.jp/index-j.html

 16世紀から17世紀にかけてイタリア北中部の都市パルマに花開いた美術を紹介する展覧会。最近、ヨーロッパ史、とりわけ美術史の本を立て続けに読んでいたので、作品が見たくなって足を向けた。本格的な西洋美術の展覧会は、ものすごく久しぶりだったが、すぐに会場の雰囲気に溶け込めた。あまり混んでいなかったのもよかった。やっぱり、この時期の西洋絵画はきれいだ。高貴な人々を飾る赤と青、そして金。男女問わず、裸体の肌の、赤みを帯びた艶やかな白。パルミジャニーノの『ルクレティア』は、ただただこの肌の輝きに魅了される。

 パルミジャニーノは、『聖チェチリア』のような大作もいいが、素描(版画の下絵?)の小品『クッションを持つ女性』に惹かれた。クッションを抱えて、少し俯いた少女の横顔が可憐。江戸時代の愛らしい風俗画みたいである。このひと、優美にしてドラマチックという、1980年代の少女マンガ家が喜びそうな作品を描く。本人も美形。肖像画を見ていたら、森川久美の名前を思い出した。

 展示は時代順に進んで、最後が「バロックへ-カラッチ、スケドーニ、ランフランコ」と題したセクションだった。自慢じゃないが、この3人の画家、誰も知らないなあ、と思って見ていったら、スケドーニの『慈愛』と題した作品に目が留まった。2人の乞食の子どもにパンを与えようとする女性を描いたもの。乞食のひとりは見えない目を観る者に向けている。女性の足元には、金髪の健康そうな幼児。岡田温司さんの『もうひとつのルネサンス』に掲載されていた作品だ、と思い当たった。

 あらためてスケドーニの名前と作品を探すと、『キリストの墓の前のマリアたち』(→『墓を訪れる三人のマリア 』に同じ)も強烈な色彩と明暗が印象鮮烈である。さらに、もう一度「素描および版画」のセクションに戻って、小品ながら異様な迫力のただよう『洗礼者聖ヨハネの説教』『嬰児虐殺』がスケドーニ作品であることを確認し、なるほどと納得した。

 私は、どうにも、このバロック期の作品が好き! ランフランコでは『聖マタイの召命』。机を囲んで銀貨・銅貨を数える男たちのひとりを、赤と青の衣のキリストらしき人物が手を差し伸べて招く。マタイって収税人だったのよね(中高をキリスト教系の学校で過ごした私は、こういうときに聖書の物語がよみがえってきて有り難い)。立ち読みした図録の解説によれば、この作品は、ある銀行家組合の求めによって描かれたそうだ。画中の男たちは、17世紀のイタリアの服装をまとっている。つまり、今であれば、背広姿のビジネスマンの真ん中にキリストが現れたような場面なのかもしれない。

 カラッチは『戴冠の聖母』の威厳に満ちた美しさに惹かれた(ただし、これはコレッジョのフレスコ画の模写、下記に画像あり)。超有名どころの作品はないけれど、いい展覧会である。混まないうちに行くことをおすすめ。

■展覧会公式サイト
http://www.parma2007.jp/
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