見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

岩波書店フェア企画「私のすすめる岩波新書」

2008-12-11 23:41:37 | 見たもの(Webサイト・TV)
○岩波書店:創刊70周年記念「私のすすめる岩波新書」

http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/sin_fair2008/index.html

 当節、どうして丸山真男の『日本の思想』(岩波新書、1961)なんぞを突然読もうと思ったかというと、先日、大型書店の入口で、大々的なフェアをやっているのを見つけたのだ。岩波新書は1938年11月20日に誕生し、今年、70周年を迎えた。この記念の年に、各界著名人の推薦によって選ばれたのが「私のすすめる岩波新書」50点である(→上記サイトに一覧リストあり)。こうして見ると、恥ずかしながら書名を知っているだけ、というのがけっこう多い。大江健三郎の『ヒロシマ・ノート』とか、鶴見良行『バナナと日本人』とか、実は読んでいないのである。

 読んだ記憶はあるが、内容をきちんと答えられないものもある。梅棹忠夫の『知的生産の技術』はその代表。中高生の頃、背伸びして読んだ本は、ほんとに何も実質が残っていない。もちろん印象の強かったものもあって、堀田善衞の『インドで考えたこと』、加藤周一の『羊の歌』、吉川幸次郎と三好達治の『新唐詩選』が私のベスト3だろうか、この中では。

 何より面白いのは、誰がどの本を推薦しているかである。推薦者の大半は、わりと生真面目に、自分の専門分野に関係の深い1冊を選んでいらっしゃるが、ときどき、あれっ?と思う結びつきがある。近代史の成田龍一さんが石母田正『平家物語』だったり、中世日本文学の久保田淳さんが高階秀爾『名画を見る眼』(西洋美術鑑賞の手引)を選んでいたり。へえ~このひとは、なぜこの本を選んだのかなあ、と思う。こんなふうに、各界の著名人と、ただの一般人が体験を共有できるところが、読書をめぐる共同体の「幸福」だと思う。ちなみに、私が丸山の『日本の思想』を読みなおそうという気になったのは、「姜尚中氏推薦」のポップが立っていたからだ。

 別のページに「読者が選ぶもう一度読みたい岩波新書」があって、こっちもなかなかセレクションがいい(そうそう、吉川幸次郎には『漢の武帝』もあった。この本、好きだったなあ~)。近年、読み捨ての週刊誌みたいな新書が爆発的に出現しているが、20年後、あるいは30年後、「もう一度読みたい新書」として、タイトルの挙がるものがどれだけあるだろうか。やっぱり、文化・学術財って、供給者(作者)と、享受者(読者)と、その間を仲介する商売人(書店=出版社)という三者の、どこかが矜持を忘れたら、終わりなんじゃないかと思う。
コメント
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