■奈良県立美術館 平城遷都1300年祭特別展『花鳥画-中国・韓国と日本-』(2010年9月28日~11月14日)
2日目は奈良からスタート。朝、久しぶりに平時の(特別な行事のない)東大寺を散歩したが、そのことは別稿としよう。本展は「古くから日本へ感銘を与えてきた中国・韓国の花鳥画の美に触れていただくとともに、それらを摂取し展開させながら日本が生み出してきた数々の名品を展示」というホームページの前半の記述だけ頭に入れて見に行ったら、いきなり中国の唐代壁画の断片、三彩、銀盤などが並んでいてびっくりした。実は、展覧会趣旨の後半に「併せて、中国から国外初出品となる唐時代の壁画断片と花鳥文工芸、韓国から奈良時代の工芸との関連が指摘される『花鳥文骨装飾』(雁鴨池出土)が出品」とあるのだが、ちょっと前半(第1部)と後半(第2部)の関係が分かりにくいと思う。
第1部の目玉は、陝西省考古研究院所蔵、韋浩墓出土の『鳥語花香仕女図』。日本国内で、唐代の壁画が見られるチャンスはめったにないので、食いつくように見入る。しかし、その題名にもかかわらず、鳥と花の姿はすごく薄色なので、展覧会のテーマとのかかわりは分かりにくい。唐代のぼってりした花卉文の鏡、好きだなあ。それから、藤田美術館蔵の『扇面法華経冊子断簡』が出ていたが、柏の低木に群れ集う鷽(うそ)を描く。喉元の赤い、丸々した小鳥。風俗画ばかりかと思っていたら、こんな図柄もあるのか、と新鮮だった。
第2部は「宋・元・明・高麗・朝鮮王朝の花鳥画と日本での受容・展開」を紹介する。ただし、「日本での受容・展開」の好例、雪舟、宗達、若冲の作品は後期(10/26~11/14)展示。でも、分かっている人なら、あ、この『蓮池白鷺図』からあの『蓮池図』が生まれるのか、とか、この『架鷹図』からあの『鸚鵡図』かあ…という具合で、だいたい展示の意図は読み取れると思う。
久しぶりに見て嬉しかったのは、狩野元信の『四季花鳥図』。水墨の風景に著彩の花鳥を配した不思議な作品。あれー8軸だったのかあ、と思って、以前の記録を探したら、2008年11月に見たときも全く同じ感想を書きつけていて、自分の進歩の無さに苦笑してしまった。
■大和文華館 開館50周年記念名品展Ⅰ『大和文華館の日本絵画』(2010年10月2日~12月26日)
2009年秋から休館していた同館が、リニューアルを終えて再オープンした。このところ、東京地区ではサントリーや根津など、本当に「面目一新」のリニューアルが相次いでいたのに比べると、あまり変わってなくてホッとした。リニューアル並びに開館50周年を記念する第一回展は、日本の絵画・書蹟の名品展。作品数は73件だが、間然とするところがない。『寝覚物語絵巻』に『小大君』に桃山の『婦人像』に…と、どれも一度は見たことがあるものばかりだが、全然がっかりしない。何度見ても新鮮で、ますます好きになる作品ばかりなのだ。
『婦女遊楽図屏風』(松浦屏風)は、2006年4月以来、久々の対面。描かれた18人の女性たちの、堂々とした美しさにため息が出る。さまざまな髪型。自由闊達なファッションセンス。眉は剃っていたりいなかったり。あまり年配に見えない女性もお歯黒を付けていると思ったら、遊女、芸妓はお歯黒をした、という記事を見つけ、そうだったのか、と思った。初公開の新収品、岡田為恭筆『春秋鷹狩茸狩図屏風』は、金地の山に藍色の水のパノラマ風景が美しい。作者は”冷泉”為恭と同一人だよねえ、と思いながら、どこにもその説明がないので、最後まで自信が持てなかった。
2日目は奈良からスタート。朝、久しぶりに平時の(特別な行事のない)東大寺を散歩したが、そのことは別稿としよう。本展は「古くから日本へ感銘を与えてきた中国・韓国の花鳥画の美に触れていただくとともに、それらを摂取し展開させながら日本が生み出してきた数々の名品を展示」というホームページの前半の記述だけ頭に入れて見に行ったら、いきなり中国の唐代壁画の断片、三彩、銀盤などが並んでいてびっくりした。実は、展覧会趣旨の後半に「併せて、中国から国外初出品となる唐時代の壁画断片と花鳥文工芸、韓国から奈良時代の工芸との関連が指摘される『花鳥文骨装飾』(雁鴨池出土)が出品」とあるのだが、ちょっと前半(第1部)と後半(第2部)の関係が分かりにくいと思う。
第1部の目玉は、陝西省考古研究院所蔵、韋浩墓出土の『鳥語花香仕女図』。日本国内で、唐代の壁画が見られるチャンスはめったにないので、食いつくように見入る。しかし、その題名にもかかわらず、鳥と花の姿はすごく薄色なので、展覧会のテーマとのかかわりは分かりにくい。唐代のぼってりした花卉文の鏡、好きだなあ。それから、藤田美術館蔵の『扇面法華経冊子断簡』が出ていたが、柏の低木に群れ集う鷽(うそ)を描く。喉元の赤い、丸々した小鳥。風俗画ばかりかと思っていたら、こんな図柄もあるのか、と新鮮だった。
第2部は「宋・元・明・高麗・朝鮮王朝の花鳥画と日本での受容・展開」を紹介する。ただし、「日本での受容・展開」の好例、雪舟、宗達、若冲の作品は後期(10/26~11/14)展示。でも、分かっている人なら、あ、この『蓮池白鷺図』からあの『蓮池図』が生まれるのか、とか、この『架鷹図』からあの『鸚鵡図』かあ…という具合で、だいたい展示の意図は読み取れると思う。
久しぶりに見て嬉しかったのは、狩野元信の『四季花鳥図』。水墨の風景に著彩の花鳥を配した不思議な作品。あれー8軸だったのかあ、と思って、以前の記録を探したら、2008年11月に見たときも全く同じ感想を書きつけていて、自分の進歩の無さに苦笑してしまった。
■大和文華館 開館50周年記念名品展Ⅰ『大和文華館の日本絵画』(2010年10月2日~12月26日)
2009年秋から休館していた同館が、リニューアルを終えて再オープンした。このところ、東京地区ではサントリーや根津など、本当に「面目一新」のリニューアルが相次いでいたのに比べると、あまり変わってなくてホッとした。リニューアル並びに開館50周年を記念する第一回展は、日本の絵画・書蹟の名品展。作品数は73件だが、間然とするところがない。『寝覚物語絵巻』に『小大君』に桃山の『婦人像』に…と、どれも一度は見たことがあるものばかりだが、全然がっかりしない。何度見ても新鮮で、ますます好きになる作品ばかりなのだ。
『婦女遊楽図屏風』(松浦屏風)は、2006年4月以来、久々の対面。描かれた18人の女性たちの、堂々とした美しさにため息が出る。さまざまな髪型。自由闊達なファッションセンス。眉は剃っていたりいなかったり。あまり年配に見えない女性もお歯黒を付けていると思ったら、遊女、芸妓はお歯黒をした、という記事を見つけ、そうだったのか、と思った。初公開の新収品、岡田為恭筆『春秋鷹狩茸狩図屏風』は、金地の山に藍色の水のパノラマ風景が美しい。作者は”冷泉”為恭と同一人だよねえ、と思いながら、どこにもその説明がないので、最後まで自信が持てなかった。