見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2011歳末のんびり奈良・京都:北野天満宮

2011-12-30 21:59:46 | 行ったもの(美術館・見仏)
北野天満宮:終い天神+宝物殿

 天満宮の縁日(毎月25日)の中でも最も賑わうという「終い天神」へ。まあ賑わうと言っても午後からだろうなあ、と思いながら、様子を見ようと昼前に到着。すると、すでに参道は人でぎっしりだった。すごい! バス通りから楼門までの参道は、たこ焼き、焼そば、ベビーカステラなど食べもの屋の露店が中心。干し柿、漬け物、コンニャクなど、関東ではあまり見ないお店があるのが、もの珍しくて楽しい。刃物や箸、お椀、正月飾りのお店も混じる。

 参拝を済ませて、宝物殿(毎月25日開館)を見ていくことにする。終い天神なので、『北野天神縁起絵巻』(承久本)のホンモノが出ていないかな?と期待したのである。展示品の冒頭に「国宝・北野天神縁起絵巻」というキャプションがついていたので、一瞬、やった!本物?と思ったが、かすかな違和感がある。巻末まで見ていったら「…承久本をデジタルアーカイブしたものです。奉納 日本ヒューレッド・パッカード社」という札が付いていた。しかし、え、今日はこの札、外し忘れているんじゃないの?と悩むくらい、よく出来た複製である。念のため、入口の職員の方に確かめたら「複製です」とおっしゃっていたし、館外の看板にも、複製だか模本だかの注記が付いていた。

 来年の干支にふさわしいのは、海北友松筆『雲龍図』。この龍は、出っ歯で団子鼻で顎がしゃくれていて、御世辞にも美形とはいえないけど、愛嬌はある。富岡鉄斎筆『渡唐天神図』は、伝統的な図様に則り、しかも伝統以上の魅力がある。長谷川等伯筆の絵馬『昌俊弁慶相騎図』は、毛むくじゃらの大男二人(一人は大鎧、一人は毛脛丸出しの着流し)が一頭の黒馬に相乗りする図で、かなりマッチョな等伯(69歳当時)作品である。

 さて、脇の東門から出てみると、境内の外側の通りも、お店でいっぱいだった。西陣らしく、古着の着物や帯、端切れ、足袋などの和装小物を扱うお店が多く、お客さんがけっこう本気で買い込んで行く。またニットやフォークロア調のストール、帽子、バッグなども多数。表参道には少なかった骨董のお店も、ゆっくり見られるこのへんのほうが多い。

 いいものがあれば買ってもいいと思っていたが、安っぽい近現代ものが多くて、なかなかこれという品物がない。やっぱり露店市はこんなものかなーと思っていたら、ある店で、近江八景(たぶん)を描いた、少し大きめの八角形のお皿が目に飛び込んできた。しみじみ眺めて、これはいい、と思ったが、小さな値札をよく見たら「25,000円」とあった。うーむ。私の行動基準では、衝動買いはちょっと無理…かなり葛藤した末に、結局、諦めた。骨董三昧に本格参入するのは、まだ先でいいと思っている(定年後の楽しみ)。でも、初めての露店市で、それなりにいいものを見つけることのできた自分に少し満足。

西陣らしい華やかな帯の店。


道端に凶器が平然と並んでいる…。平和だなあ、ニッポン。


関東人には珍しい、京都風の正月飾り。※東京の飾りは、海老だの扇だの紅白の御幣だのが付いているのが普通。


結局、買ったもの。


大小の塗り碗(100円×2)。毎日のご飯もこれで食べようかと。塗りが剥げて、味が出るまで使ってみたい。天神さん人形は、神棚がないので、今、キッチンのレンジフードの上に鎮座してもらっている。
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2011歳末のんびり奈良・京都:大和文華館

2011-12-30 11:07:46 | 行ったもの(美術館・見仏)
大和文華館 『中国美術コレクション展』(2011年11月19日~12月25日)

 今回は、全て同館所蔵品による平常展のため、入館料は割安。しかし、内容は特別展に引けを取らない。会場入口に墨蹟の『虎丘十詠跋』(元代、霊石如芝筆)、絵画の『秋塘図』(北宋)、陶磁器『白磁蟠龍博山炉』(隋~唐)が並んでいて、本展を構成する「書・画・工芸」の質の高さをさりげなくアピールしているように思えた。

 冒頭の解説には、同館の中国美術コレクションは、初代館長・矢代幸雄の収集品が中核となっていること、それゆえ「文人の趣味や茶人の好みが反映された分野の作品は少なく、宋画や陶磁器において、鑑賞性の高い逸品を所蔵」していること、また矢代の収集が、繭山龍泉堂や広田不孤斎/松繁(「壷中居」創業者)、山中商会などの賛同者との交流によって進められたことが書かれていた。「買い手」の美術館を「売り手」の美術商が支えるって、不思議なようだけど、芸術とか学術の世界って、一般的な市場原理では語り切れないんだよなあ…ということが、最近、実感として分かってきた。

 前半は工芸(陶磁、金工、玉製品など)。取り上げておきたいのは、まず三彩馬ならぬ『灰陶加彩誕馬』(南北朝時代!)。全体に石灰を塗り、彩色を加える。黒も少し使っているが、一見すると「赤い馬」である。三国志演義の赤兎馬を彷彿とさせる。どっしりした下半身で、顔が小さい。鞍の上には騎手がいたのかも知れないな、と思った。耀州窯の『青磁雕花蓮華文瓶』はいいわ~。木箱の蓋に墨書「不孤斎」あり。大和文華館のホームページによると、2012年春の『花の美術』展にも出るようだが、写真だと色が全然違って見える。

 後半は書画。『雪中帰牧図』双幅は、見るたびに味わいが深まる感じがする。今回、とても面白かったのは、狩野安信による『雪中帰牧図』の模本があったり、『文姫帰漢図』(南宋初頭の原本の趣きを伝える明代本)に谷文晁の鑑蔵印があったり、清代の版刻『太平山水図集』(+模本2種セット)の奥書に谷文晁が、此の太平三山図は平安(円山)応挙のものだったが、今は木遜斎(木村蒹葭堂)の所蔵に帰した、と記していたり、模本の1本が椿椿山の筆だったり、江戸時代の画家や文人たちが、精力的に中国絵画を収集して、整理・鑑賞・模写した様子がうかがわれたこと。

 同様に、近代以降「新たに流入する中国絵画」のセクションに並んだ明清絵画についても、絵画自体の新しい魅力(繊細な薄墨の美しさ、無人の山水に近代的自我を感じる)とともに、鑑蔵印や奥書に見るコレクターの交流と交錯にも興味をそそられる。内藤湖南の「炳卿眼福」印ってカッコいいな~。『聴松図巻』は何度か見ている作品だが、「張学良印」があったり、翁同龢(おうどうわ)の跋文があることに気づいていたかどうか。

 最後の『閻相師像』は、久しぶりに見ることができて嬉しかった。2006年の『文人たちの東アジア』展以来かな。別の紫光閣功臣像は、2009年、天津博物館でも見たけど。

※蛇足。「繭山龍泉堂」のサイトから何気なく「マユヤマジュエラー」のサイトを見に行ったら、ジュエリーコレクションに見入ってしまった。大人の美意識だなあ。欲しい。これまでジュエリーなんて関心を持ったことがないので、値段は想像もつかないのだが…。
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