見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2014年8月@東京:江戸妖怪大図鑑・幽霊(太田記念)、宗像大社(出光)

2014-08-29 21:02:51 | 行ったもの(美術館・見仏)
太田記念美術館 特別展『江戸妖怪大図鑑』(2014年7月1日~9月25日)第2部:幽霊(8月1日~8月26日)

 第1部:化け物(7月1日~7月27日)を見に行って、全作品収録の展示図録を買ってしまったのが運の尽き。見たい!どうしても!と思って、無理くり上京の日程をつくって、来てしまった。1階のお座敷の展示ケースに葛飾北斎の百物語5枚組が勢ぞろい。「お岩さん」「さらやしき」「こはだ小平次」「笑ひはんにゃ」「しうねん」が並ぶ。それから、累(かさね)、お岩、お菊、朝倉当吾(佐倉惣五郎)などの著名な幽霊が、それぞれ集められている。上から垂れ落ちるように現れる幽霊の姿が多い。むかし、服部幸雄氏の『さかさまの幽霊』という論考を読んだ記憶があり、視点の斬新さは印象に残っているのだが、歌舞伎の基礎知識がなかったので、内容は十分に理解できなかった。ちょっと読み返してみたくなった。

 1階が「世話物」幽霊中心だとすると、2階は時代物。崇徳院の「怨霊」も、申し訳ないが「幽霊」扱いされている。「平清盛と亡霊」にこんなにバリエーションがあるのは知らなかった。月岡芳年が2作品を描いているが、明治の強権的な藩閥政治家の姿が、清盛に重なっていたのだろうか。大物浦で源氏の船を取り囲む平家の亡霊たちも多数描かれている。船上の義経主従を主役にしたものと(八嶋壇ノ浦の海底の図を含め)平家の亡霊たちにフォーカスしたものがあり、どちらも名作揃い。

 錦絵新聞がたくさん出ていたのも面白かった。明治のジャーナリズムは怪力乱神を語ってばっかり。月岡芳年描く清玄もとい、岩倉の宗玄は私の好きな作品だが、今回の展示に桜姫を描いたものがあって、その眩しいほどの色っぽさ。「ふるいつきたくなる美女」って、こういうときに使うんだろうな。

出光美術館 『宗像大社国宝展-神の島・沖ノ島と大社の神宝』(2014年8月16日~10月13日)

 「海の正倉院」とも呼ばれる沖ノ島の出土品(約8万点・一括国宝指定)の中から、4世紀の古墳時代から9世紀の平安時代におよぶ多様な奉献品62件を展示公開。サイトの解説によれば、37年前、昭和52年(1977)にも同館で『宗像 沖ノ島展』が開催されたというが、残念ながら、私に前回の記憶はない。ただ、2013年の東博『国宝 大神社展』で見たような気がする神宝はいくつかあった。

 私は沖ノ島の位置がよく分かっていなかったので、会場の地図を見て、本州の西端・九州・壱岐・対馬が半円弧を描くちょうど中心点に島があることを知って、感嘆してしまった。岩上祭祀(4世紀後半~5世紀)→岩陰祭祀(5世紀後半~7世紀)→半岩陰・半露天祭祀(7世紀後半~8世紀前半)→露天祭祀(8~9世紀)という変化もよく分かった。見事な三角縁神獣鏡が多数。午前中に東博の考古展示室で、三神三獣、四神四獣などの諸類型を学んできたのが、すぐに役立った。玉、瑪瑙、ガラス玉、滑石製の子持勾玉などもあったが、金の指輪、金銅製の馬具は、見るからに朝鮮半島由来だと感じさせる。異なる文化と民族が行き交う海域だったんだろうな。

 宗像神社に残る南宋交易の跡も面白かった。狛犬一対は、見るからに中国顔である。阿弥陀経石の拓本に仙が阿弥陀仏像を描き入れたものも面白かった。ほかに特別出陳として、なぜか伊勢神宮の昭和の神宝、宗像大宮司家の文書、狩野安信の三十六歌仙扁額など。

 それにしてもなぜ出光美術館が?という疑問は最後まで氷解しなかったのだが、創業者の出光佐三が福岡県宗像郡の出身だと分かって、ようやく納得。しかも、作家・百田尚樹の『海賊とよばれた男』の主人公は出光佐三であるという、余計な情報まで手に入れてしまった。
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