○京都国際マンガミュージアム 漫画家生活50周年記念『青池保子 華麗なる原画の世界~「エロイカ」から「ファルコ」まで~』(2014年11月1日~2015年2月1日)
京都国際マンガミュージアムの存在は、ずいぶん前から気になっていたけれど、一度も訪ねたことがなかった。今回、青池保子展をやっていると分かって、行きたい!何としても!と決意を固め、京博の常設展を途中で切り上げて、こっちに向かった。
「漫画家生活50周年」と聞いて驚いたが、青池保子さんは1948年生まれ。1963年に15歳でプロデビューされた。私は70年代に『イブの息子たち』と『エロイカより愛をこめて』を読んで以来のファンである。私は集英社&白泉社派だったので、たぶん最初は、誰か友達に単行本を借りて読んだのだろうと思う。マンガの貸し借りはよくしていたなあ。青池さんの作品が読みたくて、秋田書店の『月刊プリンセス』も時々買うようになった。『エロイカ』の番外編『Z(ツェット)』は、愛読誌だった白泉社の『LaLa』で読んだ。
当時は、竹宮恵子とか萩尾望都とか山岸凉子とか大島弓子とか、「文学的」な完成度の高い少女マンガが注目を浴びていたと思う。私も彼らの作品が大好きだった。そして視覚的な面でも、それまでの少女マンガの定型とは異なる、冒険的で感性豊かな表現が生まれつつあった。それに比べると、青池作品は相当に異端だったと思う。絵柄はむしろ古くさくて、私の好みではなかったが、作品世界の個性は強烈だった。少女マンガが「何でもあり」の時代だったとはいえ、編集者は、よくあれだけの「冒険」を許したと思う。
展覧会の会場で、『イブの息子たち』に登場するチュチュ姿のニジンスキーを、何十年ぶりかで見たときは、懐かしくてめまいがしそうだった。ブーツを穿いた黒髪のヤマトタケル。毒薬マニアで超美形「無名の端役」は「チェーザレ・ボルジアに違いない」と読みあてた同級生の友人がいたなあ。まだネットで調べものもできない時代だったのに。
そして、作画においては、時流に媚びず「古くさい」まま、どんどん巧くなっていく。いやー素敵だ! 懐かしい作品も、初めて見る作品もあったが、ただただ見とれた。古典的名画を手本にした作品がずいぶんあるのだな。特に歴史ものでは。細かい装飾文様とか色のグラデーションとか、苦心と根気のしのばれる職人技が随所に見られたが、やっぱり描いていて楽しいから描くんだろうなあ、と思われた。ぜひ今後も、独立独歩で素敵な作品を描き続けてほしい。
会場では、熱心に作品を鑑賞する外国人(西洋人)の姿もずいぶん見かけた。彼らの感想がちょっと聞いてみたかった。
※参考:青池保子公式サイト「Land Haus」