■早稲田大学演劇博物館 2017年度春期企画展『テレビの見る夢−大テレビドラマ博覧会』(2017年5月13日~8月6日)+早稲田大学芸術功労者顕彰記念『山田太一展』(2017年5月13日~8月6日)
久しぶりに演劇博物館に行ってきた。本展は、テレビ創成期から現代に至る名作ドラマの数々を、映像、スチル、台本、衣裳、製作ノートなどの多彩な資料とともに振り返り、ドラマの魅力を再発見しようという展覧会。会場に入ると、年代順に当時の標準的な受像機と代表的なドラマの写真、資料が展示されている。1950年代はさすがに知らない。1960年代の『私は貝になりたい』『花の生涯』『おはなはん』等も記憶にない。私は60年代の生まれだけど、アニメばかり見ていて、まだ大人のドラマに興味はなかった。
1970~80年代は、私の10~20代にあたるので、一番テレビを見ていていいはずだが、なぜか私はテレビに興味を失っていた。それでも『傷だらけの天使』『赤い迷路』などは、友人の会話に出てきていたから記憶している。懐かしかったのは『天下御免』(NHK、1971-72年)で、これはもう一回見たい。小学生でも楽しめたが、たぶん今見るほうが、人物や歴史背景が分かって、より楽しめると思う。90年代は等身大の恋愛ドラマの時代。2000年代を経て、2010年代は「ポスト震災ドラマの時代」として整理されていた。「幽霊の登場するドラマが増えた」という考察が面白いと思った。『民王』『逃げ恥』『カルテット』など、けっこう最近のドラマまで目配りされていた。
資料では、和田勉さん(早稲田大学の演劇科卒)の残したスクラップブックが面白かった。1970年代くらいだろうか、ネガフィルムをそのままのサイズで焼き付けたような、小さな写真がたくさん貼り付けられていて、いろいろ書き込みがあった。展示室内では、いくつかのドラマが実際に放映されていた。古いドラマだけでなく、『トットてれび』や『あまちゃん』も。時間を忘れて見入ってしまいそうになった。あと、テレビ受像機の変遷も面白かった。ブラウン管テレビを見たのは久しぶりだったなあ。
併設の『山田太一展』は1階の1室で。山田氏は早稲田の国文学科卒業である。ほとんどドラマを見ない私が、唯一親しんでいた脚本家だった。『男たちの旅路』シリーズ、好きだったな。『獅子の時代』は冒頭の数回しか見なかったけど、全編見直したい大河ドラマである。
こういう展覧会も「ドラマの魅力再発見」の一助にはなると思うが、私はそれより、古い名作ドラマのコンテンツを、もっと無料配信してくれればいいのに、と思う。中国みたいに。
■早稲田大学會津八一記念博物館 『富田万里子コレクション長崎版画展』(2017年5月10日~6月17日)他
演劇博物館の帰りに通りかかったら「長崎版画」の文字が目に入り、覗いていくことにした。こちらの博物館も久しぶりである。卒業生であり画家でもある富田万里子氏の寄贈コレクションの中から、長崎版画80件余りを展示。この春、板橋区立美術館で『長崎版画と異国の面影』を見たばかりだったので、いろいろ面白かった。見た記憶のある、同工異曲の作品もある中で、「ライデン港」を描いたという、東洋とも西洋ともつかない赤・紺二色摺りの風景画が面白かった。
図録の解説を読んでみたら、長崎版画は、筆彩や合羽摺(型紙摺り)に始まり、19世紀初め、文斎(大和屋)版が江戸錦絵の多色摺木版技法が導入したが、文錦堂や梅香堂は、相変わらず合羽摺を用いた。「版元たちには、合羽摺にこだわる何か格別な信念があったようにも思われる」というのが、とても面白い! なお、特別出品として、早稲田大学図書館所蔵の関連資料も展示。うち、『惜字帖』は、医者・蘭学者の森島中良(1756?-1810)のスクラップブックで、清朝渡来の絹織物、菓子、文房四宝等の商標や包み紙だという。冊子本の宿命で、一か所しか開けて展示できないが、ぜひ全て見てみたい。
なお、寄贈者の富田万里子氏は「朱葉会」の同人と説明にあったので、調べたら、大正年間に設立された女流洋画家の団体だそうだ。ひとつ知識が増えた。
このほか、武者小路実篤の書画など、いくつかのテーマ展示室をまわった。メインの展示室は、中国の陶俑、古鏡、古瓦、アイヌ衣装、書画、ヨーロッパの古地図など、雑多なものが展示されていて面白かった。目をひいたのは、教科書などでも見たことのある唐墓壁画の大きな複製。ふらふらと吸い寄せられて、食い入るように眺めてしまった。ちなみに演劇博物館も會津八一記念博物館も入場無料である。大学って、いいところだ。
久しぶりに演劇博物館に行ってきた。本展は、テレビ創成期から現代に至る名作ドラマの数々を、映像、スチル、台本、衣裳、製作ノートなどの多彩な資料とともに振り返り、ドラマの魅力を再発見しようという展覧会。会場に入ると、年代順に当時の標準的な受像機と代表的なドラマの写真、資料が展示されている。1950年代はさすがに知らない。1960年代の『私は貝になりたい』『花の生涯』『おはなはん』等も記憶にない。私は60年代の生まれだけど、アニメばかり見ていて、まだ大人のドラマに興味はなかった。
1970~80年代は、私の10~20代にあたるので、一番テレビを見ていていいはずだが、なぜか私はテレビに興味を失っていた。それでも『傷だらけの天使』『赤い迷路』などは、友人の会話に出てきていたから記憶している。懐かしかったのは『天下御免』(NHK、1971-72年)で、これはもう一回見たい。小学生でも楽しめたが、たぶん今見るほうが、人物や歴史背景が分かって、より楽しめると思う。90年代は等身大の恋愛ドラマの時代。2000年代を経て、2010年代は「ポスト震災ドラマの時代」として整理されていた。「幽霊の登場するドラマが増えた」という考察が面白いと思った。『民王』『逃げ恥』『カルテット』など、けっこう最近のドラマまで目配りされていた。
資料では、和田勉さん(早稲田大学の演劇科卒)の残したスクラップブックが面白かった。1970年代くらいだろうか、ネガフィルムをそのままのサイズで焼き付けたような、小さな写真がたくさん貼り付けられていて、いろいろ書き込みがあった。展示室内では、いくつかのドラマが実際に放映されていた。古いドラマだけでなく、『トットてれび』や『あまちゃん』も。時間を忘れて見入ってしまいそうになった。あと、テレビ受像機の変遷も面白かった。ブラウン管テレビを見たのは久しぶりだったなあ。
併設の『山田太一展』は1階の1室で。山田氏は早稲田の国文学科卒業である。ほとんどドラマを見ない私が、唯一親しんでいた脚本家だった。『男たちの旅路』シリーズ、好きだったな。『獅子の時代』は冒頭の数回しか見なかったけど、全編見直したい大河ドラマである。
こういう展覧会も「ドラマの魅力再発見」の一助にはなると思うが、私はそれより、古い名作ドラマのコンテンツを、もっと無料配信してくれればいいのに、と思う。中国みたいに。
■早稲田大学會津八一記念博物館 『富田万里子コレクション長崎版画展』(2017年5月10日~6月17日)他
演劇博物館の帰りに通りかかったら「長崎版画」の文字が目に入り、覗いていくことにした。こちらの博物館も久しぶりである。卒業生であり画家でもある富田万里子氏の寄贈コレクションの中から、長崎版画80件余りを展示。この春、板橋区立美術館で『長崎版画と異国の面影』を見たばかりだったので、いろいろ面白かった。見た記憶のある、同工異曲の作品もある中で、「ライデン港」を描いたという、東洋とも西洋ともつかない赤・紺二色摺りの風景画が面白かった。
図録の解説を読んでみたら、長崎版画は、筆彩や合羽摺(型紙摺り)に始まり、19世紀初め、文斎(大和屋)版が江戸錦絵の多色摺木版技法が導入したが、文錦堂や梅香堂は、相変わらず合羽摺を用いた。「版元たちには、合羽摺にこだわる何か格別な信念があったようにも思われる」というのが、とても面白い! なお、特別出品として、早稲田大学図書館所蔵の関連資料も展示。うち、『惜字帖』は、医者・蘭学者の森島中良(1756?-1810)のスクラップブックで、清朝渡来の絹織物、菓子、文房四宝等の商標や包み紙だという。冊子本の宿命で、一か所しか開けて展示できないが、ぜひ全て見てみたい。
なお、寄贈者の富田万里子氏は「朱葉会」の同人と説明にあったので、調べたら、大正年間に設立された女流洋画家の団体だそうだ。ひとつ知識が増えた。
このほか、武者小路実篤の書画など、いくつかのテーマ展示室をまわった。メインの展示室は、中国の陶俑、古鏡、古瓦、アイヌ衣装、書画、ヨーロッパの古地図など、雑多なものが展示されていて面白かった。目をひいたのは、教科書などでも見たことのある唐墓壁画の大きな複製。ふらふらと吸い寄せられて、食い入るように眺めてしまった。ちなみに演劇博物館も會津八一記念博物館も入場無料である。大学って、いいところだ。