見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2020年9月関西旅行:泉屋博古館分館、龍谷ミュージアム、他

2020-09-16 23:22:04 | 行ったもの(美術館・見仏)

泉屋博古館分館 60周年特別展『瑞獣伝来-空想動物でめぐる東アジア三千年の旅』(2020年9月12日~10月18日)

 古来より、東アジアの美術工芸の重要なモチーフだった瑞獣(吉祥をもたらすとされた動物たち)。本展は、数ある瑞獣のなかから、龍・鳳凰・虎を取りあげ、古代中国から近代日本まで三千年の歴史を追う。展覧会のタイトルを聞いたときは、ははあ、泉屋博古館所蔵の青銅器『虎卣』や『虎鴞兕觥』が出るのかな、絵画は『雲龍図』や『風虎図』があったな、と思っていた。それらもあるにはあったが、見慣れない作品が多くて驚いた。点数60件余のうち、半数以上(たぶん)が他館からの出品だったのだ。

 龍は、ひときわ目を引く大作、海北友松が描いた建仁寺大方丈の襖絵が出ていた。鼻息の熱さまで感じられそうな、生き生きした龍の表情。首の後ろに雲か風か、ぐるぐる大渦巻が巻いている。本展のポスターに使われているのはこの龍なのだが、アップにし過ぎて迫力を削いでいる気がする。東博から伝・陳容筆『五龍図巻』が来ていたのにも驚いた。大阪市美の『人物鳳凰飾龍把香炉』(3~6世紀)や京大人文研の『飛龍画像石拓本』(1~2世紀)など珍しいものも。黒川古文化研究所の『龍袍』(青地に金糸の刺繍)には、流行りの清朝宮廷ドラマを思い出した。

 虎は、泉屋博古館のシンボルみたいな『虎卣』を久しぶりにじっくり見る。大きな口を開けた虎に抱えられているのに、母に抱かれた子供のように安心した表情を見せる人間。人間の両足が、立ち上がった虎の後ろ足に乗っているのも面白い。そして虎の後頭部にヤギのような四つ足の小動物が乗っていることに初めて気づいた。京大人文研の『西王母画像拓本』は、虎を従えた西王母を描くが、同じ画面に擬人化されたガマガエルとウサギがいるのを見て、もしや『鳥獣戯画』の発想ってここから?と思った。応挙が描いた『虎図』は三日月型の瞳孔が特徴。木島櫻谷の写生帖にはさまざまな虎の姿態が描かれていた。ぶ厚い肉球のアップまで。

 鳳凰は、なんと大阪市美の『五星二十八宿神形図』(6世紀)が出ていて、声をあげそうになった。朱雀に乗る女性の姿で描かれた太白星がメインで、その前の黒い牛に乗った鎮星、後ろの辰星と二十八宿の角宿の図が開いていた。どの図様も妖しくて好き。相国寺の『鳳凰石竹図』は墨画にかすかな朱(解説を読んで気づく)を加えた作品。鹿苑寺の『百鳥図』については、百鳥は宮廷に仕える文官を表し、猛禽類が見えないのは、シビリアンコントロールが行き届いた安寧の世を表すという解説が腑に落ちて面白かった。儒教的である。清代の補子(官服の胸につける四角い織物)の刺繍も、文官は鳥、武官は獣だったことを思い出した。

龍谷ミュージアム 特集展示『西七条のえんま堂-十王と地獄の美術-』(2020年9月12日~11月3日)

 「西七条えんま堂」(正法寺七条別院)の十王坐像および本尊の不動明王立像(鎌倉時代)を寺外で初公開。同寺には11躯の十王像があり、最も大きな閻魔王坐像は鎌倉時代の作、他の10躯は南北朝から室町時代の十王像5セットを寄せ集めたものと見られている。写真展示の『京羽二重大全』という書物には、京都の有名な閻魔王像として「引接寺、珍皇寺、閻魔堂(六波羅)、壬生寺、十王堂(西七条)」が挙げられていて、興味深く思った。

 この展示は「西七繁栄会」と龍谷ミュージアムの連携事業による調査の成果であるとのこと。今回は、時間がなくてえんま堂には寄れなかったが、次の機会には必ず行ってみよう。

えきにし:「西七繁栄会」による地域活性化の新しい取り組み 〜商店街マップづくりから、七条えんま堂駒札設置まで〜(2020/3/1)

京都文化博物館 特別展『池大雅-文人たちの交流-』+『木島櫻谷と京都画壇』(2020年8月12日~9月22日)

 『池大雅』展は、池大雅美術館から京都府に寄贈されたコレクションを中心に、大雅をめぐる文人たちの交流を紹介する。池大雅美術館は1959年に開設された私設美術館だが、2013年に閉館。その所蔵品は京都府に引き継がれた。コレクションには、池大雅と妻の玉瀾の両人を偲んで弟子たちが東山に建てた大雅堂ゆかりの品も含まれている。

 『木島櫻谷』展は、三条御倉町で染織物の問屋業を営んできた旧家・大橋家の資料をもとに、四代目・大橋松次郎が物心両面で支援した、木島櫻谷ら京都画壇の画家の作品を紹介する。櫻谷のほか、都路華香、山元春挙、土田麦僊らの作品もあった。明治から昭和の初めの絵葉書コレクションが面白かった。

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