見もの・読みもの日記

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2022年11月関西旅行:茶の湯(京都国立博物館)

2022-11-10 22:50:55 | 行ったもの(美術館・見仏)

京都国立博物館 特別展『京(みやこ)に生きる文化 茶の湯』(2022年10月8日~12月4日)

 各時代の名品を通して、京都を中心とした茶の湯文化を紹介する。展示替えを含め、出品点数は245件。質量ともにスゴい展覧会だと思うのに、いまいち盛り上がっていないのは、残念というべきか幸いというべきか。土曜の午後でも、それほど混雑していなかった。

 印象に残った作品を挙げていく。まず第1室(3階)の冒頭にあった清拙正澄墨蹟『秋来偈頌』(野村美術館)にほれぼれして、しばらく動けなくなってしまった。墨色の美しいこと。金と紫の格子文様の表具もセンスがよい。関西の美術館の所蔵品は、まだまだ知らないものが多いなあと思う。この部屋は、墨蹟のほか、茶釜・水指・茶入・茶碗・花瓶・棗など、茶の湯道具のいろいろ(名品ばかり!)がひととおり並ぶ。『吉野絵懐石道具のうち』と記された飯椀・汁椀・丸盆などのセット(江戸時代)は、所蔵者が書いてなかったので個人蔵だろうか。黒漆の地に朱漆で大きく草花文を描いた華やかな器で、これが利休好みと言われていることが意外だった。「嵯峨棗」という蒔絵の棗も珍しかった。東京では、これほど華やかな棗はあまり見ないような気がする。

 第2室は、喫茶文化との始まりを求めて中国へ。中国・唐時代の白磁碗(邢州窯系、スープ皿のように浅い、京博)に驚く。円覚寺所蔵で開山・無学祖元への献茶道具と伝わる響銅鋺(さはりわん、銅製)と托(朱塗の天目台)・六角形の盆のセットもたぶん初めて見た。南宋時代の茶臼(野村美術館)は、卓上で使えるような小さな石臼だった。また、長岡京跡で発掘された緑釉陶器釜と火舎(平安時代、8~9世紀、京都市考古博物館)は、茶を煮出すための道具と考えられているそうだ。

 2階に下りると、本格的に喫茶文化の導入が進む鎌倉時代。建仁寺の『四頭茶礼道具』は、なぜか2019年の常設展でも見ている。建仁寺では方丈に栄西の肖像と龍虎図を掛け、香炉、花瓶、燭台等を飾るとのこと。その雰囲気を再現するため、大徳寺の伝・牧谿筆『龍虎図』(人相が悪い)が掛けてあり、見覚えのある青磁花瓶1対や青磁香炉が出ていると思ったら、神奈川・称名寺のものだったりした。そのほか、出光美術館の青磁酒海壺、根津美術館の青磁竹子花入も来ていた。

 伝・牧谿筆「瀟湘八景図」のうちの『煙寺晩鐘図』(畠山記念館)も久しぶりに拝見。玉澗筆『洞庭秋月図』(文化庁)に李迪筆『雪中帰牧図』2幅(大和文華館)もあり。もうこれは高水準の中国名画展である。会場の入口に置かれていたリーフレットに「茶の湯は日本を代表する文化」とあって、ご丁寧に中国語版も用意されていたけど、どうなの?と思ってしまった。

 もちろん日本の民衆が喫茶を楽しんだ証拠として、東寺の南大門前で商売をする茶売人の連署資料(東寺百合文書)が出ていたり、小屋掛けの茶屋を描いた『珍皇寺参詣曼荼羅図』が出ているのも面白かった。

 1階、いつもなら仏像が並ぶ大展示室には、利休の『待庵』と秀吉の『黄金の茶室』の復元模型が展示されていた。前者は今回の特別展のために再現されたもの、後者は佐賀県立名護屋城博物館が再現したものらしい【※訂正あり】。どちらも屋根がなく、壁は紙のように薄くて、ポータブルの玩具のようだが、まあ茶室って本質的にはそういうものかもしれない。

 1階右奥の展示室は、いつも展覧会の目玉が飾られる部屋で、今回も予想どおりだった。入口を入ったとたん、正面の一部に淡いピンクの壁紙が見えた。そこに掛かっていたのが、伝・徽宗皇帝筆『桃鳩図』である。あまり混んでいなかったので、私はまっすぐ『桃鳩図』の前に歩み寄った。ネットの情報によれば、2004年→2014年→2022年と、ほぼ10年に1回の公開サイクルらしい。しかも今回も11/3-6のわずか4日間の公開である。前回、2014年の三井記念美術館『東山御物の美』に出たときは、私は札幌在住で、東京行きのタイミングを合わせることができなかったのだ。死ぬまでに一度は見たいと思っていた作品で、ついに夢が叶った。品種はアオバトだそうだが、こんなに丸っこく愛らしい姿を見せるものなのだろうか。ぱっちりした目もチャームポイント。隣には、同じく伝・徽宗筆『秋景冬景山水図』2幅(金地院)が並んでいた。こっちは東京で何度か見たことがある。

 大満足で向かい側の部屋に進んだら、伝・牧谿筆『柿図・栗図』2幅(龍光院)があったのも嬉しかった。墨色の濃淡で柿の熟れ具合を描き分けた『柿図』は可愛らしくて好き。青磁鳳凰耳花入の名品、陽明文庫の『千聲』と和泉市久保惣美術館の『万聲』が並ぶのもめったにないことだろう。まだ書き足りないことは多数あり、できたら後期にも再訪したいが、無理かなあ。しかし至福の展覧会だった。

【2022/12/4訂正】同展を再訪して確かめたら、これは伏見桃山城キャッスルランド(2003年閉園)が1994年に制作したものだった。現在は京都市が譲り受けて管理しているらしい。

京都市情報館:伏見桃山城内所蔵品「黄金の茶室」の貸出しについて

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