見もの・読みもの日記

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後に残る者たちへ/中華ドラマ『一念関山』

2023-12-31 20:17:19 | 見たもの(Webサイト・TV)

〇『一念関山』全40集( 檸檬影業、愛奇藝、2023年)

 架空の王朝を舞台にした武侠劇。中原では、梧国・安国という2つの強国が覇権を争っていた。戦いに敗れた梧国皇帝は安国の捕虜となり、安国は梧国に対して、十万両の身代金を携えて迎帝使として皇子を寄こすよう要求する。迎帝使の人選に苦慮した梧国宮廷は、皇帝の異母妹で、母親の身分が低かったため、冷宮で育った公主の楊盈を皇子礼王と偽って送り出すことにした。

 梧国の秘密警察組織である六道堂の堂主・寧遠舟は、礼王の護衛として旅に同行することになった。一行には、六道堂の仲間たちのほか、寧遠舟の表妹を名乗る謎の美女・任如意が加わっていた。如意はもとの名を任辛と言い、安国の秘密警察・朱衣衛の左使をつとめた伝説の刺客だった。しかし7年前、敬愛していた安国皇后が何者かに殺害される事件に出会って以来、安国を去り、皇后殺害に関わった人々への復讐を続けていた。たまたま梧国に潜入して寧遠舟を知り、「自分の子供の父親になってほしい」と迫る。如意は亡き皇后の遺言「男性に惚れてはいけない。しかし子供は持つべき」を忠実に守ろうと考えていた。はじめは如意を持て余していた寧遠舟だが、次第に二人は惹かれ合っていく。

 【ややネタバレ】如意は、皇后殺害の首謀者が安国皇帝そのひとであり、大皇子も二皇子も真実を知りながら、見て見ぬふりをしていたことを知り、彼らを血祭りにあげた後、朱衣衛で各種の汚れ仕事に従事させられていた仲間たちを解放する。六道堂の人々は、安国に囚われていた梧国皇帝の奪還に成功、しかし帰国を急ぐ途中、北方の異民族である北盤人の襲撃を受ける。安国の二皇子が天門関を開いて、中原に北盤人を招き入れてしまったためだった。梧国皇帝は戦死。多大な犠牲を出した一行は合県城に籠城する。

 安国では前皇帝の死後、赤子の新帝が即位し、かつて如意を師父として武芸を磨いた李同光が摂政王となった。楊盈は、自分が女性であることを明かし、両国の和睦のため、李同光に嫁ぐことを望む。二人を中心とする援軍が合県城に到着するが、北盤人の攻撃は厳しさを増す。梧国には皇帝戦死の報が届けられ、皇弟・丹陽王が即位する。新帝は直ちに援軍を派遣するが、合県の民衆を守るため、六道堂が払った犠牲は大きかった…。

 【ネタバレ】本作は11月28日に配信が始まり、ゆるゆる楽しんでいたら、12月18日に最終話が配信された翌日、日本語サイト「Record China」に「武侠ドラマ『一念関山』の結末に視聴者から不満噴出」というニュースが掲載された。よせばいいのに本文を読んでみたら「メインキャラが全員戦死」とまで書かれていた。このドラマ、序盤は如意と寧遠舟の不器用な恋のゆくえを、六道堂の面々+楊盈がキャッキャうふふで見守るラブコメ古装モードが全開なのだ(あまり得意でないので途中リタイアしようと思ったくらい)。たまにシリアス展開も混じるけれど、全員戦死ってどういうこと?と思っていた。

 それが30話くらいから急降下で地獄展開に入る。六道堂の仲間たち、銭昭、孫朗、元禄、于十三だけでなく、メインキャラの次くらいの人たちも(鄧恢~)、北盤人との戦いで次々に命を落としていく。寧遠舟は、乱戦の中から李同光を救出するのと引き換えに凄絶な戦死を遂げる。李同光は、師父の如意に一途な思慕を寄せ続け、寧遠舟には嫉妬の炎を燃やしていたのだが、最後の最後は、師丈(先生の夫)、寧大哥、と呼びかける。武侠ドラマって、成長する少年少女が主人公となるケースが多いと思うのだが、本作は、すでに自我の確立した如意や寧遠舟が主人公で、李同光や楊盈など次世代の若者に教えを残し、成長を助けて死んでゆく物語とも言える。如意は爆弾を隠し持って北盤狼王の幕屋に赴き、自爆テロを仕掛ける。寧遠舟のいない世界に生き続けたいという望みはなかったのだろう。覚悟を決めた如意(劉詩詩)は凄絶で美しかった。為すべきことを終えてこの世を去った者たちは、どこかで楽しく暮らしていると言いたげな終わり方だったけど、やっぱり辛いなあ。

 本作のアクションシーンは見栄えがしてカッコいいのだが、カッコよさの基準が、映画やアニメからゲームに移行しているように思われ、古い人間としては、ちょっと違和感も感じた。出演者では、『虎鶴妖師録』で覚えた何藍逗さん(楊盈)、陳宥維くん(元禄)の活躍を見ることができて嬉しかった。本作の収穫、李同光を演じた常華森くんと于十三の方逸倫さんとは、また違う作品で会うことを期待したい。

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