東京国立博物館の展示から。
■東洋館8室 特集『中国書画精華-日本におけるコレクションの歴史』(前期:2023年10月31日~11月26日)(2023年11月28日~12月24日)
毎年恒例の特集展示。今年は前期・後期とも、伝来の時期による「古渡り」「中渡り」「新渡り」の分類に従って展示されていた。前後期とも見に行ったが、特に後期は、根津美術館の『北宋書画精華』とつなげて見ることで味わいが増したように思う。後期は、金大受筆『十六羅漢図』3幅など、仏教道教に関するあやしい人物画がたくさん出ていた。『天帝図軸』(元~明時代)は、玉座に玄天上帝(足元に亀と蛇の玄武)、その周りに四人の武神、関元帥(関羽)、趙元帥、馬元帥、温元帥を描く。所蔵先は文京区の霊雲寺で、徳川将軍家の祈願寺だという。地理的に、私は近くを通ったことがありそうだと思った。
■東洋館8室 特集・創立80周年記念『常盤山文庫の名宝』(2023年8月29日~10月22日)
9月くらいに東博に行ったら、すごい特集展示をやっていて驚いたもの。公益財団法人常盤山文庫は、初代理事長の菅原通濟が古美術の蒐集を始めた1943年を創立の年とし、80周年を迎えたことを記念して開催する。私は常盤山文庫というと根津美術館との関係が深いと思っていたが、2018年よりコレクションの多くが順次東博に寄託されているそうである。墨蹟の名品、清拙正澄の『遺偈』(棺割の墨跡、毘嵐巻空…で始まる) や無準師範の『巡堂』、絵画の『送海東上人帰国図』などに加え、『柿本人麻呂像』などの日本絵画、充実した陶磁器コレクション(米色青磁瓶!)も一括で見ることができて嬉しかった。
なお、同時期に慶應義塾ミュージアム・コモンズで開催されていた『常盤山文庫×慶應義塾 臥遊(がゆう)-時空をかける禅のまなざし 』(2023年10月2日〜12月1日)はついに行けなかった。原則、土日祝日休館では社会人は行けない…。
■平成館特別展示室 特別展『やまと絵-受け継がれる王朝の美-』(2023年10月11日~ 2023年12月3日)
第2期のレポートは掲載済だが、そのあと、最後の第4期も見に行ってしまったのである。第1室では、金剛寺の『日月四季山水図屛風』を久しぶりに見ることができて嬉しかった。雪舟筆『四季花鳥図屛風』(鶴が突っ立ているやつ)は、いやこれ、やまと絵なのか?と思いながら、面白くてしげしげ眺めた。第2期に神護寺三像が出ていた場所には、妙法院の『後白河天皇像』、大覚寺の『後宇多天皇像』、長福寺の『花園天皇像』が来ていた。高山寺の『明恵上人像』も見ることができたし、人物画・肖像画好きとしては満足。ただ、お目当てだった『随身庭騎絵巻』は、もうちょっと開けてほしかった。根津美術館の『那智瀧図』も久しぶりに見た。あとは、第2期にも出ていたが『年中行事絵巻』(住吉本)は、五色(?)の幕屋の華やかな場面で楽しかった。ああいうの、来年の大河ドラマでも再現されるといいな。
■平成館特別展示室 特別展『古代メキシコ-マヤ、アステカ、テオティワカン』(2023年6月16日~9月3日)
夏に見たもの。数多いメキシコの古代文明の中から「マヤ」「アステカ」「テオティワカン」という代表的な3つの文明に焦点をあて、近年の発掘調査の成果を交えて紹介する。私は多数の考古遺物をぼんやり眺めてきた。テオティワカン文明は宗教性の強い巨大な都市遺跡で知られる。マヤ文明は、文字や暦の説明が興味深かった。女性の書記官像があったのが印象に残っている。アステカ文明は『鷲の戦士像』という等身大の陶製の像が来ていて、鳥に変身しかけた(?)姿が、宮﨑駿の映画『君たちはどう生きるか』(見ていない)のビジュアルみたいだと思った。