見もの・読みもの日記

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新しい古典の誕生/映画・ゴジラ-1.0

2024-01-02 20:03:41 | 見たもの(Webサイト・TV)

〇山崎貴監督・脚本『ゴジラ-1.0(マイナスワン)』(TOHOシネマズ日本橋)

 年末年始休暇のうちに映画館で映画が見たくなって、大晦日の朝に見てきた。事前に私が仕入れていた情報は「敗戦後すぐが舞台」「朝ドラ『らんまん』の主役コンビ、神木隆之介くんと浜辺美波さんが主演」「神木隆之介くんは元特攻隊員」「ゴジラが怖い」くらいだったが、とてもおもしろかった。

 大戦末期、特攻隊として出撃した敷島浩一(神木隆之介)は、搭乗機の故障のため、大戸島の守備隊基地に不時着する。しかし整備兵の橘(青木崇高)は故障個所を見つけられず、敷島が特攻逃れのために故障を偽ったのではないかと疑う。その晩、基地は巨大な怪獣「呉爾羅(ゴジラ)」に襲われる。橘は敷島に、零戦に装着されている20ミリ砲でゴジラを撃つよう懇願するが、敷島は恐怖で撃つことができず、敷島と橘以外の整備兵は全滅してしまう。

 終戦。東京に戻った敷島だが、両親は空襲で亡くなっていた。ぼんやり暮らしていた敷島のところに、戦災孤児である赤子の明子を連れた典子(浜辺美波)という女性がころがり込み、奇妙な同居生活が始まる。典子と明子のために仕事を探していた敷島は、機雷の撤去作業の職を得て、掃海艇に乗り込む。

 1946年、ビキニ環礁で米軍による核実験が行われる(ゴジラが巨大化・凶悪化するには、やはりこれが必須なのね)。1947年5月、巨大生物が日本に向かって移動していることが観測される。日本政府は混乱を恐れて、国民に事実を秘匿したまま、ひそかに迎え撃とうとするが全く歯が立たない。上陸したゴジラは、熱線で東京中心部を壊滅的に破壊し、典子も行方不明になってしまう。

 占領下で独自の軍隊を持たない日本は、民間人のみでゴジラに立ち向かうこととなり、駆逐艦「雪風」の元艦長・堀田は、元海軍関係者を集め、作戦への参加者を募る。科学者の野田は、ゴジラを相模湾の海溝に沈めて急激な水圧の上昇を与え、さらに海底から海上へ引き揚げて減圧を与える作戦を提案した。敷島は、自分が戦闘機でゴジラを誘導することを申し出、日本に1機だけ残っていた戦闘機「震電」の整備のために橘を呼び寄せる。

 【ネタバレ】ついに日本再上陸を目指すゴジラが出現。堀田らは作戦を遂行するが、急激な加圧も減圧も効かない。敷島は、爆薬を搭載した震電でゴジラの口の中に突っ込む。爆破成功。そして敷島は、特攻直前、パラシュートで脱出していた。帰還した敷島は、典子が病院で待っていることを知る。

 本作で敷島個人および日本という国が体験する、失敗→自責→困難の克服、というのは、ある種、古典的な作劇パターンだと思うが、分かっていても劇中人物と一緒に怯え、手に汗握り、最後は涙してしまう。困難の克服が「特攻」のやり直しではなく、敵を撃破して、かつ生き延びるという描写なのがとてもよい。最後、生きていた典子に再会した敷島は、典子にすがっておんおん泣くのだが、神木くん、女性にすがって泣く姿がこんなにさまになる俳優もいないのではないか。

 敷島が新しい人生に踏み出すには、典子の存在が不可欠だったが、より大きな意味を持っているのは、整備兵の橘である。大戸島の一件以来、敷島の臆病さを罵り、軽蔑していた橘が、震電に脱出装置を取り付けて、敷島に引き渡すのである。神木くんと青木崇高さんといえば、大河ドラマ『平清盛』では義経と弁慶の主従役だった、などと古い記憶まで呼び覚まされて、感慨にふけってしまった。今後、本作がテレビ放映等で親しまれ、ゴジラ映画の古典の位置を占めてくれることを願ってやまない。


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