〇東京長浜観音堂 『十一面観音立像、薬師如来立像、阿弥陀如来立像(高月町落川・浄光寺)』(2024年5月18日~6月16日)
令和6年度第1回展示の十一面観音立像を見てきた。一回り小さな薬師如来立像と、さらに小さな阿弥陀如来立像という、あまりない三尊形式だった。
お寺の名前だけでは気がつかなかったが、お顔を見て、あ、これは!と思った。昨年、「観音の里ふるさとまつり」のバスツアーで拝観させていただいた観音様である。解説に「肉身部には肌色を塗り」とあるけれど、胡粉に朱でも混ぜているのだろうか。眉・目・髭を墨で描き入れ、唇は赤く、童子のような愛らしさがある。薬師如来と阿弥陀如来も黒目と髭が描き加えられており、生き生きと親しみやすい表情をしている。
十一面の頭上面もなかなかよい。
6月8日は、高月観音の里歴史民俗資料館の学芸員・佐々木悦也氏のギャラリートークがあったので聴きに行った。佐々木さん、お話を聞いているうちに思い出したが、以前、余呉町国安の十一面観音についてのギャラリートークをお聞きした方だった。
はじめ、滋賀県の仏教文化財全般の紹介があり、話題は竹生島にも及んだ。竹生島の宝厳寺は、神亀元年(724)聖武天皇の勅願により僧・行基が開基したと伝わることから、今年2024年は開創1300年を記念して、5月と10月に秘仏御開帳を行うことになっている。5/18~27は弁才天堂(本堂)の本尊御開扉で(終了)、10/12~21には観音堂の本尊御開扉が行われる。弁才天信仰は観音信仰でもあるのだ。うーむ、5月は逃してしまったが、10月は行きたいなあ…。
また、8/15~16に行われる蓮華会は、本来、当番の家が、新しく作った弁才天像を奉納する行事だったが、現在は、お前立ちの弁才天像を一時お預かりして奉納することになっているそうだ。宝厳寺最古の弁才天像(弘治3年(1557)の墨書銘あり?)は長浜の仏師の作ではないかとも見られている。
このあたり、余談と思って聞いていたのだが、あとで浄光寺の十一面観音に戻って、そのお顔立ちをアップの写真でよく見ると、四角っぽいところが、竹生島の古い弁才天像と、とてもよく似ていた。ちなみに佐々木さんによれば、観音・薬師・阿弥陀の3躯ともに、いかり肩で腰が低く、胴長で全体に四角い姿は、竹生島を含め、湖北に多い特徴だという。なるほど。
ギャラリートークの最後に、井上靖さんの『星と祭』の一節を朗読してくださったのも感銘深く、観音の里・高月への愛情をしみじみ感じた。