■大阪歴史博物館 特別企画展『世界に誇る大阪の遺産-文楽と朝鮮通信使-』(2017年9月30日~11月26日)
私は文楽も好きだし、朝鮮通信使にも興味があるが、なんだよこの取り合わせ、と思いながら見に行った。6階の特別展示フロアに上がると、通路を挟んで右が「朝鮮通信使」、左が「文楽」の展示に完全に分かれていた。「朝鮮通信使」のほうから見る。通信使の様子を描いた絵画資料が多く、特に船の図がたくさんあって面白い。通信使は釜山から海路で対馬に寄港し、馬関を経て瀬戸内海を航行し、大坂に入る。大坂で日本側が用意した川御座船に乗り換えて淀川を遡航し、淀からは陸行する。展示品の多くは、川御座船を描いたものなので、漕ぎ手は祭りさながら、揃いの浴衣(?)あるいは袴姿の日本人である。まわりには小さな供船がにぎやかに付き従い、船端で景色を眺める通信使の姿も描かれる。
行列図には愛らしい小姓がいたり、鉄砲を携えた炮手がいることに初めて気づいた。あと、以前にも見たような気がするが、通信使をもてなした御馳走献立の次第(メニュー)が面白い。「七五三膳」という形式で、寿司が出たり伊勢海老が出たりしている。絵画としていちばんインパクトのあった『文化度朝鮮通信使人物図巻』の写真をあげておく。これは楽人の図。
なお、資料のほとんどは朝鮮通信使の研究者である辛基秀(シンギス)氏(1931-2002)が収集し、同館に寄贈したものであるそうだ。
文楽関係は、展示の半分くらいを鬘見本が占めていた。国立文楽劇場で鬘・床山担当をつとめた名越昭司(1931-2016)の旧蔵品をご遺族が寄贈したものである。そのほか、静と忠信の文楽人形(吉田文雀氏着付け)や戦前の四ツ橋文楽座のポスターやチラシなどが出ていたが、これらも複数のコレクターからの寄贈だった。
■大阪市立東洋陶磁美術館 国際巡回企画展『イセコレクション-世界を魅了した中国陶磁』(2017年9月23日~12月3日)
フランス・ギメ東洋美術館と同館で開催される国際巡回展。戦国時代(紀元前5-3世紀)から清時代までの中国陶磁を、重要文化財2点を含めた88点で紹介する。「世界を魅了」ってなんぼのものよ、という気持ちで見に行ったのだが、見ているうちに、だんだん冷や汗が出てきた。これはすごい。優品揃いで全くあそびがない。
この展覧会開催中、同館は写真撮影が可能となっている。私のイチ押しは、南宋官窯の長頸瓶。米色青磁である。
磁州窯の黒釉刻花、牡丹唐草文梅瓶も好き。
藤田伝三郎、安宅コレクションを経て現在に至る飛青磁瓶(元時代)、川端康成旧蔵の三彩長頸瓶(唐時代)ど、伝来を聞くだけで、ただものでないと分かる品もあった。遼・金時代のやきものが多い点は私の好みに合致して嬉しかった。気になるコレクターは「イセ食品」の会長・伊勢彦信氏と聞いても、全く分からなかったが、鶏卵業界のリーディングカンパニーであるそうだ。伊勢氏は、中国磁器以外にも、印象派の西洋絵画、アールヌーボーのガラス器、近代日本画など多数の美術品を所蔵しており、「求めに応じて美術館に無償で貸し出している」というのが素晴らしい。こういう実業家、まだいらっしゃるんだなあ。
展示を見ながら、明清の各時代の磁器の特徴をあらためておさらいしたので簡単にメモ。永楽(洗練が進む。余白を大きくとった優美な文様、コバルトの濃淡。大型の器多い)-宣徳(年製を記すことが始まる)-成化(完成度が高い)-弘治・正徳(政情が不安定、作例が少ない)-嘉靖(隙間なく塗りかためた雑彩多く、瓢箪形多い)-万暦(五彩盛行、赤絵好まれる)。あと明代の黄釉と清代の黄釉は色味が異なり(後者はレモンイエロー)、乾隆帝の時代、官窯では黄地青花が焼かれた。
なお、常設展エリアも撮影可能なので、汝窯の水仙盆を撮っておいた。うれしい。
私は文楽も好きだし、朝鮮通信使にも興味があるが、なんだよこの取り合わせ、と思いながら見に行った。6階の特別展示フロアに上がると、通路を挟んで右が「朝鮮通信使」、左が「文楽」の展示に完全に分かれていた。「朝鮮通信使」のほうから見る。通信使の様子を描いた絵画資料が多く、特に船の図がたくさんあって面白い。通信使は釜山から海路で対馬に寄港し、馬関を経て瀬戸内海を航行し、大坂に入る。大坂で日本側が用意した川御座船に乗り換えて淀川を遡航し、淀からは陸行する。展示品の多くは、川御座船を描いたものなので、漕ぎ手は祭りさながら、揃いの浴衣(?)あるいは袴姿の日本人である。まわりには小さな供船がにぎやかに付き従い、船端で景色を眺める通信使の姿も描かれる。
行列図には愛らしい小姓がいたり、鉄砲を携えた炮手がいることに初めて気づいた。あと、以前にも見たような気がするが、通信使をもてなした御馳走献立の次第(メニュー)が面白い。「七五三膳」という形式で、寿司が出たり伊勢海老が出たりしている。絵画としていちばんインパクトのあった『文化度朝鮮通信使人物図巻』の写真をあげておく。これは楽人の図。
なお、資料のほとんどは朝鮮通信使の研究者である辛基秀(シンギス)氏(1931-2002)が収集し、同館に寄贈したものであるそうだ。
文楽関係は、展示の半分くらいを鬘見本が占めていた。国立文楽劇場で鬘・床山担当をつとめた名越昭司(1931-2016)の旧蔵品をご遺族が寄贈したものである。そのほか、静と忠信の文楽人形(吉田文雀氏着付け)や戦前の四ツ橋文楽座のポスターやチラシなどが出ていたが、これらも複数のコレクターからの寄贈だった。
■大阪市立東洋陶磁美術館 国際巡回企画展『イセコレクション-世界を魅了した中国陶磁』(2017年9月23日~12月3日)
フランス・ギメ東洋美術館と同館で開催される国際巡回展。戦国時代(紀元前5-3世紀)から清時代までの中国陶磁を、重要文化財2点を含めた88点で紹介する。「世界を魅了」ってなんぼのものよ、という気持ちで見に行ったのだが、見ているうちに、だんだん冷や汗が出てきた。これはすごい。優品揃いで全くあそびがない。
この展覧会開催中、同館は写真撮影が可能となっている。私のイチ押しは、南宋官窯の長頸瓶。米色青磁である。
磁州窯の黒釉刻花、牡丹唐草文梅瓶も好き。
藤田伝三郎、安宅コレクションを経て現在に至る飛青磁瓶(元時代)、川端康成旧蔵の三彩長頸瓶(唐時代)ど、伝来を聞くだけで、ただものでないと分かる品もあった。遼・金時代のやきものが多い点は私の好みに合致して嬉しかった。気になるコレクターは「イセ食品」の会長・伊勢彦信氏と聞いても、全く分からなかったが、鶏卵業界のリーディングカンパニーであるそうだ。伊勢氏は、中国磁器以外にも、印象派の西洋絵画、アールヌーボーのガラス器、近代日本画など多数の美術品を所蔵しており、「求めに応じて美術館に無償で貸し出している」というのが素晴らしい。こういう実業家、まだいらっしゃるんだなあ。
展示を見ながら、明清の各時代の磁器の特徴をあらためておさらいしたので簡単にメモ。永楽(洗練が進む。余白を大きくとった優美な文様、コバルトの濃淡。大型の器多い)-宣徳(年製を記すことが始まる)-成化(完成度が高い)-弘治・正徳(政情が不安定、作例が少ない)-嘉靖(隙間なく塗りかためた雑彩多く、瓢箪形多い)-万暦(五彩盛行、赤絵好まれる)。あと明代の黄釉と清代の黄釉は色味が異なり(後者はレモンイエロー)、乾隆帝の時代、官窯では黄地青花が焼かれた。
なお、常設展エリアも撮影可能なので、汝窯の水仙盆を撮っておいた。うれしい。