見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

百年の孤独/在日 ふたつの「祖国」への思い

2005-04-07 22:42:00 | 読んだもの(書籍)
○姜尚中『在日 ふたつの「祖国」への思い』(講談社+α新書)講談社 2005.3

 「あとがき」で著者が述べているように、このところ、朝鮮半島との関係は、ジェットコースター並みに変化が早い。明日は何が起きているか分からない。韓流ブームの過熱に冷水を浴びせるような竹島問題・教科書問題の再燃。しかし、たとえ敵意であってもお互いに関心を持ち続けることは、眼を閉ざして背き合うような関係よりはいいのかも知れない、とも思う。

 今の日本が、朝鮮半島に対して責めを負うべきことは、植民地支配そのものよりも、むしろ長い戦後の無関心なのではないかと、最近、思うようになった。在日韓国・朝鮮人を「北送」というかたちで厄介払いし、「自分たちが平和であればいい」という態度を通したことが、隣国の人々にどれだけ厳しい運命を強いる結果になったかは、きちんと反省されなければならない。

 フランスやイギリスが、戦後、旧植民地国から大量の移民を受け入れ、いろいろ問題を抱えながらも他民族国家への道を歩んでいるのと比較すると、日本の態度は、まるで飽きたおもちゃを打ち捨てた駄々っ子のようではないか。どちらの国(の指導者)がより多く悪者であったかという議論よりも、私はただ、そういう日本の態度を恥ずかしいと感じる。これを自虐的と呼ぶのだろうか。でも、この国はもっと大人の国であるべきだ、という願いと矜持に裏打ちされているのだから、決して自虐ではない、と思うのだけど。

 韓国と日本の間には、いつもお互いに対する羨望とコンプレックスがわだかまっているように思う。敗戦国でありながら急速な経済復興を遂げた日本に対して、戦勝国なのに祖国分断の悲劇に陥った韓国が、妬みを感じなかったはずはない。でも、逆に昨今、日本の民主主義の崩壊を見ていると、市民や学生の力で軍事独裁を切り崩し、一定の民主化を成し遂げた韓国に対して、私は少し羨望を感じている。

 しかし、著者の指摘するように、民主化と非軍事化の進む韓国と、逆に「平和」と「民主主義」という理想主義から解き放たれ、「普通の国」に復帰しようと模索する日本は、「奇妙な接近」を果たしつつあるとも言える。それならば、この接近を奇貨として、我々は腹を割った対話を始めることができるのかも知れない。

 今年、2005年は、日本の韓国領有が国際的に承認された桂・タフト協定から百年だと言う。そうだったか~。大多数の日本人は、日露戦争百年に華々しく盛り上がりたい(NHK大河ドラマ「坂の上の雲」の制作開始)気分のようだが、それだけの百年でないことは忘れないでいてほしい。いや、忘れるべきではないだろう。自戒を込めて。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

枝垂れ桜

2005-04-05 23:23:13 | なごみ写真帖
こちらは東大・本郷キャンパス。
安田講堂前の枝垂れ桜が見ごろです。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

こげぱんの京都絵日記

2005-04-03 22:51:41 | 読んだもの(書籍)
○『こげぱん三都(京都・大阪・神戸)ぶらり旅日記~京都編~』ソニーマガジンズ 2005.3

 まだちょっと仕事の忙しさを引きずっているので、本格的な読書が再開できない。まあ、それも今日あたりまで。ということで、なごみの1冊。「こげぱん」作者による、京都旅日記。

 全編カラーイラストで、食べものがものすごく美味しそうである。イノダコーヒーのフレンチトーストにまぶされたグラニュー糖の清らかな白さ、ビーフカツサンドのトーストパンの焦げ具合、十二段家のお漬け物の茄子、瓢亭たまごの黄味...見ているだけで満腹になる。

 京都の「おいしいパンやさん」チェックも役に立ちそうだ。行くたびに思うんだけど、京都って、パン屋さんのレベルが高い。金閣寺のそばにあるという「ADO HOUSE」のとうふパン、食べてみたい。先月、金閣寺に行ったのになあ。あと、宇治の「ベーカリータマキ」の茗香(抹茶と煎茶を練りこんだ食パン)も、記憶に留めておくことにしよう。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おじさん少年・藤森照信と仲間たち

2005-04-02 22:11:37 | 見たもの(Webサイト・TV)
○ETV特集『スロー建築のススメ~藤森照信流 家の作り方~』

http://www.nhk.or.jp/etv21c/backnum/index.html

 またテレビの話。今日もたまたまテレビをつけたら、藤森先生が出ていたので、そのまま見てしまった(2004年9月放送の再放送)。

 藤森邸・タンポポハウスと、赤瀬川邸・ニラハウスは、できたばかりの頃に友人と見にいった。タンポポハウスでは、ちょうど藤森先生が屋根に登っていて、「写真を撮ってもいいですか~?」と声をおかけしたら「いいよ~」と気さくに答えてくれたのが忘れられない。もちろんそれが初対面。そのとき、我々のそばで、本格的な機材を据えて写真を撮っていたのが増田彰久さんだった。

 あのときは、屋根の上にはタンポポ、家の周りには菜の花が満開だったが、最近は、色とりどりのポーチュラカが花盛りだという。なるほど、植物と共生する藤森先生の建築は、年々歳々変化していくのだ。赤瀬川邸のニラは元気がないそうで、ちょっと心配だが、そのうちあっと驚く変身を遂げるかも知れない。

 伊豆大島のツバキ城、茅野(長野県)の神長官守矢史料館へは、まだ行っていない。ツバキ城の無精ひげっぽい緑が最高! でも枯れた芝の植え替えとか、メンテナンスが大変らしい。ご主人の口ぶりが、なんだか大きな動物を飼ってるみたいだった。

 そして、この夏(2004年6月)完成した最新作が、樹上の茶室、高過庵(たかすぎあん)。「縄文建築団」として施工にも参加した赤瀬川さんと南伸坊さんが、完成を見に訪れる。地上6.5メートルの茶室まで、空中にむき出しのハシゴを登らなくてはならないので、ご老体の赤瀬川さんには、ちょっとハラハラしてしまった。

 バリアフリーなんて関係なし。でも、番組の冒頭で、老夫婦の暮らす下町の町屋を紹介していたとき、わざと段差を設けてあるのが、土間(仕事場)と生活空間の仕切り(メリハリ)なんだ、というような話をしていらした。何もかもフラットにしてしまうのがいいわけじゃない。段差あり、空中回廊あり、はね橋あり(赤瀬川邸)、その緊張感こそ、人間の身体と精神を若々しく保つ効果があるのだと思う。

 1980年代、「路上観察学会」発足時の懐かしい映像も流れた。モーニング姿で学士会館の前で発足宣言をしたときのビデオである。藤森先生、若いなあ~。そして20年。でも白髪になっても、この人たちは相変わらずだ。ゲゲゲの鬼太郎みたいな樹上の家で、男3人、茶道のまねごとをして、山の景色を見て、ごろりと横になる。いいなあ。かぎりなく少年に近いおじさんたちだ。おばさんにもこういう歳の取り方はできるかしら。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

再生する時代劇/柳生十兵衛七番勝負

2005-04-01 23:11:04 | 見たもの(Webサイト・TV)
○NHK金曜時代劇 柳生十兵衛七番勝負(1)「闇の剣」

http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/index.html

 嵐の年度末が終わって、久々に早く帰れたので、テレビをつけたら時代劇をやっていた。しかもチャンバラである。ほう、珍しいなと思いながら、引き込まれて最後まで見てしまった。

 むかし、私が子供の頃は、毎日どこかのチャンネルで必ず時代劇をやっていたと思う。もっとも内容はマンネリで、あまり面白いと感じたことはなかった。いつの間にか、テレビ時代劇は、すっかりすたれてしまった感がある。

 その一方、私は最近、中国の古装劇にハマっている。これは面白い。武侠もの、人情喜劇、シリアスな歴史ドラマ、どれも好きだが、常になくてはならないのがチャンバラである。ただし、中国の場合、基本は剣劇でなくて功夫(カンフー)アクションだ。特殊効果を用いた劇画テイストの演出で、美男美女のヒーロー/ヒロイン(武侠もののヒロインは強い)をさらにカッコよく見せてくれる。

 日本のテレビ時代劇も、この路線でいけば、再び若い視聴者を獲得できるのではないか、と思っていた。たぶん製作者も気づいているのだろう。『義経』のタッキーを見ていると、このまま、台湾や中国で放映しても違和感なくいけるなあ、と思う。

 この『柳生十兵衛』は、もう少し大人の視聴者を狙っているだろうか。出演者はオヤジばっかりだが、なかなかいい。まず台詞がきれいだ。現代語しかしゃべったことのない若手俳優に時代劇の台詞をしゃべらせると、抑揚がヘンで、下手な外国語のように聞こえるが、そういう不快感がない。また、立ったり座ったり歩いたりの挙措動作も、隅々まで時代劇らしい。さすが手錬れの役者さんたちである。

 その一方、BGMや演出のカメラワークは現代的、時に実験的で(中国のアクション古装劇に比べれれば抑え目であるけれど)カッコよさに溢れている。今後に期待。来週も見るぞ!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする