○柏井壽『京都 冬のぬくもり』(光文社新書) 光文社 2010.12
年が明けたら京都へ行くぞ!と思っていたのだが、寒波と正月疲れで気持ちが萎えてしまった。今日もぬくぬくとコタツで読書。本書は、京都人である著者が、冬の京都の歳時記やおすすめ町歩きコース、冬の味を語ったもの。夏→秋→冬ときたシリーズの3作目である。
観光のハイシーズンである夏や秋については、京都人のおすすめを聞くまでもない。聞いたとしても、だいたい1泊か2泊の週末旅行で、美術館の企画典やら、お寺の特別拝観やらを当て込んで行くので、それ以上のものを盛り込む余裕がない。けれど、本当に「京都」の魅力を味わうなら、冬がいちばんだと昔から思っている。一年中で最も観光客の少なくなる季節。「京都は京都を演じなくても済むわけで、ホッと一息ついて、素顔に戻る」という著者の表現は、言い得て妙だと思った。
「冬の町歩き」に紹介されているコースも、烏丸通り(五条から御池辺りまで)と寺町通り(三条辺りから丸太町まで)。一般のガイドブックが取り上げるような、観光有名寺院は特にない。しかし、橘行平邸址と伝える因幡薬師(ここは行った)とか、「送り鐘」で知られる矢田地蔵尊とか、街中にひっそり守り伝えられた古寺社が紹介されている。富岡鉄斎や北大路魯山人が揮毫した看板を見て歩くのも楽しそうだ。
初めて知った豆知識に「十二月十二日」(石川五右衛門の命日)と書いた紙を逆さに貼ると泥棒除けになるというのがある。年末の短い期間にだけ見られる習慣だそうで、機会があったら探してみたい。それから、保津峡に近い水尾の里は柚子の名産地(日本の柚子の発祥の地)で、花園天皇がこの地に植えたとの説があるそうだ。これも初耳。食べてみたいと思ったのは、洋菓子・桂月堂の「瑞雲」。よしよし、次回の京都旅行では、ぜひこの烏丸通り~寺町通りを歩いてみよう。
京都の本だと思って読み進んだら「冬近江の愉しみ」という1章が設けられていてびっくりした。著者は、本書に先立つ「夏」「秋」本でも、同様に近江(滋賀県)の魅力を紹介しているらしい。近江好きの私には、嬉しい付録だった。本書には、2010年秋、大津市歴史博物館で開かれた『大津 国宝への旅』と「黄不動」特別公開の様子がレポートされている。人の少なさに「もったいないやら、ありがたいやら」と困惑する著者。ほんとにねえ、2009年、京都・青蓮院の「青不動」特別公開には大勢の観覧客が訪れ、話題になったというのに。でも、このユルさが近江の魅力である。
秋の大津祭も楽しそうだな。ミニ祇園祭みたいな趣きがあるそうだ。行ってみたいが、10月(2011年は10月8-9日)は行事が多いんだよなあ…。あと「終い弘法」「終い天神」も一度行ってみたいが、全ては定年退職後の楽しみに取っておくしかないだろうか。
ところで、京都市は、2000年当時、年間4000万人であった入洛観光客数を、2010年までに5000万人に増やす「観光客5000万人構想」を宣言し、目標より2年早い2008年にこれを達成したそうだ。さんざん貢献している私が言うのもなんだが、京都の魅力を保つためには、もうやめてくれ、という感じ。観光客を年間3000万人まで減らします、っていう公約を掲げる政治家は出てこないものだろうか。
年が明けたら京都へ行くぞ!と思っていたのだが、寒波と正月疲れで気持ちが萎えてしまった。今日もぬくぬくとコタツで読書。本書は、京都人である著者が、冬の京都の歳時記やおすすめ町歩きコース、冬の味を語ったもの。夏→秋→冬ときたシリーズの3作目である。
観光のハイシーズンである夏や秋については、京都人のおすすめを聞くまでもない。聞いたとしても、だいたい1泊か2泊の週末旅行で、美術館の企画典やら、お寺の特別拝観やらを当て込んで行くので、それ以上のものを盛り込む余裕がない。けれど、本当に「京都」の魅力を味わうなら、冬がいちばんだと昔から思っている。一年中で最も観光客の少なくなる季節。「京都は京都を演じなくても済むわけで、ホッと一息ついて、素顔に戻る」という著者の表現は、言い得て妙だと思った。
「冬の町歩き」に紹介されているコースも、烏丸通り(五条から御池辺りまで)と寺町通り(三条辺りから丸太町まで)。一般のガイドブックが取り上げるような、観光有名寺院は特にない。しかし、橘行平邸址と伝える因幡薬師(ここは行った)とか、「送り鐘」で知られる矢田地蔵尊とか、街中にひっそり守り伝えられた古寺社が紹介されている。富岡鉄斎や北大路魯山人が揮毫した看板を見て歩くのも楽しそうだ。
初めて知った豆知識に「十二月十二日」(石川五右衛門の命日)と書いた紙を逆さに貼ると泥棒除けになるというのがある。年末の短い期間にだけ見られる習慣だそうで、機会があったら探してみたい。それから、保津峡に近い水尾の里は柚子の名産地(日本の柚子の発祥の地)で、花園天皇がこの地に植えたとの説があるそうだ。これも初耳。食べてみたいと思ったのは、洋菓子・桂月堂の「瑞雲」。よしよし、次回の京都旅行では、ぜひこの烏丸通り~寺町通りを歩いてみよう。
京都の本だと思って読み進んだら「冬近江の愉しみ」という1章が設けられていてびっくりした。著者は、本書に先立つ「夏」「秋」本でも、同様に近江(滋賀県)の魅力を紹介しているらしい。近江好きの私には、嬉しい付録だった。本書には、2010年秋、大津市歴史博物館で開かれた『大津 国宝への旅』と「黄不動」特別公開の様子がレポートされている。人の少なさに「もったいないやら、ありがたいやら」と困惑する著者。ほんとにねえ、2009年、京都・青蓮院の「青不動」特別公開には大勢の観覧客が訪れ、話題になったというのに。でも、このユルさが近江の魅力である。
秋の大津祭も楽しそうだな。ミニ祇園祭みたいな趣きがあるそうだ。行ってみたいが、10月(2011年は10月8-9日)は行事が多いんだよなあ…。あと「終い弘法」「終い天神」も一度行ってみたいが、全ては定年退職後の楽しみに取っておくしかないだろうか。
ところで、京都市は、2000年当時、年間4000万人であった入洛観光客数を、2010年までに5000万人に増やす「観光客5000万人構想」を宣言し、目標より2年早い2008年にこれを達成したそうだ。さんざん貢献している私が言うのもなんだが、京都の魅力を保つためには、もうやめてくれ、という感じ。観光客を年間3000万人まで減らします、っていう公約を掲げる政治家は出てこないものだろうか。