唐突だが、初音ミクのライブDVDを見たのである。これが、ライブ映像作品としてはなかなか優れていて、初音ミク自身のパフォーマンスも見事で、非常に面白い。ちょっとお薦めである。
初音ミクと言えば、いわゆるバーチャルな存在であり、本人名義のCDも出ていたりするけど、つまりは音楽ツールであり、生身の人間ではない。その初音ミクがライブをする、というのであるから、ちと驚いた。しかも、蓋を開けてみると、生バンドを従えてのライブだったのだ。
テクノロジーの発達した21世紀に於いては、亡くなった人の歌う映像に合わせて生バンドが演奏したり、サッカーでもバーチャルスタジアム構想、つまり他会場の試合をスタジアムのピッチ上に投影する、なんてアイデアもあったりして、バーチャルとリアルを組み合わせたパフォーマンスというのは十分に可能である、というのは理解出来る。けど、初音ミクのライブには、そういったテクノロジー云々だけでは語れない何かがあった。
ライブは、場内にミクの声だけが流れる所からスタートする。その後、バンド演奏が始まり、観客のテンションが高まった頃、ステージにミクが登場する。歌もさることながら、踊りもなかなか(笑) 早着替えも見せたりなんかして(笑)、アイドル歌手並みのパフォーマンスを披露する。そして、バックバンド。G、Bs、Key、Dsの4人が基本メンバーで、曲によってGやKeyが増える。クレジットによると、この増えたメンバーはミクの楽曲の作者らしく、自分の作った曲でギターを弾く、なんていいなぁ、と思ってしまった(笑) 4人の基本メンバーは安定した演奏で、ミクとの連携もバッチリ。相当練習したんだろうな、と思わせた。
ミクは、基本的に歌うだけで、MCはほとんどない。下手すると単調なライブになってしまう所だが、そうはならなかったのは、実は生演奏のおかげではないか、なんて僕には思えた。おそらく打ち込みで作られた曲を、生でしかもロック色強めに演奏することで、曲そのものに生き生きとした表情が表れた気がする。ミクの歌だけに頼るのではなく、演奏の重要性も高める事で、パフォーマンスの質がより高くなるのである。
そのせいもあってか、観客の反応もすこぶるよく、ライブの送り手と受け手が一体となった、実に素晴らしいコンサートになった。ただ、送り手のミクは、あくまでもバーチャルなキャラクターである。彼女には、観客の姿も見えてないし声も聞こえてない。いわば、一方通行のライブでもあった訳だ。にもかかわらず、この一体感。これも、生演奏の効果ではないか、と僕は思う。もし、このコンサートが、PCで作った打ち込みの音を流し、スクリーンに映るミクを見るだけのものであれば、このような雰囲気にはならなかったのではなかろうか。
何度も書いてるけど、初音ミクはバーチャルな存在である。けど、このライブDVDを見る限り、そんな事は気にならずに楽しめる。ほんと、ちょっと前のアイドル歌手のライブを見ているような感じなのだ。生バンドに伴奏させる、というのを考えたのは誰なんだろう?
結論:コンサートは、歌い手或いは伴奏のどちらか(両方)が生でないと、盛り上がらない(は?)
聞く所によると、このコンサート直後に流出した映像を見て、とあるアメリカ人が、バーチャルな歌手のライブに熱狂する日本人は変わってる、みたいな発言をしたらしい。バーチャルつーか、実在しないテレビキャラクターとかのレコード(アーチーズとかシンプソンズとか)を喜んで聴いてたのは、アメリカ人のはずだけど(笑)
と、予想以上に楽しめた初音ミクのライブDVDを見ながら、あれこれと考えていたのでした(笑)