皆さんご存知の通り、ポール・マッカートニー&ウィングスの1973年の名盤『バンド・オン・ザ・ラン』の50周年記念エディションが発売されている。『バンド・オン・ザ・ラン』と言えば、2010年頃にデラックス・エディションが出ていたはずで、確かポール・マッカートニーのアーカイブ・シリーズの第一弾ではなかったかと思うのだが、今回は50周年記念エディションなんである。前回のデラックス・エディションとの違いは何か、というと、デラックス版は、イギリス・オリジナル盤を基準にリマスター等されているが、50周年版はアメリカ盤を基準にしている、という点や、デラックス版にはプロモビデオや当時のテレビ出演の映像が収録されてDVDが含まれているが、50周年版はDVD等はないものの、オーケストラなどをダビングする前のバージョンを収録したCDが目玉となっている、等々らしい。ま、さほど熱心なファンではない僕からすると、別にどうでもいいって感じ(笑) 今さらではあるが、デラックス版DVDのテレビ番組用の映像(この時点で未発表だったらしい)には、非常に興味あるけどね。
とはいえ、歴史的名盤である『バンド・オン・ザ・ラン』である。2010年も今回も、それなりに話題になっていないはずがなく、前回のデラックス版の時も、レコード・コレクターズで特集してたはず(特集しない訳がない)と、探してみたらありました。↑の写真の左が2010年12月号、右が最新号である。なんか、最新号の方がそれらしい表紙だな(笑) ついでに言うと、当ブログでもネタにした(爆) こちらです。よろしければどうぞ(笑)
くどいようだが、歴史的名盤の『バンド・オン・ザ・ラン』であり、自分にとっても、想い出の名盤であり、もちろん、ポールの代表作と言ってもいいアルバムだ。今と昔で、それほど評価が変わるタイプのアルバムとは思えない。実際、レココレは2010年と今回と、どちらも特集を組んでいるが、内容はほぼ同じと言っていい(笑) 『バンド・オン・ザ・ラン』が出た頃の音楽界(ロック界)や元ビートルたちを取り巻く状況、制作に至るまでのポールの動向、等々の記述に違いはほとんどないし、何故かレコーディング場所をナイジェリアのラゴスに決めたいきさつとか、そのラゴス出発の前日にメンバー2人が脱退したとか、到着してみたらスタジオはまだ建築中でろくな機材もなかったとか、フェラ・クティからアフリカの音楽を盗みに来たとあらぬ疑いをかけられて一触即発とか、ボールとリンダが強盗に襲われて金とデモテープを持ち去られたとか、ジンジャー・ベイカーのスタジオがラゴスにあったので行き掛かり上そちらも使わざるを得なかったとか、といった有名なエピソードついても変わりなし。
ただ、例のローリング・ストーンの名盤500選では、確実に人気を落としていて、2003年版では418位にランクインしているが、2020年改訂版ではランクインしていない。ま、ロック・ファンだって世代交代しているから、50年も前のアルバムが今でも高い支持を得られる訳ではないと思うので、仕方ないことだろう。僕自身の評価はずっと変わらないけど(笑)
というのもあり、久々に聴いてみた『バンド・オン・ザ・ラン』やはり素晴らしい。で、この際なんで、軽く全曲ガイドなぞ(爆)
A-1. Band On The Run/バンド・オン・ザ・ラン
異なる3曲を繋げて1曲にした曲で、こういうのホールの得意技、という記述は2010年も今回もある。が、僕はずっと、Aメロ→Bメロ→サビ、みたいな感じて聴いてて、メドレーみたいに捉えた事はない。歌い出しから曲調が変わる曲なんて、たくさんあるしね。こういう風に無理なく曲の展開を変えていく、という点に於いては、ポールは凄いと思う。個人的には、♪If I ever get out here~、の部分が好き。シンセのフレーズもいい。出だしのギターとエレピの絡みもたまらん。
A-2. Jet/ジェット
タイトルは犬だか馬だかの名前らしいが、そんなのはどうでもいい。とにかくカッコ良い曲だ。イントロのインパクト、ジェットのコーラスの掴み、♪Ah mater~から本編に戻る展開、簡単そうだけどカッコいい間奏のシンセのソロ、どこを取っても完璧な無駄のない良く出来たポップソングである。あの頃のポールは、こんな曲を連発していたような...ほんと凄かった、あの頃は(爆)
A-3. Bluebird/ブルーバード
個人的には、本作で一番好きな曲であり且つ名曲である。淡々とした感じなんだけど、きっとコード進行は斬新なんだろうね、知らんけど(笑) パーカッションの使い方がセンスがあって良い。
A-4. Mrs Vandebilt/ミセス・バンデビルト
歌い出しのメロディが1回しか登場しない、とレココレで言われて初めて気づいた(笑) 確かに言われてみればそうだな。ただ、ポールってこういう曲多い気がする。「あの娘におせっかい」だって、最初のメロディはちょっとしか出てこないし。と、それはさておき、この曲も好きだ。同じフレーズを繰り返しているようでも、歌だったり楽器だったり変化をつけてて楽しい。♪ホ、ヘイホ、と一緒に歌ったもんです(爆)
A-5. Let Me Roll It/レット・ミー・ロール・イット
最初に聴いた時は、この曲の印象が強烈だった。あのリフに導かれて進行していくが、サビの盛り上がりはあるものの、あくまてもクールに進んでいくのが、実にカッコ良く感じられた。若い頃、バンドでコピーした事があるが、この手の曲は難しい。
B-1. Mamunia/マムーニア
ずっと人(女性)の名前と思ってたけど、実はアラビア語で”避難所”とかいう意味らしい。アコギのイントロから歌に至るまで、とても品の良いナンバー。マムーニア、マムーニアのリフレインが心地よい。隠れた名曲だ。
B-2. No Words/ノー・ワーズ
本作唯一のデニー・レインとポールの共作。「マムーニア」もだけど、こういうアルバム中の目立たない曲がさりげなく名曲だったりするのが、この頃のポールの凄いとこで、この曲もイントロから歌に入るところとか、実に素晴らしい。
B-3. Picasso's Last Words (Drink To Me)/ピカソの遺言
実は重要曲らしいが、個人的にはさほど重要視してなかった(笑) さすがに飛ばしたりはしなかったけど(笑) 「ジェット」や「ミセス・バンデビルト」のフレーズを挿入してくるあたりはプログレッシブだ。
B-4. Nineteen Hundred And Eighty Five/西暦1985年
正直言うと「ピカソの遺言」よりこっちの方がずっと重要だ(笑) 個人的には、タイトル曲以上にこの曲が本作のハイライトである。ピアノのイントロからして不穏な雰囲気で、その雰囲気は最後まで変わらない。僕自身は、この曲の方にラゴスの影を感じるけど、どうなんでしょう?(笑) ピアノ→歌で進行する構成もいいし、後半のオーケストラを交えた混沌とした演奏もいい。いつ聴いても鳥肌モノのエンディングだ。歌ってるのはデニー・レインだと長年思ってたけど、実はポールらしい(恥)不朽の名盤のラストを飾るにふさわしい名曲。いや、この曲で終わるから『バンド・オン・ザ・ラン』は名盤なのかも^^;
あくまでも個人的見解ですが、「愛しのヘレン」は『バンド・オン・ザ・ラン』にはなくてもいいと思われます(笑)
そんな訳で、やっぱり『バンド・オン・ザ・ラン』は名盤である、と改めて強く思った次第。ちなみに、MFCオーナーの私的歴代最高のアルバム500選に於いては、『バンド・オン・ザ・ラン』は122位です(だから?)。
ビートルズ解散から現在に至るまでの、ポール・マッカートニーのキャリアに於いて、ウィングス時代、アルバムで言うと『ワイルド・ライフ』から『バック・トゥー・ジ・エッグ』まで、期間としては1971年から1981年までのほぼ10年、やはりこの10年はポールにとって別格なのではなかろうか。とにかく、この時期のポール(ウィングス)の作品は、本当に素晴らしい。50年近くを経過しているにもかかわらず、決して古びる事のない曲たち、こういうのを真のエバーグリーンというのである。あの頃、ウィングスを率いてポールはビートルズ以来の全米ツアーを行い、30回の公演で60万人を動員したそうで、あまりの勢いに、ウィングスはビートルズを超えた、なんて言われたりもしてたけど、本当にあの頃のポール・マッカートニー(ウィングス)は光り輝いていたと思う。何度も言ってるけど^^; そんな時期の作品たちが悪かろうはずがない。その頂点に立つのが『バンド・オン・ザ・ラン』なのである。これからもずっと。なんだかんだで、やっぱりポールは凄い人なのだ。