あの日、いつもの病院で順番待ちをしてた。
周りの人が「何か揺れてない?」という。
ふと見ると待合室のテレビが少し揺れている。
かるい眩暈を覚える。
この地では震度2。
ああ、地震のゆれか。
テレビの画面は緊迫した声が。
最大級の地震。
津波が東北の海辺に押し寄せてきている。
岸壁を越え、
川を遡り、
住宅を、船を、クルマを、
つぎつぎと巻き込んで、
津波が、津波が、つなみが。
高台へ逃げ惑う人々のむれ。
津波に自宅をのみこまれ、
ああ、ああとしかこえがでない。
火災が街を焼きだす。
津波にのまれみんなどこへ行ったのか。
避難所ではじまる生活。
何もない。
これからどうなる、これからどうする。
とにかく生きなければ、思いはそれだけ。
否。
そんな思いもない。
今日という日を生き、明日につなげる。
地震に奪われなかった命。
津波に奪われなかった命。
その後の避難生活で、
拾った命が奪われる。
関連死は悲しい。
あれから四年。
もう四年、まだ四年。
もう五年、まだ五年。
もう十年、まだ十年。
もう、と、まだ。