新古今和歌集の部屋

時雨亭方丈記 大火1


事やゝたび/\となりぬ。去安元三年廿八日
かとよ風激しく吹て閑ならざりし夜戌の
時ばかりより都の東南より火いできて西北に
いたる。はてには朱雀門大極殿大學寮民部
省までうつりて一夜のうちに塵灰となりにき。
火もとは樋口富小路とや。病人をやどせるかり
屋よりいできたりけるとなん。吹まどふ風にとかく
うつり行ほどに扇をひろげたるがごとくすゑひろ
になりぬ。又遠き家は煙にむせびちかきあたりは
ひたすらほのを地に吹つけたり。空には灰を吹

(参考)前田家本
事、やゝ度々になりぬ。去んじ安元三年四月廿八日
かとよ。風激しく吹きて世しづかならざりし夜、戌の
時ばかり、都の東南より火いてきて、西北に
いたる。果てには、朱雀門、大極殿、大学、民部
省まで移りて、夜一夜のうちに塵灰となりにき。
火元は樋口冨の小路とかや。舞人を宿せる仮
屋より出で来たりけるとなん。吹き舞ふ風に、とかく
移り行く程に、扇を広げたるが如く、末広
になりぬ。遠き家は煙に噎び、近き辺りは
ひたすら大路に吹き付けたり。空には灰を吹

(参考)大福光寺本
事ヤヽタヒタヒニナリヌ。去安元三年四月廿八日
カトヨ。風ハケシクフキテシツカナラサリシ夜イヌノ
時許ミヤコノ東南ヨリ火イテキテ西北ニ
イタル。ハテニハ朱雀門大極殿大学レウ民部
省ナトマテウツリテ一夜ノウチニ塵灰トナリニキ。
ホモトハ桶口冨ノ小路トカヤ舞人ヲヤヤトセルカリ
ヤヨリイテキタリケルトナン。フキマヨフ風ニトカク
ウツリユクホトニ扇ヲヒロケタルカコトクスヱヒロ
ニナリヌ。トヲキ家ハ煙ニムセヒチカキアタリハ
ヒタスラ焔ヲゝ地ニフキツケタリ。ソラニハハヰヲフキ
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「方丈記」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事