けふりのことし。ちのうこき家
のやふるゝをといかつちにことな
らすいゑのうちにをれはたち
まちにひしけなんとす。はしり
いつれはちわれさく。はねなけれは
そらをもとふへからす。龍ならはや
くもにものらん。おそれのなか
におそるへかりけうはたゝ地震
なりけりとそおほえ侍し
(盛なる)
煙の如し。
地の動き、家の破るゝ音、雷に異ならず。
家の内に居れば、忽にひしげなんとす。
走り出づれば、地割れ裂く。
羽なければ空をも飛ぶべからず。
龍ならばや雲にも乗らん。
恐れの中に恐るべかりけるは只地震なりけりとぞ、覚え侍し
(参考)大福光寺本
煙ノ如シ
地ノウコキ家ノヤフルゝヲトイカツチニコトナラス
家ノ内ニヲレハ忽ニヒシケナントス
ハシリイツレハ地ワレサク
ハネナケレハソラヲモトフヘカラス
龍ナラハヤ雲ニモノラム
ヲソレノナカニヲソルヘカリケルハ地震ナリケリトコソ覚エ侍シ