せいへいしやうし
清平調詞
さんしゆ りはく
三首 李白
くもにはおもひいしやうを
雲想衣裳
はなにはかたちとしゆん
花想容春
ふうはらつてかんをろ
風拂檻露
くはこまやかなりもしあらすんは
華濃若非
くんきよくさんとうに
羣玉山頭
みるにかならすむかつてやう
見會向瑤
たいげつかにあわん
䑓月下逢
くもをいしやうにするはせんしよの事
なり。これはげんそうのまたびじん
をゑぬうちの事をいふ。くもをみ
てもはなをみてもこのやうなび
しんをゑたいとおもひくらしおりふ
しはるてはるかせがかんをふき
はらいてんかいちのめいくはのは
なさかりのつゆのこまやかなるを
みてこのやうなびじんをゑたい
とおもひくらしこのやうなひしんはなか
/\にんけんかいにはあるまひ。
ぐんきよくさんのほとりおう
ぼかかたてみるにあらずんはやうた
いのせんしよあるところてあふか
とかくほかてはみることは
なるまい。くわしくは掌故
箋注国字解ニあり。
清平調詞 三首 其一
李白
雲には衣裳を想ひ花には容を想ふ。
春風檻を払って露華濃(こま)やかなり。
若し群玉山頭にて見るに非ずんば
会(かなら)ずや瑤台月下に向(おい)て逢わむ。
意訳
雲を見ると、楊貴妃様の衣裳を想い、牡丹の華を見ると、楊貴妃様の容貌を想います。
ちょうど心地よい春風が、檻(いたがこい)を払って、露が牡丹の華から落ちている。
もし、この楊貴妃様のような美女に出会えるとしたら、群玉山の頂上で西王母に拝見するかそうでなれば、
玉の宮殿で月の光の下の有娀の美女に逢うしかない。
※清平調詞
玄宗が、楊貴妃と興慶宮で、牡丹の遊宴の際、李白に作らせた物。
※群玉山
西王母が住むと言う山。
※瑤台
玉で出来た宮殿で、美しい女神有娀が住むと言う。楚辞屈原の離騒「瑶台の偃蹇たるを望み、有娀の佚女を見る」を踏まえる。
唐詩選畫本 七言絶句 巻一