竹河 あさましきまでうらみなげゝれば、このまへ申も、余たはぶれにくゝ、いとおしと思ひて、いらへもおさおさせず。かの御五のけんぞせしゆふぐれのこともいひいでて、さばかりのゆめをだにまたみてしかな。あはれ、なにをたのみにていきたらむ。かうきこゆることものこりすくなうおぼゆれば、つらきもあはれ、といふ事こそまことなりけれと、いとまめだちていふ。 第十五 戀歌五 題しらず 清原深養父 嬉しくば忘るることもありなましつらきぞ長き形見なりける