たて○れば火のひかりに映じてあまねく紅なる
中に風のたへず吹きられたるほのを飛ごとく
して一二町を越つゝうつり行。其中に人うつし
心あらむや。或は煙にむせびてたふれふし或はほの
ほにまぐれて忽に死ぬ。或は又身ひとつからう
じてのがるれども資戝を取いづるに及ばず。七
珎万寳さながら灰燼となりにき。其費いくそば
くぞ。このたび公卿の家十六やけたり。まして
そのほかは数をしらず。惣て都のうち三分が一に
およべりとぞ。男女しぬる物数十人。馬牛のた
(参考)前田家本
立てたれば火の光に映じてあまねく紅なる
中に、風に絶えず吹き切られたる炎飛ぶが如く
して、一二丁を越へつつ移り行く。其の中の人、現し
心有らんや。或は煙にむせびて、倒れ伏し、或は炎
にまぐれて、忽ちに死ぬ。或は身一つからく
して逃る財寶を取り出づるに及ばず。七
珎万寶さながら灰燼となりにき。その費ゑ、幾十許
ぞ。この度公卿の家十六焼けたり。まして
其外家々数を尽くすに及ばず。全て都の中三分が一に
及べりとぞ。男女死ぬる物数千人。牛馬の類
(参考)大福光寺本
タテタレハ日ノヒカリニエイシテアマネククレナヰナル
中ニ風ニタエスフキゝラレタルホノホ飛カ如ク
シテ十二町ヲコエツゝウツリユクモ中ノ人ウツシ
心アラムヤ。或ハ煙ニムセヒテタウレフシ或ハホノ
ヲニマクレテタチマチニ死ヌ。或ハ身ヒトツカラウ
シテノカルゝモ資財ヲ取出ルニオヨハス。七
珍万宝サナカラ灰燼トナリニキ。其ノ費エイクソハ
クソ。其ノタヒ公卿ノ家十六ヤケタリ。マシテ
其外カソヘシルニヲヨハス。惣テミヤコノウチ三分カ一ニ
ヲヨヘリトソ。男女シヌルモノ数十人。馬牛ノタ
最新の画像もっと見る
最近の「方丈記」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事