新古今和歌集の部屋

新古今増抄 巻第一 よみ人しらず 帰雁 蔵書

 

一 題しらず     よみ人知らず

一 故郷にかへるかりがねさ夜更て雲ぢにまよふ聲きこゆ也

増抄云。夜中にかりの空をゆきやらずこゑの

きこゆるをきゝて、古郷にはやくかへらんとて

夜中にたちてゆくものならんか。くらければ

えゆきやらでまよふ事よ。扨も哀さよと

の心あり。うちきゝはすらりとしたる古風

の哥なり。味へばあわれなる哥なり。かやう

の哥とやす/\とみるは、無念のよしを

古人もいへり。

 

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