新古今和歌集の部屋

前田家本 方丈記 日野の庵6 桂風葉を鳴らす夕には

かせはをならす夕にはしんやう

のえをおもひやりて源ノ都ト叔シヨクの

おこなひをならふ。もし餘興あれ

はしは/\まつのひゝきに秋風楽を

たくへみつのおとに流泉の曲を

あやつる。藝はこれつたなけれとも

人のみゝをよろこはしめんとに

もあらす。ひとりしらへひとり詠し

てみつから心をやしなふはかり


(桂)風、葉を鳴らす夕には、潯陽の江を思ひやりて、源都叔の行ひを習ふ。

もし餘興あれば、しばしば松の響に秋風楽をたぐへ、水の音に流泉の曲を操る

藝はこれ拙けれども、人の耳を喜ばしめんとにもあらず。

独り調べ、独り詠じて、自ら心を養ふばかり


(参考)大福光寺本

カセハヲナラスユフヘニハ尋陽ノエヲゝモヒヤリテ源都督ノヲコナヒヲナラフ。

若余興アレハシハシハ松ノヒゝキニ秋風楽ヲタクヘ水ノヲトニ流泉ノ曲ヲアヤツル。

芸ハコレツタナケレトモ人ノミゝヲヨロコハシメムトニハラス。

ヒトリシラヘヒトリ詠シテミツカラコゝロヲヤシナフハカリナリ。

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