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ソーシャル・ワーカー、モニカのことば。
カール・グロガウアーは生まれて以来、すべてがかみ合わなかった。自分と他人との関係、自分と世界との関係、自分と自分との関係……自分とは何か悩み続け、自殺未遂を起こし、家族や学校とも上手くいかず、心理学者や精神医になろうとしてもなれず……そんな彼だから、ジェームズ卿がタイムマシンの試作品を完成させたとき、帰還の保証どころか生きて目的の時間に到達するかも定かでない実験に協力した。キリストが磔にされた十字架に異常な執着を覚えていた彼が選んだ目的の時代は紀元29年。キリストの磔刑を見ようとしたのだ。
しかし、到着したのは1年前の紀元28年。タイムマシンは壊れ、しかもやっと見つけたイエスは救世主どころか白痴同然で、マリアは身持ちの悪い浮気性の女だった……。
1940年に生まれた男の30年の軌跡と、紀元28年の世界が交互に描かれる人生の漂流譚。
エピック・ファンタジーの大御所、マイクル・ムアコックの代表作だけれど、テーマのユング心理学が重いので、キリスト・テーマの時間SFとしては麻城ゆう&道原かつみの『ノリ・メ・タンゲレ』の方が好みかな。
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